ホテルオリエント急行の宿泊券 [欧州鉄道]
先程暫く開けていなかった昔収集していた記念切符の缶を開けてみたら、画像の切符らしきものが入っていた。良く見てみると、私が高校生の頃泊まりに行ったCIWL寝台車と食堂車のホテルオリエント急行の宿泊バウチャーである。かすかな記憶は残っていたが、まさか保管しているとは思わなかったので驚いた。
そのホテルオリエント急行は、以前当ブログでその時撮影した写真と共に以下紹介した。
http://maerklin-kiste.blog.so-net.ne.jp/2012-07-11
画像の表紙は、お気づきだとは思うがワゴン・リ社が発行する寝台券の表紙と同じように見える。「見える」と記したのは、中央上に「HOTEL ORIENT EXPRESS」と記されているのに気づかれた方もいると思うが、これは、おそらくオリジナルのワゴン・リの予約券用表紙に加えられたものだろう。中々凝った作りだと思う。
これを捲ると、オリジナルに近い切符が出てくる。「近い」と記したのは、ここも変更されている項目があるからである。左側に手書き風に記されているのは、出発駅、経由駅、目的地駅である。これによると、琵琶湖のホテルはパリからスイスのローザンヌ、ドイツのミュンヘン、そしてベオグラードを経由して終着のイスタンブール迄となっている。ストラスブール経由ではない、かなり遠回りであるのは興味深い行程である。(ローザンヌからミュンヘン経由でベオグラード方面は無理っぽい..)
あと、右側の太字でROOM NO.と記されているのもオリジナルではない。ここには、通常「号車番号」が記される。
画像の用紙には何も記されていないが、これとは別に宿泊バウチャーとして同じ用紙に私の記名が入った切符も用意されていて、ROOM NO.の下に部屋番号が手書きされている。
興味深いのは、号車番号マーク(車両の絵)の下には、1等扱いでSINGLE、SPECIAL、SPEC.T2、DOUBLE、2等扱いでTOUR. T2、TOUR. T3、1等CC、2等CCと印刷されていること。この当時は寝台車は寝台個室が汎用に出来ていて様々な形に組替えられることが出来た。SINGLEは、1段寝台、SPECIALは、2部屋をコネクティングしたもの。SPEC. T2は良くわからないがT2寝台車の個室を2部屋コネクティングしたものだろうか?DOUBLEは2段寝台。2等のT2やT3はご存知T2S寝台車の2段と一般型の3段寝台である。CCは1、2等の座席区分室だろうか。
画像は、あてがわれた部屋を示す編成表を示したものと日本語によるホテル案内である。この図を見ると、機関車を除いて8両の客車で編成されていることが理解出来る。機関車の次位に食堂車が連結されていたことが記憶にあるので、寝台車は7両であろうか。(もしかしたら食堂車を除いた編成表かもしれない)
この説明の最後にお手洗いについて、各車の前後にある旨が記されている。つまり客車のWCを使っている。ということはそのための設備が施されていたと想像出来る。元々はこの客車には汚水処理装置など設備されていないからだ。
結果として、最後には酷い処分をされてしまったホテルオリエントエキスプレスではあるが、導入当時からしばらくは、相当に力が入って運営されていたことがこのバウチャーからも理解出来る。残念だったのは、導入当初の意思が長く続かなかったことであろう。車体が傷めば中々再整備も難しい客車だっただけに、この客車の価値の真の理解がなければ、結果は早々に見えていたのかも知れない。
いずれにしても今回見つけたのは、中々凝った宿泊バウチャーで、当時全く欧州の列車事情を知らなかったに等しかった私には、ワゴン・リのLWマークもしっかり印刷されているこの切符風のそれは、貴重に感じたのであろう。今では、別の意味で貴重なものとなったのであるが...。
[EDIT] 2014-10-4
こんにちはカゲノです。
弊ブログで紹介している欧州鉄道古書にも琵琶湖のホテルオリエントエクスプレスのことが載っていてどんなのだったのかなと思っていましたがこんなところまでこだわっていたのですね。
導入にあたっては1両1千万、運搬1両につき1千万 その他いろいろあって6億(1980年代当時)とのこと。導入当時社長が90歳代だったらしいので最後の扱いについては経営者、方針が変わっていたのかもしれませんね。
