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晩秋のドイツ旅行(5) [Reise]

この日の朝も目が醒めたのは5時前である。時差ボケは2日経っても直らない。もっともこの日は、Dillingen駅を朝7:10発のREに乗って出発する日である。6時には、ホストファミリー夫妻も起きて一緒に朝食を取る。まだ暗い中ご主人が私達を駅迄送ってくれた。今回の行き先は、息子が生まれた地であるWeidenへ行く事にしたのである。当時、唯一の日本人家族であった私達の問題をいつも親身に助けてくれたご近所の方のお宅へ訪れるためである。


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Dillingen駅では、ここまでクルマで送ってくれたご主人に私は今迄の感謝の意と別れの挨拶をして、やってきたVT612形のRE 12002に乗り込む。ここザールラントはドイツの西の端でWeidenはチェコ国境に近い東の端にあたる。Dillingenを7時過ぎに出発してもWeidenには、午後1時半過ぎの到着予定である。もちろんローカルな場所ゆえ直通列車などはなく、途中Mannheim HbfとFrankfurt/M Hbf、そしてNürnberg Hbfの3カ所で乗換えを行う。最近のDBは遅れが常態化しているので上手く乗継げるのかも心配である。この時は木曜日がカソリックを主とする州が休日であることもあって、列車の混雑が予想され、前日Saarbrücken Hbfで列車の予約は行った。

乗車したVT612形は、朝早いこともあって空いていて、向かい合わせのテーブル席に親子で陣取り、朝の景色を堪能しながら列車は快調に東へと向かう。Saarbrücken Hbf迄は昨日と同じ路線を走るが、ここからは私にとって初めてである。Saarbrücken Hbfからは列車番号をRE 4271に変え一路Mannheim Hbfへと目指す。この路線は、Kaiserslautern Hbf、Neustadt (Weinstr) Hbf、Ludwigshafen (Rhein)を経由してMannheim Hbfに至るルートである。車窓は途中からワイン用ぶどう畑が多くなる。このあたりがワイン街道と呼ばれるゆえんである。途中の駅に停まる度にだんだんと車内は賑やかになってくる。
最初4人掛けのテーブルを挟んだ席に親子2人で占領していたが、暫くすると初老の男性と同席になる。彼はこの路線を良く知っているのか、私にしきりに車窓の沿線風景の解説をしてくれる。彼もまた昔ながらの良きドイツ人の1人であるように感じた。

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▲ Mannheim Hbfで発車を待つET425

9時12分には、Mannheim Hbfに到着予定であったが、若干遅れて到着した。これは遅れと言っても許容範囲であり、乗継ぎのICEにもまだ余裕がある。既に9時を廻っているのに、太陽は低くまるで早朝のようである。少しばかり時間があったので乗継ぎ列車のICEが到着するホームで撮影したりするが、ホームには多くの乗客が列車を待っているので、思うようには写真が撮れない。それに今回荷物が多いので中々身動きが取りにくいのである。

私達が乗換えるICE 692はICE1であった。今回初めてリニューアルされたICE1に乗車できた。以前の薄いブルーに彩られたインテリアに比べて、ICE3に準じた室内デザインは、シートも変わって高級感と落ち着きが加わり好感の持てるものである。
次の乗換えはFrankfurt (Main) Hbfで、ここ迄30分余りの乗車時間とたったの一駅である。このICEは遅れもなく座席予約はしたものの、すぐに降りる用意をするので落ち着かない。

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▲ 定刻に到着したICE 692

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▲ Frankfurt Main Hbfは、行き止まり駅ならではの光景

10時過ぎ、程なく定刻に到着した乗換駅のFrankfurt (Main) Hbfは、やはり巨大なターミナルの行き止まり駅である。このドーム型駅舎は、いつ来てもその巨大さと独特の雰囲気にヨーロッパの駅を感じさせる雰囲気である。ただ、ドイツの中心にあるためか、さほど国際色を感じるものではない。前に来た時と明らかに異なるのは、民間の鉄道会社による派手な塗装の車両を見掛けることであろうか。統一された塗装の車両が並ぶ駅も悪くはないが、やはり様々な個性的な塗装を競うのは、見ている方も楽しい。

