29475 DBAG 146 107-8 / Ep.V [Maerklin-Lok]
先日、とある用事で一昨年のドイツフェスティバルでメルクリンのスタートセット(29475)を購入された方のところを訪ねた。そこでは、このスタートセットのメルクリンをお客様に開放して走らせていたのであるが、その場所のコンディションが良くないことと、子供が乱暴に扱うためにいつの間にか走らなくなってしまい、結局元箱に納められてしまったスタートセットのメルクリンモデルを再び走るようにならないかと相談されたのである。
そこで、軽い気持ちで「試してみましょう」ということで引き受け持ち帰ってきたスタートセットの機関車が、今日紹介するモデルである。
まず、スタートセットのレールを全て施設し、MSを接続。機関車をレールに載せるが、やはり走らない...というかギクシャクと走ったり止まったりの連続である。明らかに集電不良である。そこで止まってしまう場所を中心にレールクリーニングを施し、何とか普通の状態に戻せたのである。(やはり半分外のような場所に施設していたため、湿気と埃にさらされていたのが原因のようで、しっかりとクリーニングすることで逆にスムーズな動きになったことが驚きであった。
そして、機関車の方も屋上のタイフォンが一部無くなっていたり、パンタグラフの部品が紛失し、シューが外れていたりと屋上部分が結構やられていた。またカプラーも無理矢理外したためであろうか、両側共半壊状態...。その割にボディはキズ一つ無く奇麗である。
取りあえず、ボディを外し、モーターのギア部や車輪ギアに注油し、慣らし運転をしばらく行う。そして紛失してしまった部品はないのでどうしようもないが、パンタグラフの片側は何とかシューを付けて格好ににはなった。欠けてしまった樹脂製屋上ガイシ部分は、幸いにもその部分があったのでゼリータイプの瞬間接着剤で修復。半壊状態のカプラーは、手元にRTSカプラー化した時の余ったカプラーがあったので、それと交換することで取りあえず格好になったのである。
何しろ基本的なモーターやデコーダーなどが全く問題なかったので、それが幸いしたのである。
▲ 傷やこすれなどがないのだが、右側バッファが紛失しているのは残念。
さて、前置きがとても長くなってしまったが、修復後に撮影したそのモデルと実車について触れてみたい。146.1形は、Bombardier社のTRAXXシリーズのP160 AC形のDB Regio向け機関車で、185形機関車の派生車種として15 kV 16,7 Hzの単電源機関車。2003年から2005年に掛けて登場した。現在、32両がBraunschweig、Freiburg、Frankfurtに在籍。そして10両が北ドイツのBw(Bahnbetriebswerk)Uelzenにmetronom塗装のLNVG Niedersachsen社の機関車として在籍している。185形と異なり旅客列車向けのため、最高速度は160Km/hである。
外観の特徴は、2基のワンアームタイプのパンタグラフと正面の行き先表示であろうか。いわゆる現在の最新の近郊区間用機関車と言えよう。
では、このモデルについてであるが、スタートセットに同梱されるモデルとして相応しいというのが第1印象である。元々メルクリン初心者向けモデルのため、いわゆる廉価版としてリリースされているモデルであるが、屋上のガイシ部分など繊細さに欠ける仕上がりではあるものの、少し塗装などで処理することで実感的になると思う。逆に床下からネジ1本で外せる金属製ボディの構造や精緻な表記の印刷など、最近の分解に注意を要するモデルや20年ぐらい前には考えられないような印刷技術の向上を考え合わせれば、非常にコストパフォーマンスは高いと思う。
走りについても同様で、廉価版モデルゆえの安価な缶モーター+カルダンシャフトによる駆動だが、その走りは静粛でスムーズ。適度な重量と斜に取付けられた4つのゴムタイヤ付き4軸駆動ということもあって牽引力も問題ない。つまり初心者から我々のようなマニアの経験者まで満足できるモデルと言えよう。確かにディテールについては、あっさりしているとは思うが、それもメルクリンらしい部分で、初心者が気軽に楽しむモデルとしては、耐久性も含めて充分以上の価値を感じるモデルであることを、今回のメンテナンスをして感じたことである。
もちろんデジタルであるが、ファンクションは前照灯のon(f0)と漸次加減速off(f4)のみである。デコーダーの価格は即車両価格に反映されるので致し方のないところであろう。このような部分は日進月歩で変化する部分なので将来的には安価で多機能ファンクションデコーダーがデフォルトで付いてくる時代がくるかも知れない。
