42470-01,-02 CIWL Typ.F 1263, 1269 [Maerklin-Reisezugwagen]
CIWL鋼製客車の新製品セット(42740)ですが、まずお借りした画像のうち、荷物車(CIWL Typ. F)から紹介したいと思います。
*Typ. Fは、フランス語のLes Fourgons(荷物車)の頭文字から取っているものと推測できます。
CIWLのPULLMAN Expressは基本的に6両編成で、中央に4両のプルマン客車を挟んで両端に荷物車が連結されていて、この列車も同様に機関車の次位に連結される荷物車と最後尾に尾灯ランタンを掲げて連結されている荷物車の2両です。モデルでは以下の車体番号になっています。
・CIWL Typ. F:
- 1263(1263 - 1276)1928/29年 Metropolitan製
- 1269(1263 - 1276)1928/29年 Metropolitan製
上記記述のある資料には以下の備考が記されています。
1928/29 : 6 Portes, vigie au 1/3, les numéros 1271 et 1272 - 1274 à 1276 sonst affectés à l'Espagne.
***日本語訳***
1928/29年製造。全6扉、車体の1/3がキューポラによる外部監視窓。1271、1272、1274-1276はスペイン向け。
つまり、それ以外の(模型化された1263/1269も含めた)1263 - 1270、1273の計9両の同型荷物車は、広軌のスペイン仕様ではなく標準軌の台車を履いていたものと想像できます。
定員も極めて限られている3等級制時代(ALのみ4等級制)の1、2等のみの編成にも関わらず、2両もの荷物車が連結されているというのは、当時のブルジョア階級以上の富裕層が旅行に際してどれほどの荷物を持参して旅行していたかを良く物語っているように思います。しかし、当時はそうした多くの荷物と共に旅行した長期間であろう休暇(保養)旅行のご婦人だけではなく、多忙なビジネスマンのトップなど最もダイヤに正確で時間的にも到達時間が短いこうした長距離優等列車を使っていたはずで、全ての乗客が荷物車が一杯になるほどの荷物を持っていたわけではないと考えられます。今とは比較にならないほどの移動時間の長さは、運行会社のCIWLとして如何にお客様を退屈させないで目的地駅まで届け、再び利用してもらえるような満足度の高い旅を提供すべく様々なサービスを提供していたに他なりません。また極めて限られたセグメントの人のみがこの列車で移動することができなかった時代でもあったため、旅行中の車内はそうした方々の社交場の一面もあったでしょう。
この2両の荷物車モデルは、同じメーカーで同じ製造グループとして、同じ時期に製造された車両をモデル化しています。そのため、違いは車体番号の他、最後尾になる1両は赤色尾灯3灯が点灯します。戦前のドイツでは前照灯・尾灯とも2灯が規則でしたが、どうやらオランダ、ベルギー、ルクセンブルク・フランス(AL)では3灯でも問題なかったようです。(それとも経由国鉄道のどこかが3灯尾灯を義務化していたかも知れません)
特に戦前のフランスは、鉄道の国有化がされておらず、パリを中心に方角によって、またアルザス・ロレーヌのような地域で様々な民間事業者が鉄道事業を行っていて、このEDELWEISS PULLMAN Expressが経由するルクセンブルクからアルザス・ロレーヌ地方は1938年のフランス国営化までALの領域になっていました。
3灯が尾灯点灯する荷物車CIWL Typ.Fです。
Special Thanks(画像提供):T.Iさま
[参考資料]
L' INDÉPENDANT DU RAIL 64, 2/1969
アルザス=ロレーヌ鉄道/Wikipedia
42470 Pullmanwagen-Set EDELWEISS [Maerklin-Reisezugwagen]
そろそろ昨年のメルクリンH0新製品のハイライト、CIWL鋼製客車による「EDELWEISS PULLMAN EXPRESS」が市場に出回り始めたようで、私の知人の元にもドイツから届いたとの報告がありました。
モデル画像を拝借しましたので、これから数回に分けてご紹介したいと思います。
外箱は、客車セットにあるこれまでの白色に車両の絵や写真が印刷されたデザインではなく、CIWLの紺碧色をイメージしたパッケージで、なんだか夜行列車のイメージにも見えますが、このEDELWEISS PULLMAN EXPRESSは、昼行座席列車です。
以前の記事にも記しましたが、ドイツで運用されていたMITROPAの車両とサービスによるプルマン列車「FFD Rheinglold Express」と同じオランダ(Amsterdam/Hoeck von Holland)- スイス(Basel SBB)の区間を同時期に運用されていたライバル同士です。EDELWEISSがベルギー、ルクセンブルク、フランス(AL)経由で、Rheingoldはドイツ経由が違いの1つで、時間的には1939年時点で大差なく、MITROPAのRheingold-Expressが約20分ほど早いです。Londonからの利用では、英国内をLNERが同じ列車名で運用し、この列車の登場でロンドンからスイスのチューリヒまでプルマン列車のみで行けるという当時としては画期的な出来事だったと理解できます。また接続も合わせてダイヤが組まれていました。(興味深いのはメルクリン00ゲージで戦前にリリースされていたCIWLプルマン客車モデルがありますが、同じ車体の塗り替えでLNERのプルマンをリリースしていたこと。これは、当時現役だったEDELWEISS-PULLMAN-EXPRESSがモチーフなのかもですね)
