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26540 DB WRümh131 / Ep.IV [Maerklin-Reisezugwagen]

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▲ 厨房側

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▲ 食堂側

ようやくTEE列車/DBセット(26540)の客車の続きを記したいと思います。今回は、瘤付き食堂車(WRümh131)です。このブログでは、幾度となくこの食堂車形式について触れて来たのでそれほど詳しくは触れませんが、今回は主に同じTEE Rheingold 1968 セット(42990)に同梱されている27センチの同形食堂車と比較して、その長短所を記すことを試みてみたいと思います。もちろんこのモデルの実車についても記したいと思います。


この2種の食堂車の大きな違いは、その全長です。画像を見てもらえばわかりますが、上画像は実車写真、下画像1番上の図面はオリジナルの1/100スケール、真ん中が27cm(約1/98)、下が今回紹介する28,2cm(約1/94)のモデルです。実車は全長26,4mです。

メルクリンでは、当初27cmモデルの窓数を減らして実車の持つイメージ優先で製品化したことが伺えますが、後に、窓数を実車と同じにすることでリアリティを増せるという風潮もあり、新しく金型を起こした27cmの同形モデルは窓数が実車と同じです。新シリーズの28,2cmとなった今回の新しいモデルは、もちろん実車と同じ窓数です。27cmのこのモデルについてブログで記したときは、初めての瘤付き食堂車のリリースを歓迎する一方で、窓の形状やプロポーションについて違和感があると記したように思います。
今回28,2cmの新しい同形食堂車がリリースされたので改めて見直すと、実車の印象を良く掴んだ改善の跡が見受けられます。つまり横長の食堂部分の窓形状、そして角Rの大きさが実車に極めて近いことが確認できます。それに伴い自然と窓上部から屋根との接合部にかけての高さや窓高さとのバランスが改善されていて、全体のプロポーションも実車に近いです。

今回改めて実車の図面を見てみると、なんと窓の形状が横長の印象で27cmモデルに近いことが新たにわかりました。あくまで推測ですが、この図面には窓ガラス寸法がないので、今や実車が極めて少ないこの食堂車の実寸を測ること無く、この全体図面の資料のみを参考にして設計したのではないか?とも思えてくきました。上画像は実車の写真ですが、明らかにその窓の形状やバランスの違いが理解できると思います。また、27cmモデルは、厨房部2階部分の窓の形状も妙に小さくイメージが違います。そして厨房左の車端部のWC窓に至っては開口部用の桟がなく明らかに誤りです。屋根にある2カ所のルーバーが小さくなってしまのは、致し方ないところでしょうか。
車体両サイドにあるサボは、27cmモデルがサボ受けを彫り込んだ上にサボが印刷されています。逆に28,2cmモデルは、単に印刷したのみです。確かこの車体はTEE Rheingold/Rheinpfeil運用終了後にはD-Zugなどで運用されましたが、長くは持たず廃車されているので、他の座席客車とは違い最後迄左側のサボ受けは残ったと考えられます。そういう意味でもサボ受けに関しては彫り込んだ方が良かったのではないでしょうか。他の28,2cmモデルと合わせるという意味では印刷も致し方ない...のかもしれません。
車体幅は、UIC-X客車もそうですが、27cmモデルより細身に出来ています。これは全長が長いことも手伝って、印象としてよりスリムに見えるということもあるのでしょう。

台車の違いを見てみます。上画像は新旧2両を連結していて、左が27cm、右が28,2cmです。右モデルの台車自体は新しく変えていますが、双方とも両軸発電機と電磁ブレーキ(Magnetschienenbremse)を装着しているのがわかります。28,2cm向けに新しい金型を使って台車を用意するのは良いとして、27cmモデルで新しく台車を作ったのはある意味驚きです。他には、TRIXのF-Zugセットのモデルかバー車(ARDuemh105/ARDmz106)ぐらいしかこの両軸発電機付き台車を使えなかったのではないでしょうか。

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28,2cmモデルの台車です。左右2つのボギーとも同じ仕様でした。片側が両軸発電機が付いていて反対側には肩軸発電機です。つまり1つの台車に3機の発電機がついていて左右2つの台車ですから合計6つの車軸発電機が付いているということになります。