また、床下にはスピーカー取付け準備がされているので、強者はLokSound+スピーカーによる改造も可能だとは思うが、機関車本体よりデコーダーの方が高価ということもあってか、まだ146.1形をサウンド化改造している記事などは見たことがないが、いずれ純正で対応のデコーダー+スピーカーがメルクリンからリリースされることに期待したい。
ところで、その後のスタートセットであるが、メンテナンス後に再び持って行ったところ、今度は別の部屋に通された。そこは元剣道場として使われていた場所で、現在はその目的では使われておらず、そこに施設することになった。今度はそれまでの環境よりは遥かに良く、かつ一般のお客様も使えないので、今度は暫く安泰であろう。幾ら丈夫なメルクリンでも、あまりに過酷な条件では少々可哀想である。
[追記]
本文にサウンド改造する強者の記事など見たことないと記したが、灯台下暗しだったようで、このブログからリンクしているLichthofさんブログのhikariさんは、既に改造済みのようである。それも自作の基板を駆使してサウンド化とBLS仕様のTRAXX機関車のためスイス式尾灯基板も自作。その工作力には頭の下がる思いである...と同時にその走りとサウンドを見てみたいものである。
参考サイト:
Digital-Startpackung "Regional-Express" / ドイツ・メルクリンサイト
http://www.maerklin.de/de/service/suche/details.html?page=&perpage=10&level1=2341&level2=2346&art_nr=29475&search=1&era=0&gaugechoice=0&groupchoice=0&subgroupchoice=0&catalogue=0&features=0&searchtext=&backlink=%2Fwww.maerklin.de%2Fde%2Fservice%2Fsuche%2Fproduktsuche.html
Bombardier TRAXX / Wikipediaドイツ
http://de.wikipedia.org/wiki/Bombardier_Traxx
BR146 / Railways in Germany
http://www.rig-bahn.jp/db-page/j-146.htm
[EDIT] 2009-05-14 09:23
Akiraさん、こんにちは
146型電気機関車はS-Bahn客車を持っていたときに機関車の為だけにスターターセットを購入するかしないかで悩んだ記憶があります。
ところでこの146型、廉価版は承知の上ですが行き先表示の部分は光るのでしょうか?行き先表示の部分が光ると、その分色々な方向幕を自作したりして楽しむことができそうですね。
さて・・・私の希望ですが、廉価版の機関車の基盤と同じサイズで、書き換え可能なデコーダーをMaerklinなりESUが発売してくれないだろうかと思うことがあります。廉価版機関車の基盤部分はほぼ共通ですしスピーカー穴のサイズもほぼ共通。多少のハンダ付けは必要かもしれませんが、前照灯はフィルムコードですし差し込めばOKのようなつくりにして・・・
音源を固定化してしまうとコストが大変だと思うので、書き換え可能基盤で発売すると売れるような気がしたんだけど(苦笑
ってみんな思っているかな・・・
by hioka (2009-04-28 11:41)
こんにちは、hiokaさん。
現在メルクリンからは146.1形は兄弟機の185形も含めて廉価版として多種単品モデルがリリースされていますね。
ご質問の行先表示板ですが、おそらくボディが185形と共通?のためか、印刷処理に留まっています。実車は前面窓が行先表示板まで繋がっているのですが、さすがにそこまでは出来なかったというところでしょう。ですから電照化もできません。
デコーダーに関しては、私も同じ考えです...。が、これはやはりコスト次第というところでしょう。146.1形や185形などの廉価版モデルを購入するユーザーさんは、我々のようなコアなファンとは違いますから、価格がこなれないと難しいかも知れません。それと同時に前照灯とは別のヘッドライト+尾灯も後付けで出てくれればと思います。(そうなるとデコーダー自体を変える必要はありますが...)