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▲ 民間会社の車両も加わって、より賑やかな印象のFrankfurt Main Hbf

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▲ 到着した111形は、正面の形式表記のチェックデジットが省略されている。これはDB Regio AG所属車両に多くみられた。

ここでの乗換えは10分程である。その間に写真を撮るのはいつもの通り。息子に荷物の見張りをさせて色々と撮影する。但し乗換え時間が多くはないのでホームの端迄行けるような余裕はない。
程なく到着したICE 1021は、再びICE1である。今迄乗ったICEの中で最も多く乗っているのは、おそらくICE1であろう。一番歴史が長いという事もあるが、DBでインターンシップをしていた時にデビューし、そのインターンシップ初日に営業開始前のICE1に乗車したのが最初である。営業開始初日にも乗車し、その後も運転室に乗せてもらって走ったこともあるのがICE1である。どうも縁のあるのがICE1なのであろう。逆に縁のないのがICE-TDである。わざわざ日本から座席予約迄して目的の大きな1つがICE-TD乗車であったにもかかわらず、丁度当局から運転禁止をされてしまったので乗れなかった思いがある。そして今もまだ乗れていない。

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▲ ICE 1021は、中々の混雑具合である。

今度は、Nürnberg Hbf迄約2時間の旅である。途中Hanau HbfとWürzburg Hbfに停車する。NBSやABSを走るICEと今迄乗って来たREの走りと比べる迄もないが、車窓の移り変わりは早く、時間は掛かるがゆったりと車窓を楽しめるREも悪くないと改めて感じた次第である。それにしても今回車窓の景色を見ながら大きく変わったと思うのは、風力発電施設だけでなく、メガゾーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電施設が沿線に数多く設置されていたことである。脱原発に舵を切ったドイツでは、それ以前から自然エネルギー導入に力を入れ、既に自然エネルギーが占める割合も、雇用についても拡大し続けていると聞いている。

このICE 1021は、それにしても混んでいる。前日に座席予約をしたのは正解であった。ICE1のリニューアルは、壁やシートがICE3と同じ仕様に変更され、雰囲気も良くなったが、以前に比べ開放室部分のシートピッチが狭くなり座席定員が増えた事が更に混んでいる印象を強めてしまっているのかも。車両の1/3程は区分室となっているのは同じで、もちろんWCも同じレイアウトである。但し、トイレの配色、便器の蓋の色まで変えているのは驚いた。このリニューアルならば、美しい木目も本物ではないことはすぐ解るにしても雰囲気は随分改善されて良くなったと思う。

Nürnberg Hbfに近づき、ICE1の2時間余りの旅もそろそろ終了となる頃、車内アナウンスでは遅れが出ているという、それも10分程度のものではなく、20分以上の遅れとか。接続時間は12分しかないので、この列車にはもう乗れない。やはり昨今のDBはこんなものであろう。Nürnberg Hbfへ到着すると、その時次の接続列車の時間を尋ねようと駅コンコースにある「Service Point」でICEの遅れで乗継ぎ出来なかった旨を言うと、切符を見せろと言う。切符を示したところ、手元の端末で何やら検索している。どうもその列車の遅れを確認しているように見えた。するとおもむろに私の示した切符にスタンプを押し、手元から書類を出して封筒に入れ、書込んでからDB宛に送れと言う。前にもこのようなことがあったので察しはついたが、きっとICE料金の払戻しがあるのかもしれない。この書類は帰国してからDBに送ったので、どうなるのか楽しみでもある。もちろん次に乗るべき列車の時刻も教えて貰えた。結局、次の列車は1時間後になる。それでも私がWeidenに居た頃は、同じ区間をRSB(今のRE)が2時間ヘッドだったのでサービスは改善されている。この区間は、今や半分がagilisやVogtlandbahnなど民間会社運営の列車が走っているが、この区間では、途中乗換える上に直通のREよりも運賃が高いので、迷わずDBのREとなった。

