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全国寝台列車未来予想図 [日本の鉄道]

この本を書店で見つけて手にした時、しばらく読込んでしまった。その後、やはり全部読みたいと思って改めて購入したのである。Amazonのレビューでは辛口の批評が多かったが、私自身は基本的に日本の鉄道の中で寝台列車の置かれている現状の立場がどうも正しくない気がしてならない。

というのは、ごく一部の豪華な寝台列車(トワイライトエキスプレスなど)が予約を取る事さえ難しい状況である一方、その他の客車寝台列車が風前の灯火になってしまっていることである。この本では、観光列車としての豪華な寝台列車とそれ以外の寝台列車の位置づけ、そして現状の酷い乗客離れを起こしている状況に単に切り捨てを考えるJRの意志に対して、それでもそれらが再び蘇る術を独自の視点で試みているのである。その方法は、現実味が薄いのかも知れないが、やり方一つで寝台列車の価値を再び引き上げるだけの可能性は私もあると考えている1人でもある。故に、このような世の中の趨勢(と言えるかはわからないが..)に敢えてアンチテーゼを試みる事自体に私は共感するものである。

また、本書でも触れられている新幹線の寝台列車は、このブログでも紹介した卒業制作作品である「BEST」にも通じるものがあり、新幹線規格と静粛性ではまさに寝台列車にも適しているものとなろう。しかし、そのためには、今の現状を180度転換するぐらいの気構えで新しい寝台列車を構想すべきであるのは言う迄もない。

そういう意味でも現状を知るためには、読むには価値のある1冊と言えるのではないかと思う。敢えて私が本書に辛口を呈するなら、ここに出ている写真がとてもお金を支払って買う本に出るレベルではない極めて素人的なものであることである。ブログであれば、良いのかも知れないが、写真だけはいただけない。


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東西急行

Akira様、東西急行です。
御紹介下さいました新書は、私も店頭にて確認致しました。
同感なりと頷ける部分も僅かに有りましたが、等級制を廃止
した時点で区分室式(洗面台完備なるも簡易便所機能は
私としては不要)、一室定員一亦は二名、寝台特別料金
徴収、固有乗務員搭乗の完全な寝台車(TEN-WLAB-
T2S相当)を配備し、他の大部屋雑魚寝車輛はロネハネ
問わず全車簡易寝台車に落とした上寝台特別料金徴収
は行わない旨改正すべきであったと強く思う以上、現下の
惨状は数十年前より決まっていたのだと嘆息しております。
無論豪華寝台車にしても、「嗚~呼、今私は寝台車に乗
っているのだ、極楽満足熟睡直行(貧しい中にも威厳漂う
省鉄寝台車の如き)」と思わしむる格調などまるで感じられ
ぬ代物と存じます(ワゴンリ者の時代錯誤贅沢嗜好と冷笑
されておりますが)。


by 東西急行 (2008-05-06 23:26) 

Akira

お書きになっていること、全てごもっともです。JRで寝台列車の再生を願うなら、本当にサービスを含めて抜本的に考え直す必要があると思います。逆にそうしなければ現状から抜け出せないと思ってます。長距離移動で、ドイツに居たときなら夜行列車利用が選択肢の一つに容易になるのに対して、残念ながらそのような考えには至らないのはどうしてなのかを考えねばなりません。
by Akira (2008-05-07 07:40) 

ZumeR

Akiraさん、ご無沙汰しております。

本書を読んだわけではありませんので、内容に関する批評はできませんが、寝台列車の命運は、日本の民営化方式も少なからず影響していると私は考えます。そう、つまり「上下分離」ではなく、「地域分割」としてしまった結果ではないかと考えます。

地域ごとに分けてしまった結果、本州3社と島部3社の格差が大きくなり、3島各社の経営は年を経るごとに厳しくなっていくのに対し、本島の3社はどんどん収益を上げている状況です。JR東海なんて、東海道新幹線で上げた自分達の収益だけで、今度はリニアを作るなんて言っています。そんなJR東海からしてみれば当然、自分達の収益に何の得にもならない寝台列車なんて、走らせる気もないのでしょう。夜間メンテナンスも時間が限られてしまうし、早く廃止して欲しいというのが本音ではないでしょうか。

以前聞いた話ですが、JR東海は将来的に、ジャパンレイルパス利用者(=外国人旅行者)を東海道新幹線から締め出す予定があるそうです。理由は上記と同じ、自分達の収益にあまり関係なく、もっとお金を落としてくれるビジネスマンを優遇させるのが狙いなのだとか。この話が本当なら、とても酷い話です。このように地域ごとに収益に差が出てしまうと、傲慢な会社が出てきたりして、各社で必ず足並みが乱れてしまいます。

寝台列車に話を戻しますと、地方の会社は東京へ寝台列車を走らせたくても、収益は見込めない上にメンテナンス費用のほとんどは自分持ち、他方線路を貸している中央の会社からすれば、寝台列車は邪魔な存在ということになります。これでは寝台列車も廃れるしかないですね。

私の本音を言わせていただければ、地域ごとの分割という選択肢を選択してしまった以上、もう後戻りはできない情況ですので、相互間を乗り入れさせる長距離列車を運行させるとなると、中立の立場に居るJR貨物が寝台列車を運行させることが一番自然な気がするんですが…。

突然やってきて、長々と失礼致しました。
by ZumeR (2008-05-07 18:25) 

klaviermusik-koba

難しい問題ですね。国内をなるべく効率よく旅行しようと考えている人間には、昔は寝台車は有り難い存在でした。航空路がこれだけ発達してしまうと、国内旅行の頻繁な私も、もう寝台列車には久しく乗っておりません。これは、日本中どこでも手頃な値段で泊まれるホテルが増えたこととも関係しているでしょう。

