42941 FS Bz / Ep.III [Maerklin-Reisezugwagen]
先日紹介したFSのAzと同じ「Riviera-Express」セット(42941)の2等区分室車のモデルである。このセット(+増結セットの2種)には、2両のFS客車が同梱されているので、私の手元にあるFS客車はこの2両のみである。
実は24cmの鉄板客車の時代には単品モデルでAzの同形?のFSの客車があり、ドイツやスイスの客車とはちょっと違う趣のグレー単色の色彩(と言うべきか?)が気になる存在であった。小学生当時の私にはカタログの絵か販売店のショーケースでしか見ることの出来なかったモデルではあったが、単色のモデルにしては、妙にモダンに見えたのも確かである。当時のイタリアもファッションでは世界で最先端を走っていたとは思うが、鉄道車両に関しては敢えて地味な色使いを選んでいるのは、今思えば興味深い。華やかな色彩の服装を纏ったご婦人方をより美しく魅せるために敢えて無彩色の車体色にした...という考えは如何であろうか。
実際のところ、1960年代当時のイタリア国鉄では、まだ各地に蒸気機関車の存在もあったであろうし、ドイツやスイスからしてみれば、何よりメンテナンスがおろそかになるおおらかな国民性もあって汚れが目立ちにくいグレーなのではとも思わなくもない。
さて、モデルに目をやると基本的に1等車のAzに準じている。違うのは区分室数、つまりAzの8部屋に対して10部屋ということだけであろうか。(実車はAz: 10部屋、Bz: 12部屋)つまり窓数の違いのみということであろう。出入口扉窓もDBと同じタイプ、台車も同様にMD形なので1次車という設定と思われる。
車体中央のFSマーク(俗にいうテレビロゴ)と形式番号、そして台枠部分にはRIC表記などが記されているが、中々鮮明な印刷である。
印刷されたサボは興味深い。AzがBasel Bad Bf. - Hamburg-Altonaに対して、このBzはVentimiglia - Hamburg-Altonaと表記されている。つまりこの車両は全線通し運用ということであろう。逆に言えば、Basel Bad Bf. 以南では、この客車に様々な車両が連結され、またイタリアで解放や連結を繰り返しながらVentimiglia迄の運用がなされているのではないかということが想像できよう。
1959年の「Riviera-Express」編成表(Hamburg-Altona - Basel Bad Bf.)では、この客車に表記されている「Wg.Nr.164」(164号車)は、簡易寝台車となっている。1959年だと、まだUIC-X客車はその存在がなく、Gruppe-54客車(全長26.4m、片開き出入口扉のタイプ)がこれに該当するのだろうが、FS車籍のUIC-X以前の26.4m車両の存在自体がないのである。
もっとも、今年のMINITRIX新製品の客車セットには片開きドア車がUIC-X客車と共に同梱されているのは、なんちゃってになってしまっている。1/160のMINITRIXでもUIC-X客車(AzとBz)の製品化が待たれよう。
車端はAzと同じである。尾灯は蓋のついたタイプで別途ランタンを掲げるようになっている。「Riviera-Express」では1/2等合造客車が多く組成されているようであるが、残念ながら27cm客車シリーズに、該当するモデルがない以上、セット同梱も不可能であったのであろう。これは、同じ年にインサイダーモデルのBR10形がリリースされたことで代表的な牽引列車として選ばれたのが「Riviera-Express」である。モデルのベースが無い以上はなんちゃって...で誤魔化さざるを得ないのは致し方ないとも言えなくもないが、出来れば、Gruppe 54客車や簡易寝台車を282mmで製品化した暁に、もう1度この魅力ある、そして実車に即した「Riviera-Express」の編成をリリースしてもらいたいと願うのである。
それまでには、私もHamburg-AltonaからVentimiglia迄の編成を表に纏めてみたいと思う訳である。
Bz25010号車も1次型で実在・・・というところまではOKですが、
1959年の「Riviera-Express」としては?でしょうね。
ちなみにFSの26.4m客車はUIC-Xが最初で、
その前の長距離用客車はUIC-Y規格の車両(あまり多くない)、
更に前は、側扉が引っ込んだTipo1946~1959系(メルクリンの4036相当)となります。
これらFSのUIC-Xは、もう少し後の年代として考えた方がよさそうです。
(REV日付いつになっているでしょうか?)