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▲ Nürnberg Hbfで出発を待つVT610

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▲ VT610の車内。以前と全く変わらないインテリア

駅構内でWeidenで待つお宅に電話し、到着時刻が遅れる旨を伝える。丁度時間が少し出来たので駅構内の魚専門のファストフード店のNORDSEEでサンドイッチの昼食を取る。昼食を取っていると1時間程度はすぐに経ち、我々がホームに上がった時には、既にVT610気動車が待っていた。外観はもちろんV.Rot色であるが、車内のインテリアは登場時から全く変わっていない。シートも今のRegio車両の標準であるブルー地に紺色の四角が並ぶものではなく、以前の薄いグリーンのような色である。
乗車して暫くするとエンジンが掛かり、程なく発車する。この区間は幾度となく乗ったことがある路線なので、車窓はうろ覚えながらも記憶に残っている光景である。ただ、今日のような時間帯に乗車するのは初めてである。走り始めてから暫くするとスピードを増すのは、この振子気動車ならではである。カーブに掛かるごとにスウィングするVT610はいつもながら、その速度と共に感動的ですらあるが、やはり運転席脇で前方を眺めながらの方が迫力ある走りを満喫できる。

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▲ Weidenにもagilisの気動車が入ってくる

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▲ VT628.2は、VT610同様に前の塗装時代からここを走っている。

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▲ Schürzenwagen(Büe)からの改造車を発見

Nürnberg Hbfから1時間余りで目的地のWeidenにようやく到着する。ここは、Hof - Regensburgのほぼ中間に位置し、戦前はそこそこの幹線だったとは思うが、今は電化から取り残され、DBの民営化前にはInterRegioの路線の1つとしてミュンヘンの先のオーバーストドルフ迄の直通列車が設定されていたが、今やREがRegensburg迄でしか行かず寂しい限りである。
ここから、目的の家迄はタクシーで行こうと考えていたため、ここに留め置かれている幾つかの車両をカメラに収め、荷物を引きずって昔と変わらぬ駅舎へ向かうと、そこには訪問するGさんが迎えに来てくれていたのである。彼はもう80歳を過ぎていたが、とてもお元気そうである。久しぶりに再会をお互いに喜んだのである。

彼の家は、私が居た頃と全くと言って良い程変わらず、息子が小さい頃から慣れ親しんだ家でもあったので、彼にとっても懐かしかったに違いない。ここ数年の日本の情勢はドイツ人は誰もが心配して質問される。ドイツでの情報はもちろん一方的であり、センセーショナルな報道が多かっただけに心配は尚更だったと思う。私達親子が元気な姿で来た事で安心したと思う。
話は中々尽きなかったが、美味しい赤ワインをご馳走になりながら久しぶりのWeidenの夜を楽しんだのである。

続く

[EDIT] 2012-11-15
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Berliner

ICE-TDの情報リンク有り難うございました。

私も最近、DBの長距離列車はとても混んでいると感じています。DBもSparpreisでどんどん売っていますので仕方ないかもしれません。ローコストエアーとの競合のせいでしょう。
私はSparpreisの恩恵に与ってる方なので悪く言えませんが、長距離列車に乗るときには必ず予約することにしています。
by Berliner (2012-11-14 22:23) 

Akira

こんにちは、Berlinerさん。

以前に比べ確かにICEなどの混雑は増しているような気がします。これは、DBにとって良いことでしょうが、利用者にとってはゆったりとした旅がちょっとしにくくなるかなとも思えますよね。もしかしたら、混雑度の高さ(つまり駅での停車時間超過)が列車の常態的な遅れの一因になっているのかなとも思えましたが、どうなのでしょう?
by Akira (2012-11-14 22:50) 

HUH

こんにちは。

一日で大移動でしたね。でも様々な列車を眺めながらの移動ですから、きっとそれはそれで楽しかったものと推察します。610形は私も一度乗ってみたいです。

私の経験でも、1等車はともかく、2等車の混雑はかなりものですね。大きなスーツケースを持ち歩くと、2等車での旅行はかなり辛く感じることがあります。遅れの一因になっている可能性もあるかもしれませんが、一方で無駄に駅に延々と止まったり徐行することも多いので、もっと根本的な理由があるのかもしれません。

ところで、またまた些細なことかもしれませんが、ICE 1の座席レイアウトは更新工事にかなり変わっています。座席ピッチが短縮され、定員がかなり増えています。そのため、窓割りと座席配置が合わず、窓側でも全く外が見えない席が存在しています。
ICE 1の更新後の車内デザイナは私も好きです。BordRestaurantも健在ですし、ゆっくりと旅を楽しむ気分になれますね。
by HUH (2012-11-15 00:22) 

