ICE運行開始20周年 [欧州鉄道]
▲ 運行初日、ミュンヘン発アウグスブルグ迄のICEのチケット
今日は、1991年6月2日のICE運行が開始されてから丁度20年になる節目の記念日である。
その時、私はミュンヘンのDB Design Centerでインターンシップを受けていて、デザインセンターの同僚と共にインターン初日に初めてICE1の車内見学をして以来ICE1とは色々な場面で縁があったように思っているのである。DBでのインターンシップは楽しく充実していたばかりで、それを書き始めると勢いづいて内容も脱線しそうなので、今回は記さないが、ICEが運用を開始した20年前のこの日について思い出を記してみたいと思う。
上の画像は、その6月2日の開業日ミュンヘンからアウグスブルグまでのICE列車のチケットである。DBの夏ダイヤへの改正のこの日は、丁度休みの日でもあったのでICE1で妻と2人でショートトリップに出掛けることにした。当初、ドイツで初めて走る新幹線開業とあって当日予約なしで乗車するのは難しいかもしれないと考え、6時過ぎに出発する列車の座席予約はそれに先立つ5月31日に行い、この日に備えた。何しろドイツ初の新幹線の開業である。1964年の新幹線東京-大阪間開業初列車のセレモニー風景は、何度も写真を見ているので、その盛り上がりは実際その場に居合わさなかった私でも容易に理解できる。しかし、この時は私の想像は全く外れてしまったのである。
もちろん出発セレモニーは盛大に行われたのであろうが、実は開業数日前にICE新線のKassel-Wilhelmshohe駅にて盛大に行っていたため、本来の開業セレモニーはミュンヘン駅では何もせず、もしかしたらモノ好きな「鉄」がプラットホームには居たかも知れないが、それはごく普通の出発風景であったのを憶えている。
▲ 各座席に置かれていた小冊子「ICE Bordprogramm」(左)と「ICE 時刻表/料金表」(右)である。
ある意味「祭り」状態を期待?していた私には全く拍子抜けな出発風景であったのだが、何事もない静かな早朝のミュンヘン中央駅で指定車両に我々は乗り込んだのである。
我々が予約した座席は2等車で、かつ座席背面にモニターが付いている車両である。しかし、これは喫煙席しかなく、仕方なく喫煙席でガマンすることした。初列車で始発駅から乗車するので特に問題なかろうという判断もあったと思う。あの重厚で評判の芳しくなかった分厚い座席に腰を下ろすと車内案内冊子が置いてあり、それは上画像のICEの車内案内と列車案内の2つのパンフレットであった。
▲ 「ICE Bordprogramm」の車内サービス案内ページ
「ICE Bordprogramm」と呼ばれる冊子は、ICE車内で乗客が受けられるサービスすべてについて記されている。シートもDB初のオーディオが付いたもので、航空機のような6つのプログラム(クラシックからポップス、子供向け、そして3局のラジオ放送)がヘッドフォンで聞くことが出来る。他にデポジット付きコインロッカーや電話やファクシミリ、タイプライターの完備した会議室の利用案内、FIS(Fahrgastinformationssystem)/ 車内情報端末(DBの列車案内やInterCityホテルの予約などが可能)、食堂車(Bord Restaurant)案内、列車車掌室案内、更には携帯電話の普及していない当時の最新式移動電話電波利用案内と公衆電話について記されている。
▲ 「ICE 時刻表/料金表」のICE重要?データ。Cw Wert(空気抵抗)まで記されている。ICE1は0,27とか。
もう1つの「ICE 時刻表/料金表」には当時ハンブルクとミュンヘンを結ぶ1路線だけであったICEの全ての列車の時刻表に、各停車駅間の料金表と地図などが記されている。Ihr Zugbegleiterもあったかも知れないが、見つかっていない。私達の乗車したのはICE 790 "Gambrinus"。Ep.III時代からある名列車の1つである。
▲ ICE列車車内で配られたICE開業記念切手初日(ではないが)スタンプ
▲ 記念切手初日スタンプと共に配られたICEホログラム付き手荷物ネームタグ
出発後、ほどなくすると車掌が検札に廻ってくると、その直後だったかICE運用開始記念品を配って廻っている。もしこれが日本だと乗客が皆「鉄」で埋め尽くされて歓声も上がろうものであるが、ICE初列車のために乗車するような輩は私達だけのようで、幾ばくかのビジネスマンなどが乗車している車内は至って普通。乗客数もまばらであるし、「鉄」分が入っているのは私ぐらいのもの...と感じた次第。
小1時間程で無事ICE1はアウグスブルグ駅に到着し私達は降り立ったが、まだ午前7時台である。まだ店も開いていない早朝のアウグスブルグの街並や有名なフッガー屋敷など清々しいお天気の午前の散策を楽しんだ後再びミュンヘンへ戻ったのだが、ドイツでは初めての新幹線の開業でも、鉄道はごく普通の日常の節目でしかないことに少し驚きもあったと同時に、異常に盛り上がるどこかの国の初列車との違いに、やはり文化の成熟度の違いというものを感じた次第である。
そう言えば、今年の新製品に久しぶりにICE1がリリースされた。最新のEp.VI仕様であるが、新しいサウンド付きmfxデコーダーのサウンドは中々素晴らしいと聞いている。さすがに金欠の私には買うことが出来ないが、20周年を迎えたICE1を久しぶりに思い出して懐かしい気分に浸ってしまった。
参考サイト:Triebzug. / メルクリンドイツサイト
http://www.maerklin.de/de/service/suche/details.html?page=&perpage=10&level1=2341&level2=2346&newprod=1&art_nr=37702&search=1&era=0&gaugechoice=2&groupchoice=0&subgroupchoice=0&catalogue=0&features=0&searchtext=ICE&backlink=%2Fwww.maerklin.de%2Fde%2Fservice%2Fsuche%2Fproduktsuche.html
ICEの貴重な開業グッズを有難うございました。
開業初日にICEでミニ旅行とは羨ましい限りです。私は実際にICEに乗車するまで、開業から14年かかりましたので・・・・
当時の雑誌を見ると、Hamburg-Altonaなどはそれなりに鉄道ファンも集まったようですが、例えば「はやぶさ」運転開始の喧騒などを考えると、ドイツは全く静かだったようですね。
それにしても、当時はICE時刻表があったんですね。列車本数が増えた今では考えられないことです。
by HUH (2011-06-02 20:17)
こんばんは、HUHさん。
先程トラックバックさせて貰いました。この開業日は丁度ミュンヘンに居ましたし、DB職員パスを持っていたので乗車券はタダでした。ICE開業グッズやICE時刻表などは、先日事務所の片付けをしていたら発掘したので、この日にブログに記してやろうと暖めておきました。まだゲテモノの類いが幾つか発掘されておりますので追々お見せしたいと思います。
ICE時刻表は、確かに今考えれば信じられないですが、当時は1路線しかなかったですからね。今当時を思うと懐かしいです。
by Akira (2011-06-02 20:33)