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ドイツの環境問題講演会 [環境問題]

昨日、前橋の県庁向かいにある群馬会館のホールで、ぐんま日独協会主催による環境問題講演会が行われた。
講演は、ドイツ大使館一等書記官のNitsche氏によるエネルギー問題のドイツの取り組みとその成果についてである。平日にも関わらず、200名近くの聴講者が集まり、PowerPointを使ったスライドショーによって興味深い話の中で、日本とドイツの背景や取り組みの違い、そしてその結果の歴然たる差があぶり出されたものであった。

ドイツでもエネルギーは1980年代まで日本と変わらず原子力発電を中心にしたものであったが、当時のソ連のチェルノブイリ原発事故が、国民の原子力依存の考え方を大きく変えたきっかけであったという。私は当時日本にいたが、今考えれば、それほど深刻には受け止めなかったように思う。その後、ドイツへ渡ってから聞いた話では、事故で空中に舞い上がった放射能が風に乗ってドイツまで到達するという情報が流れ、子供は外で遊ばせられないほど深刻な状況が起こったという。

この大きなきっかけがあったからこそ、ドイツの人々は原子力依存の発電からの脱却を目指し、様々な脱原発の取り組みがなされ、最終的には新たな原発を作らず、既存の原発も寿命と共に廃棄する法律が施行されたという。
この国民のモチベーションの高さの違いが日独のその後のエネルギー政策の違いになったと言えよう。

その高効率な原子力発電の代わりとなるエネルギー源を見つけ、研究し、実用化している緒例を挙げていたのだが、やはりドイツでは風力発電と太陽光発電が主流で、その他にバイオマス発電などがあるようである。風力発電については、ご存知の方も少なくないだろうが、ドイツでは世界で最も多い発電量を誇る。そして太陽光発電も政府が計画した100,000軒の家屋にソーラーパネルを設置することが予定より数年の前倒しで達成されたことを挙げていた。その普及の原動力は、やはり優れたしくみであった。つまり設備設置に関わる費用補助はもちろん、余剰電力の売電を固定価格で行えるということ。費用補助額などは、日本が年々減少しているのに対し、ドイツは増加していること。それが普及に拍車を掛けているという。
また、新築家屋には一律30%の断熱対策を施すことが法令化され、さらに今後30%の上乗せが課せられるという。この断熱の効果で一冬3リットルの重油で暖房がまかなえるところも出ているという。つまりエコはエコノミーでもあるということを明確に示した事例である。

これらの施策を聞いていると、やはりそのしくみ(というか縛り)を明確に政府が示していることに尽きよう。講演者であるNitsche氏によれば、今や逼迫した地球温暖化を目前にして、出来るか出来ないかを議論している場合ではないという。そのような議論をしたり考察している時間があれば、今何が出来るかを考えることに使うべきであり、可能な限りすぐにその諸策を実行に移すべきであるという。

まさにその通りであると私も思う。もはや考えている場合ではない。危機感を持って政府が率先してしくみづくりに取りかかるべき最優先課題なのである。
Nitsche氏とドイツの風力発電の技術者が日本政府の招きで沖縄県の宮古島にある風力発電の試験施設の見学に行ったとき、ちょうど大きな台風が接近中で、そのような台風の多い日本の気候風土に適した風力発電設備がまだなく、またそのような気候風土ゆえに日本では中々安定した発電量が得られないという理由もあって普及も進まないというが、来訪した技術者は、逆に台風にも充分に耐えられる風力発電設備の開発に意欲を燃やしたという。彼らは危機感と共に闘う気概もあるのである。自然と共に生きるという日本古来の考え方も共感を憶えるが、こと、環境対策に関しては、我々が自然に対して闘うことも必要ではないかと感じた次第である。

参考サイト:ドイツ環境問題講演会/ぐんま日独協会
http://www.jdg-gunma.jp/cgi-bin/news/topics.cgi?mode=view&no=5

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熊本センター

こんにちは。私は自分の勤務先2000人の社員がいる交通企業の全社コスト削減委員会委員長も兼務しているため、大変勉強になる記事で、ありがとうございます。議論より実践!明確な枠組み作りの必要性!その通りだと思います。
原油高騰に右往左往しているようでは、未来まで永く信頼できる公共交通とは言えないと思う昨今です。個人的には早期に購入価格とランニングコストの安価な電気動力の大型バスが開発されることを願っています。

by 熊本センター (2008-11-11 12:22) 

Akira

こんにちは、熊本センターさん。

コメントありがとうございます。昨今の若者の自動車離れは、単に原油の高騰などが原因ではなく、自動車による移動の魅力が彼らにはなくなってきているということの表れと感じています。(もちろん都市部中心での話ですが..)しかしながら、移動(モビリティ)の必要性は変わっていませんから、高齢者の増加による原因と共に公共交通の重要性は今後益々高まると感じています。そこでより魅力的な公共交通を提供してゆくことが大切であることは明らかなわけで、環境面と同時にだれでも利用しやすい公共交通をスピーディに考えてゆかなければならないと感じています。
by Akira (2008-11-11 13:32) 

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