トータルに考えると、やはり今は難しいかな...とも思えてきますね。
by Akira (2009-04-28 13:37)
185の廉価版の所有者ですが・・・。この値段でこれなら、と私は満足しています。走りはいいし、金属製の車体で重量感にはかけないし。もっとも車種によっては廉価版も、特に模型は屋根が目立つのでいまいちという感じはします。
私くらいの年になると、どのみち細かいところはよく見えませんからもうこれでいいのです。(笑)
by klaviermusik-koba (2009-04-28 21:23)
klaviermusikさん
今回初めて146.1形モデルをメンテナンスして走らせてみて驚く程にスムーズな走行性能を実感できました。屋上機器は無塗装のため、どうしても樹脂部品がチープな印象になりますが、筆を入れることで実感的になると思います。
by Akira (2009-04-28 22:20)
Akira様
リペア作業ご苦労様です。バッファー位でしたらすぐスクラッチしますので何か有ったらお声をかけて頂ければと思います。
by P-ZUG (2009-04-28 22:57)
P-Zugさん、こんばんは。
お申し出をありがとうございます。暫くは、このまま様子を見ようと思っています。7月のドイツフェスティバル後ぐらいにまたその方のお宅にお邪魔する機会もありそうなので、その時はご連絡するかも知れません。よろしくお願いいたします。
by Akira (2009-04-29 01:01)
Akiraさん、こんにちは。
さきほど、便乗記事をかいて、トラックバックさせて頂きました。
[追記]でご紹介頂きありがとうございます。
基板といっても、配線をスッキリさせるのと原状回復がしやすいことを目的に作ったものですから、これがなくても空中配線だけで改造は可能です。ベタパターンの基板をカットしただけのものなので、「駆使」とか「工作力」とお褒め頂くとちょっと照れくさい気もします。
ともあれ、廉価版ではありますが、実機はインバータ制御ですし、フルサウンド化して良かったなと思っています。
by LICHTHOF(hikari) (2009-04-29 11:29)
hikariさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
こちらからもトラックバックさせていただいております。
いやいや、とても私には真似ができません。(したいのですが...)それにスイス式前照灯/尾灯基盤も自作するなんて、私には....(@o@)。
フルサウンド化されたTRAXXを是非見てみたいものです。(7月に群馬県庁などいらっしゃいません?)
by Akira (2009-04-29 17:11)
Akiraさん、こんばんは。
おぉ、もしかしたら私の車輌もドイツフェスティバルの出演機としてリストして頂けるのですね? それであれば、お言葉に甘えて16日~20日の何処かで一泊二日コースくらいでお邪魔してみようかなぁと思います。
by LICHTHOF(hikari) (2009-04-29 20:34)
こんばんは、Lichthofさん。
はい、是非お越し下さい。遠方でしょうが、お待ちいたしております。また、直近になったらこのブログでもお知らせする予定です。
by Akira (2009-04-29 22:03)
Akira さん、こんばんは
このようなリペア・メンテの記事は大変役立ちます。
他のサイトで話題になっていたコストパフォーマンスに優れた本”Die neue Modellbahn-Werkstatt. Tipps und Tricks fuer Einsteiger und Profis ”には、このようなことは取り上げられているのでしょうか?