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塗装/印刷については、双方とも繊細で良い出来だと思います。(上画像は2枚とも28,2cmモデル)しかし、ここでも違いが見えるのは興味深いです。27cmモデルの塗装は、Beige/Purpurrot共濃いめの色合いに対して、28,2cmは明るいです。RAL色表と比較してみた処、Beigeは28,2cmモデルが近く、Purpurrotについては色表が両車の中間であった。裾色については、27cmモデルが明るいグレーで、これも28,2cmモデルが若干近いと思われます。印刷は両車とも非常にくっきりと明快で気持ちが良いです...が、ここで比較して初めて分かった事実もあります。「SPEISEWAGEN」の文字ですが、27cmモデルはDSG時代の書体で印刷してあります。資料で確認すると、どれも新しいタイプの書体です。おそらく、車両所属がDSGからDBに移管された時、車体中央の「DSG」文字が「TRANS EUROP EXPRESS」に変わったと同時に、後者の書体となったと考えられます。

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サボです。TEE "Rheinpfeil" 「Hoek van Holland - München」の表記です。ロンドンからの乗客を迎えてTEE Rheingoldとして走り、途中Duiesburg HbfでBasel SBB行きのTEE Rheingold編成から切り離され、Münchenへと向かうTEE Rheinpfeil編成に組成される1両です。この駅での解放と連結作業に20分以上を費やしますが、その変更プロセスは複雑です。
他の車両モデルのサボと違うのは、号車番号が記載されていないことですが、食堂車は号車番号がありません。(予約の必要がないからでしょうか)客車列車は元々号車番号は途中での連結・解放が間々ある為、順不同かつ番号自体が様々です。

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▲ 車体番号・形式表記です。座席車はDBマークの下にこの表記がありますが、食堂車やバー車は車体中央に「TRANS EUROP EXPRESS」の文字が上部にレイアウトされている為、DBマークは車体端に追いやられています。

車体番号は、「61 80 88-80 004-9」です。この実車は、DSG社の発注で西ベルリンのSpandauにあるO&K社によって1962年に2両と63年の3両の2回に分けて合計5両製造されました。モデルは004なので、2回目(1963年)の製造と思われます。運用時にペアを組むドームカーも合計5両ですが、1回目は3両、2回目は2両と異なります。その為かF-Zug時代は時々Schürzenwagen食堂車(WRümh 152)が連結されていて異彩を放っていました。
1963年の新製時は、WR4üm-63(11 104)としてF-Zug"Rheingold"、"Rheinpfeil"で運用され、1968年からこのモデルのUIC表記に変更、1981年4月に廃車となりました。

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▲ 所属はミュンヘン連邦鉄道局、配置はMünchen-Pasing駅

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▲ RICラスターは、最高制限速度160Km/h、西ドイツ、オランダ、スイスの運用3カ国のみの入線許可

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▲ REV表記は、1971年1月15日、Frankfurt (Main)での検査

ここで読み取れるのは、Flugelzugとしての機能を持ったTEE "Rheinpfeil"客車は、ミュンヘンを基地としてオランダとスイスを結ぶ国際列車の一躍を担っていたことが理解できます。一部乗客は、Münchenから更にオーストリア(SalzburgやWien)、イタリア(MilanoやRoma)、スイス(Zürich)方面へと連絡した列車を利用していたと思われます。

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▲ 厨房下階(流し場)を窓から観る

27cmモデルとの比較では、車体形式のUIC表記が27cmモデルが若干上になっているとか、細かい差は確認できましたが、それも実車図面からの引用による誤差と思われます。インテリアについては、室内装備が色彩を除いて28,2cmのF-Zugモデルと同じでテーブルランプも標準装備です。(私の27cm食堂車モデルのテーブルランプは、VT11.5モデルの純正部品を後付けしたものです)

