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ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 [欧州鉄道]

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先ほど手元に鉄道写真家の南正時氏の最新刊「ヨーロッパ国際列車追跡乗車記」が届いた。この本は、彼が欧州の鉄道に魅せられ、積極的に渡欧して撮影した1970年代から1980年代初めの西欧各国のTEE列車を中心とした列車の取材で集めた資料の集大成と言えようか。

TEEは、ここをご覧の皆様には改めて説明する必要もないと思いますが、日本同様経済成長の西側ヨーロッパでは欧州間国際移動に航空機が鉄道に変わってシェアを伸ばしていた時期で、まだそれぞれの国の鉄道事業者が独自に行なっていたサービスを、鉄道利用者の航空機への利用を取り戻すモデルとして西側欧州国際線の各鉄道事業者がTEEの旗のもとで、1等車+食堂車(+バー)で組成された車両を共通したサービスで運用するというオランダのホランダー博士の提唱で始まった取り組みです。
当初は、気動車中心のTEE列車でしたが、1970年代にはほぼ客車列車になり、この本の被写体の主役は、機関車牽引の客車が中心です。

この本を捲ると、驚いたのはまず当時のTEE路線系統図とその列車名に振られた番号順にこの本で紹介されていること。国別に列車が整理されて紹介され、単に画一的で表面的な列車紹介ではなく、南氏がこれら列車に乗車して体験された様々な出来事を写真とテキストで紹介されていること。彼が撮影した美しいヨーロッパの風景を走る列車写真とともに車内で彼が体験した出来事の紹介は、まるで自分自身が初めて欧州で体験した列車内の感動を蘇らせてくれるものです。そういう意味ではノスタルジックな感傷に浸れるのは、私もTEEではないものの1980年代後半に初めて渡独し、全てが物珍しくあの雰囲気に酔いしれた世代だからかも知れません。

私が初めて欧州に渡ったのが大学時代の学生ツアーの1985年で、留学したのが1988年。この時にはDBでTEE "Rheingold"は既に終焉していて、唯一残ったTEEはSNCBでした。当時そこまで乗りに行くなど考えもしなかったので、結局TEE列車には乗車できませんでした。しかし、私個人にとって、この本はその無念を晴らすかの如く発刊されたように感じています。まだ読み始めてもいないので、内容の感想は書けませんが、私の中にあるTEE列車への憧れがきっと詰まっていることと思います。

TEEのほか、ドイツのLHAE、イタリアの夜行列車、DSBのLyntogからIC3、クルーズトレインのVSOEまで、消滅した列車から今なお残る列車までその乗車記がこれでも..というくらい掲載されています。
もちろん、TEEの全体を把握するには欧州で発刊されているTEE本には敵いませんが、それとは違った視点で当時の華やかりし欧州鉄道を日本語で読んで知るには、十分な内容だと感じています。

資料としても、読み物としても、写真グラフとしても欧州列車ファンには楽しめることだけは、すぐに理解できました。



ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 (旅鉄BOOKS069)

ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 (旅鉄BOOKS069)

  • 作者: 南 正時
  • 出版社/メーカー: 天夢人
  • 発売日: 2023/07/19
  • メディア: 単行本


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