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鉄道復権 自動車社会からの「大逆流」 [日本の鉄道]

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今朝、Amazonから注文していた本が届いた。これは、LRTの普及に尽くされている宇都宮浄人氏執筆の新刊である。宇都宮氏とはLRTの関連でお付き合いがあり、この新刊が出ることを知り、早速手に入れた次第である。表題はタイトル通りであり、LRTだけではなく鉄道全般に渡って氏の今迄の研究活動の集大成と呼ぶべきもの。とは言え、この書は読み応えのあるページ数であり、まだ私も全てを読み終えた訳ではない。

序章の最初に記されている氏自らが体験したドイツベルリンの東西冷戦時代から壁の崩壊、そしてベルリン中央駅開業と目まぐるしく変わった90年代からの10余年は、私自身が体験した壁のあった時代の東西ドイツの空気感と重なり、それを共有出来たのが宇都宮氏であった。

この書では、日本と言う極東の小さな国が20世紀に世界でも稀にみる鉄道先進国になったいきさつ、一方欧州では衰退が激しかった鉄道の復権を成し遂げたかについて、そしてそれらの具体的検証にも考察されている。「鉄道」について非常に濃く深く掘り下げられた内容を、読みやすく理解しやすく纏められた良書であることに間違いない。

ここの序章で記されている「交通専門家であるほど欧州を見下すような意見を持つ傾向もある」との辛辣な意見は、私自身も体感的に的を得ているように感じる。私が知るドイツ人は一様に日本の鉄道の正確さや神業のような緻密な列車運用に驚くが、一方で単に人を捌くためだけにベクトルを向けていることを見透かされていることも彼らの言動で理解出来るのである。公共交通の本当の目的とは何か?という命題に対して日本と欧州の出した答えは明らかに異なり、それが今の日本と欧州の現状の違いと重なるのである。日本の鉄道は、ドイツの約10倍の利用者数と約1/3の路線距離という大きな違いもある。ただ、利用者にとっての快適な移動という点については、メンタル面の多少の差はあれ、同じ方向であるべきである。

この「違いとなぜ」を浮き彫りにしてくれるのがこの書であると感じている。まだ全てを読み終えていないので、言いきることは出来ないが、いち早くこの書の刊行をお伝えしたいためにここに記したということである。

最後に、「成熟社会の地域再生・日本再生を歴史的な経緯や欧州の鉄道の動向から考えたい」という氏のこの書に対しての意気込みをお伝えして紹介としたい。


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CISALPINO

Akiraさんこんにちは。表紙からしてとても興味深い内容と推察され読んでみたいと思います。

日本は小さな島に鉄道だけで採算が取れる都市が幾つもある世界唯一の国でしょう。しかし私は、鉄道は、国として道路を敷くように鉄道を敷いて、血行を良くする働きに専念する必要があると思います。

東京など大都市で大きな利益が上がるのは、人口密度が高く鉄道会社もそれに追われた結果だと思います。もちろんそれが良い方向、つまり世界でも類を見ない神業的なオペレーションを会得したのは言うまでもありません。

しかしそれが、都市の鉄道の常識を地方に求め、その結果、地方の交通インフラがクルマ中心になってしまった…その原因の一つになったのだと私は思っています。
by CISALPINO (2012-03-25 16:08) 

Akira

こんにちは、CISALPINOさん。

仰る通りですね。日本独特の地勢的、また大都市集中型構造による政策で、鉄道もまた大きな影響を受けています。残念ながら経済成長期を過ぎた日本では今迄の交通政策では無理があり、地方軽視のツケが今の状況を更に悪化させる状況になりつつあると言えましょう。今や大都市では若者のクルマ離れが起こって久しいですが、地方では未だにクルマは移動の必需です。つまり移動手段の選択の余地がない状況です。
このような状況下で、この書はその解決方法を指南するまではいかずとも、何らかのヒントを与える可能性を秘めていると考えます。
by Akira (2012-03-25 20:02) 

nasuhikari

私もこの本を読みました。私は栃木県に住んでおり宇都宮に何度も行きますが、本にも書いてあるように、市民は今の現状と建設に掛かる税金にしか頭に無く、自分が年取った後の事はあまり関心が無いと、「結局LRTが通る所しか関係ないわ。」と市民のLRTに対しての関心度が低いのが、露呈しています。実際市内は空いており、郊外が渋滞で混雑する何がしたいのか分からない状況なんですけど。田舎も車社会はもう限界が近づいているのは、肌で感じるんですけど、幾らバスや電車が近くに通っていても利用しないのが現状ですね。

by nasuhikari (2012-10-28 00:58) 

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