ちなみにMinitrixの26.4m急行用客車は、1等・2等がGruppe54、
後から追加となった1/2等合造車はなぜかUIC-Xという訳で、
それを流用しただけのようです。
余談ですが、昔の24cm客車は4063というモデルですが、
DBのGruppe54はショーティで1等は8室・2等は10室となっているのに対し、
4063は1等なのに10室となっています。実物と同じといえば同じですが。
by BOAC VC10 (2009-09-06 23:11)
BOAC-VC10さん、おはようございます。
今日も朝の清々しさは格別ですね。湿度も少なくドイツの夏のようです。
さて、詳しい解説を込めたコメントに感謝です。Riviera-Expressの画像を手持ちの書から探しているのですが、中々見つけられません。あれほどの有名な列車でも50年代から60年代にかけての写真はそう簡単には見つかりませんね。
BzのREV表記は13.5.64です。(次回検査日は1年後の日付)ですから1964年から65年にかけて運用されていたことになります。
MINITRIXのGruppe 54のFS仕様は「もどき」だったようですね。UIC-Xの客車と混成していたのでつい実車同様の仕様と見間違えましたが、そうではなかったようで、実際にFSのUIC-X客車が登場する前には、どのような客車によって組成されていたのか興味深いです。場合によっては、BR10とUIC-X/FS客車の組み合わせがあったかも怪しいかも知れません。
24cm鉄板客車の4063ですが、昔のカタログを見て1等なのに10室というのを確認しました。やはり窓数というのは重要ですね。あくまで想像の域を出ませんが、このモデルはイタリアなので、10窓はイタリアの代理店からの要望だったのかも知れません。
24cmも27cmのUIC-Xは良く眺めてみれば窓数の影響で印象に無理があります。当初から窓数を実車と同じ数にしておけば良かったと今になれば感じますね。
by Akira (2009-09-07 09:48)
私もカタログを見たときこれは「もどき」ではないかと思っていました。かりに実在したとしても、世の中が大分落ち着いた1970年近くになってからの雰囲気ではないかと思います。1960年前後の国際列車は例の Orient-Expressはもちろん、RivieraもBrenner-Expressも客車はひどいものでした。Brenneroは何度か乗りましたが、イタリアの2等車はプロシャ時代と思われる、窓に装飾が施されたもので、乗り心地は悪いものの、それはそれなりに古典的な味わいはありました。
本当かウソか分かりませんが、国際列車にはDBはなるべくいい客車は使わない、トルコやイタリーへ行って帰ってくると、近代的な客車は盗まれ、ボロい客車につけ替えられて戻ってくる、というような話をまことしやかに聞かされましたから。
ただ、どの国もミストラルやラインゴルトのような国威発揚型の特別な列車はあくまで国内専用として用いられていました。ご承知のようにTEEも始まったばかりの時代です。
by klaviermusik-koba (2009-09-07 18:51)
興味深いお話をありがとうございます。
私が生まれた60年代初頭というのは、まだまだ世の中が落ち着いていなかったのですね。日本は地理的に島国なのであまり外からの影響は受けにくいでしょうが、大陸だと国情によって経済成長著しい国もあればそうでない国もあったりして...でも鉄路や道路が繋がっているので人やモノは出入りするので、国際列車などはその影響を一番受け易いのでしょう。
それにしてもイタリアのEp.I時代の客車が国際列車として60年代に運用されていたこと自体が驚愕に値しますが、それに乗車された経験があるということも素晴らしいと思います。
考えてみれば私が初めて列車でスイス(Luzern)からイタリア(Firenze)へ行った86年にイタリアで区分室ドアのついた客車を発見したのは、本当に驚きでした。その当時でさえ区分室毎にドアがついている客車など博物館でしか見られないと思い込んでいましたから...。走りながら見たので写真に収められなかったのは残念でした。
TEEは基本的に(一部を除いて)国際列車でしたが、ラインゴルトはオランダからスイス迄の運用なので、経済格差のほとんどない国同士を結ぶ列車でしたね。
VT11.5あたりは、TEE Paris-Ruhrなどフランスへ行く列車もありましたが、フランスと言ってもパリですから問題も少ないのでしょう。
by Akira (2009-09-07 20:32)
Akira様他皆様、御邪魔致します。東西急行です。
戦間期のワゴンリに引き込まれ、ラテン系諸国(何れも海に面しておりますが)を抜ける国際列車に関心を持っております。
BOAC-VC10様
お初にお目に掛かります。また前回御返信を賜り乍ら返信しそびれておりました。お詫び申し上げます。
MINITRIXの26.4m型FS急行客車(ベージュ地レバーレッド帯)セットは私も発売時「機関車も無いのによく出してくれたものよ!」と非常に驚きましたが、御指摘の通りABm以外はDBの54式客車の塗り替えであることが分かり、早々に導入計画より削除した経緯が御座います。
Klaviermusic-koba様
お初にお目に掛かります。EpⅢ期の国際列車、特に今次大戦前より運行されておりました多国間長距離便の落魄振りは後世の私をしても目を覆うものが御座いました。バルカン半島の不安定化が拍車を掛けたことは否めませんし、其れ故にIstanbulに着かないArlberg-Orient-ExpressがSimplon-Orient-Expressより優等列車化したとも思えます(旧敵国の方が治安回復も早かったと言う皮肉)。なおイタリー国内の二等車はお話の中身より推してTipo-1920(EpⅡ期の主力車)の二等或いは三等上がりの二等と御推測致します。
Akira様
私は1970年初頭生まれです。十年の差を埋める為今も検索、解読の連続です。
by 東西急行 (2009-09-08 00:11)
こんにちは、東西急行さん
なんだかんだ言ってもやはり私の興味の対象はEp.IIIからIVに掛けてです。当時のエネルギーみたいなものは、様々な場面で垣間みることができます。ただ、資料が多いようで意外と少ないのもこの時期です。これからも資料発掘とその解読に精を出して共有できればと思っています。
by Akira (2009-09-08 08:20)