BaselからLuzernまでの延長運転では、この2列車が同じ列車として併結されている画像もあります。この異なる2列車が2両づつの1等/2等プルマンでそれぞれに厨房つきとなし、そして2両の荷物車を組成した6両編成であることも興味深く、外観カラーリングもCIWL(紺色/クリーム)とMITROPA(紫/クリーム)で、同じ高級感を近いイメージで表現していることもライバルであることをお互いに意識していることが理解できます。
スイスではAe4/7電気機関車に牽引された2つの列車が並ぶ写真もありますので、メルクリンでもスイス域内の編成が組めるのは楽しいバリエーションになりそうです。
さて、このモデルですが、メルクリンとしても気合が入っているように見えます。と、いうのは既にLS-ModelsやRivarossiなど、H0ではCIWL客車のリリースがあり、また人気モデルのため、ファンとしては、価格に見合う出来の良さを期待することをメーカー各社は十分に理解しているはずです。そして機関車モデルと異なり、国際運用の客車ですから、メインの運用国であるベルギー、ルクセンブルク、フランス(AL)、オランダ、スイスだけでなく、ドイツのファンも気になるはず。そうなるとメーカーとしても気合も入るというものです。そしてCIWLの実車は、いわゆる資産家、実業家、公爵などブルジョア階級御用達の車両保有する民間鉄道会社ですから、これまでの名声もあり、そこからくるプライドの高さがCIWLの価値の1つでもある訳ですから、その車両を模型化するメーカーとしても下手なことはできないでしょう。そういう意味では、客車モデルとして特別に力を入れた工程になることが想像できます。
画像のセットは、今までの客車セットとは異なり、全ての車両は1両づつセパレートにクリアケースに収まっています。
画像はその1つである1等厨房なし(WP)のコート・ダジュールプルマン客車です。
これから数回に分けて、この魅力あふれるCIWLプルマン客車モデルについて触れてみたいと思います。
Special Thanks(画像提供): T.Iさま
42470 Pullmanwagen-Set „Edelweiß“ [Maerklin-Reisezugwagen]
▲ 当時のポスター(作者不詳)
今年の新製品のハイライトの1つ、CIWL鋼製1/2等プルマン客車+荷物車6両セット(42470)について、ここでは個別の車両モデルについてではなく、セット全体として記したいと思います。
[実車について]
この列車は、1928年の夏ダイヤ改正でAmsterdam - Bruxells - Strasbourg - Basel - Luzern (- Zürich)が運用開始されました。オランダとスイスを結ぶブルジョア階級以上の利用を見込んだ列車で、オランダからベルギー、フランス、スイスの独仏国境でもあるBaselまでドイツを通らずに走ります。一方CIWLのライバルでもあるドイツのMITROPAは、"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"と同じ出発地/到着地のAmsterdam - (Hoek van Holland-) Duisburg - Düsseldorf - Köln - Mainz - Mannheim - Karlsruhe - Freiburg - Baselを結ぶFD 163/164 "Rheingold-EXPRESS"がCIWL同様1/2等プルマン客車と荷物車で1928年夏ダイヤから運用開始されます。どちらもコースは違えど同じアムステルダムからバーゼルを目指すため、今風に言うなら「ガチ対決」の様相を呈しているように思えてきます。
利用者の立場からすれば、ベルギーとドイツの技術とサービス、更には芸術まで競う様相であったのではと思います。CIWLはベルギーの完全な民間車両運行会社であり、欧州西側に強く、アフリカ、中東、ロシア、アジア極東までネットワークのある国際的な会社である一方、MITROPAは、DRGの傘下でドイツを中心とした中欧地域のネットワークが主で規模はCIWLに比べ遥かに小さいです。
その2つの鉄道サービスに特化した会社が同じ出発/到着地の豪華列車をほぼ同時に走らせたわけです。違いといえば途中の経路(国)とCIWLの"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"は、Baselから先にある観光地ルツェルン、またスイス経済の中心地チューリヒまで走ること。(また"Rheingold-EXPRESS"も季節によってルツェルンまで延長運転されました)一方"Rheingold-EXPRESS"は、英国ロンドンからフェリー経由でHoek van Holland発の編成に接続され、ドイツ経由でBaselに向かいます。
この違いは、おそらくアムステルダム - バーゼルを利用する場合以外は乗降駅次第ということになるでしょう。そういう意味ではライバルでありながらも共存できる素地がある2列車だとも言えると思います。