私としてはメルクリンで知ったOBBのBR52がかつて日本で見ることができた、というのが羨ましかったりします。
by カゲノ (2014-10-04 10:51)
こんにちは、カゲノさん。
はい、私が初めて(生意気にも!)高校生の時、これに泊まるのが目的だけで訪れた時は、かなり力が入っていたように思いました。当時の社長さんがそれほどのお歳だったとは知りませんでした。その後社長の交代は風の便りには聞いていましたが、このような車両は見る人次第でいかようにもなってしまうところが辛いですよね。もし、今であればもう少しその価値の理解が進んでいるように思うのですが..当時は52 形機関車にしても、朽ちてくれば単なる鉄屑に見えてしまうのかもしれません。残念ながら...。
by Akira (2014-10-04 15:07)
Akira様、誠に誠に御無沙汰致しております。東西急行(EpⅡワゴンリ隊再編の途絶たるるも細々と運行中)です。
御紹介の宿泊専用列車を私が知ったのは10代に入った直後でした。媒体は御多分に漏れず、あの味の有る線画です。泊りに行ける立場となった頃には既に壊されており、永久に謎のままと言う点は未だ口惜しく思います。
附記:KATOの誇る!1/160ワゴンリ(東京急行!!)が本土上陸前仕様で揃いました。国外向け発売通知を見落とし、予約特価で買えなかったことが悔やまれますが、其の時点で動かせる資産を総投入し配備に漕ぎ付けたものです。
どうにも引っ掛かるUIC符丁、重複する車体番号、改装され過ぎた標準食堂車の修正は叶いませんが、「北急行」「青列車」だと思えばギリギリ許容範囲の車輛群です。
by 東西急行 (2014-11-08 21:54)
東西急行さん、こんにちは。
こちらこそ、ご無沙汰しています。
KATOからリリースされているCIWL客車は1:160だということは最近知りました。ドイツでもそこそこ話題にはなっていたようです。このモデルは、バリー香港のオリエント急行仕様と日本国内運用仕様の他、4158(プルマン)だけは、ラリックミュージアム仕様があるそうです。ラリック仕様は、実車が本国に戻ってヘッダ上部の文字がCIWLからNIOEに変わってしまったようで、その変更後の表記でリリースされているみたいです。なので、UIC表記付きでもまだ良い方かも知れません。一方、これだけの金型を作っているので、せめて欧州向けにでもEp.IIやらEp.III仕様がリリースされても良さそうですね。それこそ「NORD EXPRESS」や「Train Blue」編成も可能かも。実車検証は難しいかもしれませんが...。
by Akira (2014-11-10 14:54)
Akira様、東西急行です。御返信賜り誠に恐縮です。
購入したKATOの車両群は足りない分、私の目から見て不自然、或いは重要では無いな車輛は追加買いしたASSY組立品で置き換えております。
「NORD EXPRESS」が「Simplon Orient Express」より上等な車輛であるLx型を回して貰えていたのは非常に不自然だ(同時期のSOEは一部区間でガタの来まくった木造車が使われていたにも関わらず、何故北回りの田舎列車が偉いのか)と多年訝っておりましたが、1935年以降1939年迄の国際情勢(敗戦国が再興大国ヅラして脅す、蹴るのやりたい放題大暴れ、戦勝国はマァマァ顔で腰砕け)を再確認するに「嫌だったんだろうが仕方無かったんだろうなぁ、共産国家へのハッタリも有ったんだろうし」と得心し嘆息した次第です。
by 東西急行 (2014-11-10 23:54)
東西急行さん、おはようございます。
なるほど、KATOはセット売りなのでご苦労のほどが窺えます。たらればにはなりますが、せっかく敢えて1:160スケールで製品化したのだから、欧州総代理と組んで単品(または列車名セット)でEp.IIやIIIを製品化すれば、そこそこ話題になり、歓迎されると思うのですが..。
NORD EXPRESSとSOEの組成される車種格差というのは、興味深いですね。そこに仰るような政治的な時代背景などが関係しているのも、また面白いです。
by Akira (2014-11-11 09:12)