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42470 Pullmanwagen-Set „Edelweiß“ [Maerklin-Reisezugwagen]

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▲ 当時のポスター(作者不詳)

今年の新製品のハイライトの1つ、CIWL鋼製1/2等プルマン客車+荷物車6両セット(42470)について、ここでは個別の車両モデルについてではなく、セット全体として記したいと思います。

[実車について]
この列車は、1928年の夏ダイヤ改正でAmsterdam - Bruxells - Strasbourg - Basel - Luzern (- Zürich)が運用開始されました。オランダとスイスを結ぶブルジョア階級以上の利用を見込んだ列車で、オランダからベルギー、フランス、スイスの独仏国境でもあるBaselまでドイツを通らずに走ります。一方CIWLのライバルでもあるドイツのMITROPAは、"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"と同じ出発地/到着地のAmsterdam - (Hoek van Holland-) Duisburg - Düsseldorf - Köln - Mainz - Mannheim - Karlsruhe - Freiburg - Baselを結ぶFD 163/164 "Rheingold-EXPRESS"がCIWL同様1/2等プルマン客車と荷物車で1928年夏ダイヤから運用開始されます。どちらもコースは違えど同じアムステルダムからバーゼルを目指すため、今風に言うなら「ガチ対決」の様相を呈しているように思えてきます。
利用者の立場からすれば、ベルギーとドイツの技術とサービス、更には芸術まで競う様相であったのではと思います。CIWLはベルギーの完全な民間車両運行会社であり、欧州西側に強く、アフリカ、中東、ロシア、アジア極東までネットワークのある国際的な会社である一方、MITROPAは、DRGの傘下でドイツを中心とした中欧地域のネットワークが主で規模はCIWLに比べ遥かに小さいです。

その2つの鉄道サービスに特化した会社が同じ出発/到着地の豪華列車をほぼ同時に走らせたわけです。違いといえば途中の経路(国)とCIWLの"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"は、Baselから先にある観光地ルツェルン、またスイス経済の中心地チューリヒまで走ること。(また"Rheingold-EXPRESS"も季節によってルツェルンまで延長運転されました)一方"Rheingold-EXPRESS"は、英国ロンドンからフェリー経由でHoek van Holland発の編成に接続され、ドイツ経由でBaselに向かいます。

この違いは、おそらくアムステルダム - バーゼルを利用する場合以外は乗降駅次第ということになるでしょう。そういう意味ではライバルでありながらも共存できる素地がある2列車だとも言えると思います。
何れにしてもこの2つのプルマン客車で組成された列車の乗客は、階級格差の大きかった時代の上位に位置する、つまり現代で言えば航空機のファーストクラスの利用者レベルの限られた人々のみでした。そのような乗客に満足のゆくサービスを提供できるのは、古くから列車サービスやホテル経営のノウハウを持つCIWL社と列車サービスと共にルフトハンザの機内サービスも行なっていたMITROPAのみとも言えるかも知れません。

さて、今回発表されたCIWLプルマン客車モデルは、4両の車両全てが異なる車両で、1等厨房付きWPCと厨房なしのWPがTyp. "Côte d'Azur"、そして2等厨房付きWPCと厨房なしのWPがTyp."Étoile du Nord"です。編成表はまた後日作成したいと考えていますが、手元にある1931年の編成は…

荷物+1等WPC+2等WP+2等WPC+1等WP+荷物

窓の形状が異なるTyp. "Côte d'Azur"(1等)とTyp. "Étoile du Nord"(2等)を厨房を挟んで1ユニットと仕立てている"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"は、途中駅で解放作業を行なって行き先が2カ所にあるためと思われます。

さて、この2種のプルマン客車は、現在動態及び静態で保存されている実車が複数あります。動態保存で有名なのは、通常運行でカレー - パリ北駅 - ヴェニスを結ぶBelmond社のVSOEです。現代の運行を実現するために新しく用意した台車に履き替えられ、最高制限速度の向上や乗り心地が改善されています。その他POE所有車などの他、旧NIOEで運用されたAccor社のOEの車両は現在鋭意レストア中です。
一方静態保存では博物館での保存が主ですが、かつてNIOEとしてパリからシベリア鉄道経由で香港、日本までやってきて全国をツアーしたCIWL客車の1両である旧NIOEのTyp. "Côte d'Azur"(1等 WP 4158)が日本の箱根ラリックミュージアムに展示され、車内でお茶を楽しめる体験が出来るのは素晴らしいです。