仮にヨーロッパのように上下分離方式であっても、日本では問題は解決しないでしょう。寝台列車で旅行するのはもはや、趣味の部類になってしまったようです。寝台車に少しでも乗客のニーズがあるのなら、いっそのこと、「寝台バス」という発想はどうでしょう。

国鉄時代、これまでも寝台車と、ピギーバックの乗用車を積んだ列車も日本で試みられましたが定着しませんでした。私もぜひ一度乗ってみたいとまじめに考えたこともありましたが、時間、運賃、手間などを考えると、家族旅行には途方もなく高くつく割には、使い勝手が悪い。
by klaviermusik-koba (2008-05-07 19:27) 

Akira

意外にも反響があるので驚いています。ただ、それだけこのテーマについては、現状においての絶望感やそれでも再起をして欲しいと思う微かな期待感が多くの人にあるのかと思います。

>ZumeRさん
お久しぶりです。新居には慣れましたでしょうか?
私も寝台列車には、上下分離による独自の運行サービス会社なりの運営が必要と感じています。JR貨物というのは良いかも知れませんね。名前は変えて子会社でも良いですし...。
JR東海のことは色々な場面(なんと有名なドイツ人からも)で聞き及んでいます。あのドル箱路線を持つ訳ですから致し方ない部分もあるでしょうが、そこまで露骨だと...。

>klaviermusik-kobaさん
私は、ドイツ滞在中例えばイタリアやデンマーク、フランスなどに旅行したい時、クルマよりまず鉄道を選択枝に入れます。夜行を使えば宿泊代も浮きますし、寝台車で言えば日本のそれより快適です。静粛性について言えば、日本の客車だと「カプラーの遊び」で前後振動が大きく中々寝付けないですが、ヨーロッパのスクリュー式連結器+バッファのお陰で前後振動は皆無に近いです。また、最近はV-Max 200Km/h仕様の寝台車もあります。標準軌ならではの優位性があるのはもちろんです。
まぁ、日本の場合は国外へクルマや列車で出るのは不可能ですから、ヨーロッパと一概に比較は出来ませんが、せめてヨーロッパの夜行列車レベルに迄あれば、旅行の選択枝の1つとして浮上してくるのではないでしょうか。(それは価格システムも含めてです)
by Akira (2008-05-07 20:46) 

klaviermusik-koba

スクリュー式連結器とバッファーはたしかに寝台列車では大変なメリットで私も実感しました。日本もかつてはそうだったのですが、いつ頃だったか、アメリカに見習って自連化されました。この最大の理由は、連結手の事故が多かったことと、機関車の出力不足にあったようです。
by klaviermusik-koba (2008-05-07 22:00) 

Akira

私もそう聞いています。ヨーロッパでは今でもほとんどの客車はスクリュー式連結器+バッファです。連結時には連結手がカプラーの鎖を引っ掛けてネジを廻し実に手際良く解結作業をしているのを目にします。連結手の事故の多さが日本の自連化の原因とすれば、ヨーロッパでは何故?という疑問が湧きますが、きっと作業時間の少なさや狭軌のため仕事をするスペースが狭かったことも原因かも知れません。機関車の出力不足は軸重や線路荷重の問題があるでしょうから致し方の無い部分と言えましょうか。
by Akira (2008-05-07 22:46) 

東西急行

Akira様、東西急行です。
欧州各国に比べ脆弱な軌道設備、自動連結器移行時の
緩衝器廃止と言う後世的視点より見た際のケチな失態(
連結機器部内増のばね機構だけで緩衝効果は不十分)、
急造の臨客輸送車を元にする他無かった現有車等瑣末な
問題を挙げ始めれば寝台列車滅亡に絡む件は枚挙の暇
が有りません。
ただ私をして根本問題と言えるものは、矢張り寝台車を長距
離夜行の寝台専用列車に閉じこめたことに有ると思います。
日本の「ブルートレイン」は、あさかぜ運行開始の頃から勤労
者を仮眠させたまま運ぶ夜間通勤列車でした(区分室車が
僅か二輛で、他は欧州型簡易寝台車以下の長椅子座席
車では優等列車の水準では有りませんでした)。
列車の格としては、同時代の”Direct-Orient”が相応です。
航空機、昼行の高速列車が通勤手段となったが故に、夜の
通勤列車は要らない存在に転落しても仕方無かったのかも
知れません(なおブルトレブームにも私は冷淡でした)。

by 東西急行 (2008-05-09 20:00) 

Akira

何とも皮肉な話ですが、こと鉄道全般でみてみると欧州より日本の方が遥かに鉄道輸送が充実しています。遅延の少なさや列車密度がそうです。一方で夜行列車については、JRは欧州に見習うべき点が多いですね。客車列車ならせめて固定編成にして密着連結器にすれば、少なくとも今より乗り心地が改善されそうです。また、今の夜行バスを考えれば、夜行バスと競争力のある運賃設定で座席車を加えれば、より乗客は列車に移る気もします。
ただ、例えばCNLの場合、当初寝台車(WLAB/WLB)と座席車(Bpm)とL&S(WRm)の4種の組成で運行したら今一歩乗客数が伸びず、簡易寝台車(Bcm)を組成に加えて一気に改善されたという経緯があります。環境によってニーズは違うでしょう。

*この本によれば、JR東海の収益の少なさと機関車の乗務員不足が夜行客車列車の廃止の主な原因とありました。
by Akira (2008-05-09 20:42) 

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