フィンランドのくらしとデザイン 〜ムーミンが住む森の生活 [Kunst]
大学の授業が夏休みになった木曜日に、かねてから行きたかった宇都宮美術館で行われている表題の展覧会にようやく出掛けることができた。上画像は、美術館下にある展示案内。
私の住まいから宇都宮まで約100Kmの距離。東京迄の距離とほぼ同じである。但し、東京中心の交通網では、心理的距離とは異なるものである。しかし、昨年の震災直前に全線開通した北関東自動車道により、少なくとも自動車では印象は全く異なるものとなった。以前子供達が小さかった頃、宇都宮よりやや手前の壬生町にある博物館にクルマで出掛けたことがあったが、高速自動車道が出来る前だったので、一般道を使うためとても遠かった印象がある。今回は、ウチから美術館迄約1時間半である。お盆前ということもあって渋滞と呼べるような混雑もなく、その道のりは晴天にも恵まれ快適なドライヴとなった。
宇都宮美術館は、市街地から少し離れた丘陵地の上にあり、大学や新興住宅地を抜けた頂上と言うべき場所にある。開館15周年であるらしいが、この美術館が完成した当時、その写真を見て是非訪れたい美術館と思った1つである。それは、その優美な建築が見たかったからである。上画像は、駐車場から美術館迄のアプローチの途中に広がる広場である。久しぶりにドイツのような大きな芝地と広い空を眺めることができた。
美術館の外観は上の画像である。室内は撮影が出来ないのでここまでであるが、想像していた通りの美しい美術館である。
私達にとって、テレビ放映で有名なムーミンのいるフィンランドという国は、もちろん知られた国の1つではあるが、その実情、つまり国土の成り立ちや、文化、環境については、例えばドイツ、フランス、イタリア、イギリスなどに比べて知られていないのではないだろうか。この展覧会は、そういう我々一般のフィンランド感というものを理解した上での奥深い展示である。
この国は国土の面積がイメージではとても広い印象があるが、実は日本の国土より若干小さい。それは我々が良く目にする世界地図がメルカトル図法によるものであるからという。北欧のこの国をメルカトル図法で表現すると実際の面積より大きく描かれるためである。より南に位置する日本と、この地図で大きさを比較するのは難しい。人口については記す迄もなく日本より随分と少ない。(更に日本は国土の約7割が山岳地帯なので、居住出来る場所が更に小さいのはご承知の通り)
そんな国土を持つフィンランドは、独立してまだ100年も経っていないという。長らくスウェーデンやロシアに支配されていた歴史を持つため、例えばフィンランド国鉄(VR)の鉄道は、ロシアと同じ広軌だったりするのもその影響であろう。(そのためRe460のVR仕様は広軌である)
この展示会では、会場を館内の2つの展示室でみる事ができる。1つは絵画、カレワラと呼ばれる物語についての展示、ヘルシンキ中央駅を手がけた建築家サーリネンの建築、手工芸や楽器の紹介など。これらを見ると、やはりフィンランドの人々は森の民ということが理解出来る。ここでフィンランドの文化と歴史が理解出来る。
そしてもう一つの会場には、私達がフィンランドを断片的に知り得ている幾つかのアイテムをピックアップして紹介している。そこにあるのは、例えばムーミンとその作者のトーベヤンソンの紹介や彼女の作品、また最近独特の花柄模様で人気のmarimekkoのアパレル類やアアルトの家具、照明、イッターラ社のガラス陶器に代表される美しく普遍とも言えるプロダクトデザインも見ることが出来る。特にアアルトのデザインした幾つかの椅子は実際に座ることができるのが嬉しい。
そして、今回の展示で私が1番見たかったのがヘルシンキ市交通局のLRTに代表される公共交通とピクトグラムを多用したデザインの実例が展示されていることである。これについては、大きなスペースを割いてはいないが、利用者対して「語りかける」デザインであることが理解出来る。それもピクトグラムが主であるため、利用者が文字情報に頼らなくてもオリエンテーション可能であることである。
特に公共交通とサインについては、その絵柄で誘導出来るしくみや使い方に於いて我が国でも学ぶべきところは多いと感じた次第である。東京などの大都市で公営民営問わず全ての公共交通がピクトグラムや簡潔な文字情報で統一した案内が出来るなら、その効率化と利用者のストレス軽減にとって大きなプラスになるであろうことは容易に想像出来るものである。
なお、この展覧会は今月26日(日)迄で、その後9月1日(土)から静岡市美術館で同様の展覧会が行われる。
上記からも大きな収穫のあったフィンランド展である。もちろん帰りに宇都宮餃子のお店に立ち寄ったのは言うまでもない。
参考サイト:宇都宮美術館
http://u-moa.jp/
フィンランドのくらしとデザイン展
http://www.finland-design.com/
訪ねるのが一層楽しみになりました。来週、行ってきます!
by 大洲 大作 (2012-08-12 03:58)
大洲さん、おはようございます。
やはり行かれるのですね。どうか、ゆっくりと展示(と餃子?)を楽しんで来てください。
by Akira (2012-08-12 09:05)