モデルでリリースされる車両の車体番号ですが、以下の製造グループになるのではと想像しています。

Typ. "Côte d'Azur"(1等):
WPC:4131 - 4147|厨房付き1等プルマン客車 1929年 E.I.C.製 7枚窓
WP:4148 - 4164|厨房なし1等プルマン客車 1929年 E.I.C.製 7枚窓 28座席

Typ. "Étoile du Nord"(2等):
WPC:4091 - 4110|厨房付き2等プルマン客車 1927年 Birmingham製 9枚窓
WP:4111 - 4130|厨房なし2等プルマン客車 1927年 Metropolitan製 9枚窓

*E.I.C.:Entreprises Industrielles Charentaises

[モデルについて]
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▲ 1937-1941に生産されたCIWLプルマン客車モデル 左がCIWL(349)、右が英国LNER(349E)の仕様

直近でメルクリンからリリースされているH0スケールのCIWLモデルはTRIX製の木造客車モデルの荷物車、寝台車、食堂車でした。今回までメルクリンやPRIMEXからはプルマンも含めて食堂車や寝台車など鉄板モデルで数種類の客車モデルがセット(P2701)としてリリースされています。しかし、古来のブリキ製モデルは、プルマンの特徴的な楕円の乗降扉窓や洗面所の飾り窓ではなく、現在の細密なディテールの機関車と連結するには厳しいところがあります。上画像にある..まさに実車が現役時代だった1930年代から40年代にかけての5年間のみのモデルは、H0というより00スケールで、今回の新製品は、まさに待ちに待ったリリースになります。

そういう意味ではメルクリンモデルの歴史の中でもエポックメイキングの1つとなるのではないかと思えます。
今回は、5種だけでしたが、今後Typ. "Étoile du Nord"の1等(WPC、WP)やTyp. "Côte d'Azur"の2等(WPC、WP)、またTyp. "Fléche d'Or"の茶色/象牙色(WPC、WP、F)や、カッサンドルのポスターでも有名なTyp. "NORD EXPRESS"(WPC、WP)など少しの変化で沢山の列車組成が可能になるでしょう。もちろん並行してLx寝台車を始めとしたCIWL夜行列車や、様々な国際D-Zug列車に組成されたCIWL食堂車もリリースを期待したいところです。

でもあまり一度に出されてもユーザーはお財布と相談しなければならないので、ぜひ少しづつCIWL客車シリーズとして充実させて欲しいと思います。

あと数日すればニュルンベルクの国際玩具見本市が開催され、メルクリンスタンドでこのモデルセットもお披露目されるでしょう。そこでモデルの車体番号が分かれば、その出自や経緯が明らかになり、もしかしたら箱根に展示されているTyp. "Côte d'Azur" WP 4158がモデルの実車の可能性もあります。その時を楽しみに待ちたいと思います。

[追記]
モデル全ての車体番号がわかりました。
・Typ. F:
- 1263(1263 - 1276)1928年 Metropolitan製
- 1269(1263 - 1276)1928年 Metropolitan製

・Typ. "Côte d'Azur"(1等):
- WPC:4138(4131 - 4147)|厨房付き1等プルマン客車 1927年 E.I.C.製 7枚窓
- WP:4148(4148 - 4164)|厨房なし1等プルマン客車 1927年 E.I.C.製 7枚窓

・Typ. "Étoile du Nord"(2等):
- WPC:4091(4091 - 4110)|厨房付き2等プルマン客車 1927年 Birmingham製 9枚窓
- WP:4114(4111 - 4130)|厨房なし2等プルマン客車 1927年 Metropolitan製 9枚窓

参考文献:
L'INDÈPENDANT DU RAIL 64 | FÈVRIER 1969
DER RHEINGOLD-EXPRESS / Motor Buch Verlag
DIE LEGENDE LEBT / KLARTEXT VERLAG
125 Jahre CIWL / EK-Verlag

[EDIT] 2023-03-23
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コメント 3

東西急行

御無沙汰致しております。
東西急行(流行り病に沿線の戦乱が加わり運行遅滞拡大中)です。
Maerklinが覚醒したかの様に1/87ワゴンリ隊を急速整備する様子を目にし、永久に充実しない1/160正面を捨てる決断を迫られています。
by 東西急行 (2023-02-11 19:50) 

Akira

こんばんは、東西急行さま。

こちらこそご無沙汰しております。今回の鋼製CIWLプルマン客車(しかも2種)の告知には驚きました。Nゲージはそのままに、メルクリンH0デビューというのもアリかと。

by Akira (2023-02-11 20:51) 

東西急行

Akira様
御返信並びに御助言有難う御座います。
by 東西急行 (2023-02-11 21:24) 

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