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27cmモデルの良い点はと言えば、室内照明が標準装備されていることでしょうか。まぁ、お金と手間は掛かりますが室内照明はオプションパーツで装着可能であるので、結論として瘤付き食堂車に関して言えば、28,2cmモデルに軍配があがります。やはり私は食堂部分の窓のイメージが実車に即したものになり、全体のプロポーションが実車のイメージに近づいたことが一番嬉しいのです。

参考文献:"WAGEN" Das Archiv der deutschen Reisezug- und Güterwagen
GeraNova Zeitschriftverlag GmbH München

[EDIT] 2020-12-15


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kids

Akira様いつもお世話になっております。
今日のお話を読んでおりまして、ふと思ったのですが、昨年発売になりました、ラインゴルトのドームカー(43880)を元に、TEEカラーの製品が発売されるってことは無いでしょうか?
この43880でしたら、ラインゴルトの名前がドーム下部に書かれておりますから、26540の客車と組み合わせ42990に代わるラインゴルト編成ができないでしょうか?
by kids (2008-01-22 19:19) 

Akira

こんばんは、kidsさん。

今日紹介した瘤付き食堂車と一緒に同梱されているドームカーは、まさにTEEカラーです。しかし、1971年仕様ですから既にボディサイドの「RHEINGOLD」文字はありません。Rheingoldにこだわりたいならば、F-Zug色とTEEカラーの混成で「RHEINGOLD」の過渡期編成というのが出来るかもしれません....が、これにしてもEp.IIIですから表記がUIC規格ではないので難しいですね。(食堂車はDSGマークが入るでしょうし..)
しかし、71年にはTEE Rheingoldであってもボディサイドには文字はありませんから、いくらTEE Rheinpfeilと呼ばれても違いはサボの印刷だけです。(このモデルであるドーム部分の狭窓仕様自体が元々Rheingold向けです)
私なら、サボをパソコンで作成して貼り直します。
by Akira (2008-01-22 21:13) 

kids

Akira様
>71年にはTEE Rheingoldであってもボディサイドには文字はありません
>から

ア、そうだったのですか!
つまり1971年当時はラインゴルトのドームカーのサイドにはラインゴルトの表示は無かったのですね。
この26540編成で見分けられるのはサボだけだったのですね。
ありがとうございました。
by kids (2008-01-22 21:47) 

Akira

当初、ドームカーには「RHEINGOLD」(狭窓)と「DEUTSCHE BUNDESBAHN」(広窓)の2つのバリエーションがありました。おそらくですが、この2種のドームカーがTEE RheingoldとTEE Rheinpfeilを共通運用するためにサイドの文字を外したと思われます。

ドームカーも今後色々なバリエーションが出てきそうですね。
by Akira (2008-01-22 21:55) 

BOAC VC10

昼休みが終わってしまい、
名前を書き込むのを忘れて投稿してしまい、またもや失礼しました。
(仕事のドタバタが尾を引いています・・・。)

痒い所に手が届く詳細な比較、大変参考になりました。
どうもありがとうございます。
(次にWRuemh131の紹介があるかなと思ってお願いした節あり)

42990・42991のセットを開発した時点では、
282cmへ切り替える構想はまだ無かったのでしょうね。
でなければ、わざわざ新規に2車種と3種類の台車の金型を
起こすことはしないはずでしょうが、
おそらく、そのWRuemh131とARDuemh105のプロポーションに対する評価が、
メルクリンの開発陣に、270mm客車の限界を感じさせたに違いないと思います。

それが今回の282mmのWRuemh131に生かされていると思うと、
270mmのモデルも無駄ではなかったと考えたいですね。
by BOAC VC10 (2008-01-22 22:10) 

Akira

やはり、そうでしたね。お仕事ご苦労様です。

私もそう思います。そうでなければ、あの安価なセット(しかもMHI限定品)だけのためにわざわざ瘤付き食堂車の金型を起こして製品化させるとはとうてい思えないからです。そう考えると、27センチの瘤付き食堂車も希少性の高いモデル...と言えなくもないかもですね。(42990/42991の室内照明は電球でありながら照度が均一で印象が良いです)

さて、次の282mmの供食車は何がリリースされるか楽しみですね。
by Akira (2008-01-22 22:28) 

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