by Bemo (2009-04-30 00:49)
こんにちは、Bemoさん。
コメントありがとうございます。今回は見た目より症状が軽かったので良かったですが、基盤や配線などに問題が出てくると私の力では難しくなってしまいます。ただ、今回のメンテで感じたのは、やはりメルクリンは丈夫であるということを再認識した次第。交換したカプラーも1つは部品が欠損していましたが、もう1つは、曲がっていただけだったので、指の力で少しばかり戻してあげたら元どおりになりました。樹脂部品にしても高い品質と耐久性を感じました。
さて、ご紹介の本ですが、私は持っていないので何とも言えませんが、Amazon.deでは中身が少し読めました。確かにリーズナブルで使えそうな本ですね。以下、そのアドレスです。
http://www.amazon.de/gp/reader/3865170897/ref=sib_dp_pt#reader-link
by Akira (2009-04-30 08:39)
きわめてむずかしく、一般人には困難なホームページかな。
たとえば、「このブログからリンクしているLichthofさんブログのhikariさんは、既に改造済みのようである。」このLichthofさんブログ
へ飛ぶとこは殆ど不可能。かなりの技術が必要なのか。CS2についての
解説も、ホームページの最初からは、アクセス方法が一般人には全く分からない。平易で分かりやすいことが要求されたいる時代、もっと工夫する必要があると思う。
by toorisugari (2009-05-03 18:51)
toorisugariさん、Spielkisteへようこそ。
コメントありがとうございます。ご批判はもっともな部分もありますので甘んじて受けたいと思います。
このブログは、メルクリンの初心者の方、またこれから始めようと興味をお持ちの方にも理解しやすいよう努めているのですが、経験者の方々にも満足のゆく解説もしたいというある意味相反したことをしているのも事実で、これは中々難しいことは否めません。そして今後もその2つの方々に向けて記事を続けてゆきたいと思っております。
「Lichthofさんブログ」へは、読んでいるブログ+トラックバックされていたので、敢えて記事からリンクを貼りませんでしたが、先程記事からリンクを貼りました。
また、CS2の記事につきましては、左側にInhaltsverzeichnis / CS2と書かれたCS2の絵(アイコン)があるので、そこをクリックすると過去の記事リストが表示されます。
今後とも、当ブログをより良くするための好意あるご批判や改善点のご指摘をいただければありがたいです。
by Akira (2009-05-03 19:55)
>Akiraさま
情報ありがとうございました。
こちらの記事を拝見させていただき、非常に参考になりました。
実は同系のBR285ITLを持っておりますが、正直なところ、感じはいいのですが、ややレタリングがごついような気がしておりました。(これは実物もそうなのかもしれませんが)
ですが、こちらの詳細な写真を拝見して考えが変わりました。
確かに廉価版と言う設定かもしれませんし、マブチモーター(と言う話もあるようですが)ですが、思いの外、走りはいいですよね。
BR185.2は当方の対象からはかなり新しい部類に属しますが、それでも機会がありましたら入手してみたくなりましたよ。
話は変わりますが、最近、購入を検討するに当たり、Webで情報を探すことが当たり前になりました。
特にデジタルサウンド機は非常に高価なので、そんなに買えるものではありません。
やはり十分な上にも十分調査、検討を行いたいと思いますので。
ですが、いわゆる製品情報と言うのは存外少ないですね。
特に海外には全くと言ってありません。
製品番号を入れても、販売サイトばかりが表示され、メーカー写真ばかり。
これでは全く参考になりません。
その点、Akiraさんのブログは、個々の製品について、非常に懇切丁寧に紹介されており、また、単なる礼賛ではなく、ここをこうしたらもっとよくなる式の建設的な批評もあり、少なくとも日本語で読めるページでは、もっとも役に立っております。
当方もしがないブログをやっておりますが、やはり、言葉よりも実際を見てもらおうと思い、出来るだけ多くの写真を掲示し、あとは見ていただいた方に良し悪しを判断してもらおうと思っております。
メルクリンはAkiraさんが積極的に紹介下さいますが、二線は現在、私以外にはあまりこのようなことをしている方もいらっしゃらないようですので。
今後ともどうかご指導いただきますよう、よろしくお願い致します。
by DB103 (2014-05-28 21:06)
こんばんは、DB103さん。
過分な褒め言葉にくすぐったくもありますが、拙ブログの記事が本当にお役に立てているのであれば嬉しいです。今後ともよろしくお願い致します。
by Akira (2014-05-28 21:11)