Akira

おはようございます、HUHさん。

コメントとご指摘ありがとうございます。私が丁度DBでインターンしている時、製造中だった610ですから、今となってはその陳腐化も他の車両と比べてしまえば、何故リニューアルしないの?という感じですが、走りに関して言えば、相変わらずの駿足ぶりに満足しました。

常態化したDB列車の遅延に関しては、もはや当たり前で、車内で聞く乗客の愚痴の最も多い1つがこの話題ではないのかと思えるくらい聞きました。
ICE1リニューアルに関しては座席数が増えたのですね。ありがとうござます。原文修正いたしました。BordRestarantにはコーヒーを買いに行きましたが、ビストロ部分が満席で、やはりこの混雑は何とかして欲しいと感じました。仕方がないことではありますが...。
by Akira (2012-11-15 07:06) 

Berliner

混雑度の高さが遅れに繋がっているということは・・、あると思いますねぇ。ドイツ人は列車の旅でも、日本人が海外に飛行機で行くときのような大荷物を持ち込む人も多いので、段差のあるホームでは乗り降りに時間がかかっていますから。
混雑はしていますがDBが儲かっているかどうかは、わかりません。Sparpreisはとても安いですから。え、そんなんでいいの?ってくらいですよね。この前の阿房列車は行きが21.75、帰りが33ユーロでした(これに座席指定の8ユーロが往復で加わります)。鉄男には有り難い料金ですが、昔ののんびりした列車の旅は、既に過去のものになりつつあります。のんびりした旅をしたい人は、一等車でしょうか。これもSparpreisがありますから、昔の二等車の旅と金額的には変わないかも。
HUHさんのコメントによると一等車の席にもかつての余裕がないそうですから、一等車がかつての二等車になったのでしょうか。そう考えるとプレミア/グランクラスが出てきつつあるのも頷けます。
これからは三等制復活かもしれませんよ。
定時発着性は、もう少し改善して欲しいですが。
by Berliner (2012-11-15 08:31) 

Akira

Berlinerさん、こんにちは。

荷物の多さでは、私も今回他人のことを言える立場ではありませんでした。私のスーツケースと手提げカバンの他、息子から持って帰って欲しいと頼まれたバッグの合計3つを列車内に持ち込んでいましたから。この時は親子2人でしたからさほど問題はありませんでしたが、一人になった時、列車の乗り降りで数回ステップの乗り降りを繰り返す羽目に...。
価格については、確かにDBを良く利用している人には安い価格になりましたよね。私は今回ジャーマンレイルパスを使いましたが、息子は、前日購入だったのでSparpreisチケットが買えず、あわや通常価格になりそうでしたが、今期間限定で4ヶ月有効のBahnCard25が安く出ていたので、それを使って若干の値引きとなりました。

DBは、まだ3等級制になっていませんが、1等車が2等車並の混雑になってくれば、更なる上級クラスが出来る可能性は出てくるかも知れません。
by Akira (2012-11-15 08:45) 

Akira

こんにちは、hikariさん。

裏というほどのものではありませんが、最近146.5形のICEカラーが登場しまして、これの番号がチェックデジット付きでした。一方111形以外でも、Regio AGの車両の少なからずがチェックデジットなしで走っているようです。なので明らかにFernverkehrでは、今迄通りということだと思います。ただ、公式な文書なり証拠となるとありません。このあたり、同じDB内で統一されていないのも不可解ですし、もう少し調べた方が良さそうですね。何か情報がありましたらお願いします。
文字の誤りは修正しておきます。ご指摘ありがとうございます。
by Akira (2012-11-16 21:25) 

Akira

hikariさん、こんにちは。

ありがとうございます。現車情報は最も信頼性が高いです。これを見る限り2008年5月9日から2009年6月25日の間に変更となったということですね。機関車の検査をする工場というのはある程度限られていると思われますので、ここからまた絞り込みが出来そうです。それにしても2009年からこの事実に気づかなかったとは....。逆にこの手の情報がネットで探せば出てくる可能性も高い気もしますので、ちょっとトライしてみます。
by Akira (2012-11-20 21:09) 

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