何れにしてもこの2つのプルマン客車で組成された列車の乗客は、階級格差の大きかった時代の上位に位置する、つまり現代で言えば航空機のファーストクラスの利用者レベルの限られた人々のみでした。そのような乗客に満足のゆくサービスを提供できるのは、古くから列車サービスやホテル経営のノウハウを持つCIWL社と列車サービスと共にルフトハンザの機内サービスも行なっていたMITROPAのみとも言えるかも知れません。
さて、今回発表されたCIWLプルマン客車モデルは、4両の車両全てが異なる車両で、1等厨房付きWPCと厨房なしのWPがTyp. "Côte d'Azur"、そして2等厨房付きWPCと厨房なしのWPがTyp."Étoile du Nord"です。編成表はまた後日作成したいと考えていますが、手元にある1931年の編成は…
荷物+1等WPC+2等WP+2等WPC+1等WP+荷物
窓の形状が異なるTyp. "Côte d'Azur"(1等)とTyp. "Étoile du Nord"(2等)を厨房を挟んで1ユニットと仕立てている"EDELWEISS PULLMAN EXPRESS"は、途中駅で解放作業を行なって行き先が2カ所にあるためと思われます。
さて、この2種のプルマン客車は、現在動態及び静態で保存されている実車が複数あります。動態保存で有名なのは、通常運行でカレー - パリ北駅 - ヴェニスを結ぶBelmond社のVSOEです。現代の運行を実現するために新しく用意した台車に履き替えられ、最高制限速度の向上や乗り心地が改善されています。その他POE所有車などの他、旧NIOEで運用されたAccor社のOEの車両は現在鋭意レストア中です。
一方静態保存では博物館での保存が主ですが、かつてNIOEとしてパリからシベリア鉄道経由で香港、日本までやってきて全国をツアーしたCIWL客車の1両である旧NIOEのTyp. "Côte d'Azur"(1等 WP 4158)が日本の箱根ラリックミュージアムに展示され、車内でお茶を楽しめる体験が出来るのは素晴らしいです。
モデルでリリースされる車両の車体番号ですが、以下の製造グループになるのではと想像しています。
Typ. "Côte d'Azur"(1等):
WPC:4131 - 4147|厨房付き1等プルマン客車 1929年 E.I.C.製 7枚窓
WP:4148 - 4164|厨房なし1等プルマン客車 1929年 E.I.C.製 7枚窓 28座席
Typ. "Étoile du Nord"(2等):
WPC:4091 - 4110|厨房付き2等プルマン客車 1927年 Birmingham製 9枚窓
WP:4111 - 4130|厨房なし2等プルマン客車 1927年 Metropolitan製 9枚窓
*E.I.C.:Entreprises Industrielles Charentaises
[モデルについて]
▲ 1937-1941に生産されたCIWLプルマン客車モデル 左がCIWL(349)、右が英国LNER(349E)の仕様
直近でメルクリンからリリースされているH0スケールのCIWLモデルはTRIX製の木造客車モデルの荷物車、寝台車、食堂車でした。今回までメルクリンやPRIMEXからはプルマンも含めて食堂車や寝台車など鉄板モデルで数種類の客車モデルがセット(P2701)としてリリースされています。しかし、古来のブリキ製モデルは、プルマンの特徴的な楕円の乗降扉窓や洗面所の飾り窓ではなく、現在の細密なディテールの機関車と連結するには厳しいところがあります。上画像にある..まさに実車が現役時代だった1930年代から40年代にかけての5年間のみのモデルは、H0というより00スケールで、今回の新製品は、まさに待ちに待ったリリースになります。
そういう意味ではメルクリンモデルの歴史の中でもエポックメイキングの1つとなるのではないかと思えます。
今回は、5種だけでしたが、今後Typ. "Étoile du Nord"の1等(WPC、WP)やTyp. "Côte d'Azur"の2等(WPC、WP)、またTyp. "Fléche d'Or"の茶色/象牙色(WPC、WP、F)や、カッサンドルのポスターでも有名なTyp. "NORD EXPRESS"(WPC、WP)など少しの変化で沢山の列車組成が可能になるでしょう。もちろん並行してLx寝台車を始めとしたCIWL夜行列車や、様々な国際D-Zug列車に組成されたCIWL食堂車もリリースを期待したいところです。
でもあまり一度に出されてもユーザーはお財布と相談しなければならないので、ぜひ少しづつCIWL客車シリーズとして充実させて欲しいと思います。
あと数日すればニュルンベルクの国際玩具見本市が開催され、メルクリンスタンドでこのモデルセットもお披露目されるでしょう。そこでモデルの車体番号が分かれば、その出自や経緯が明らかになり、もしかしたら箱根に展示されているTyp. "Côte d'Azur" WP 4158がモデルの実車の可能性もあります。その時を楽しみに待ちたいと思います。
[追記]
モデル全ての車体番号がわかりました。
・Typ. F:
- 1263(1263 - 1276)1928年 Metropolitan製
- 1269(1263 - 1276)1928年 Metropolitan製
・Typ. "Côte d'Azur"(1等):
- WPC:4138(4131 - 4147)|厨房付き1等プルマン客車 1927年 E.I.C.製 7枚窓
- WP:4148(4148 - 4164)|厨房なし1等プルマン客車 1927年 E.I.C.製 7枚窓
・Typ. "Étoile du Nord"(2等):
- WPC:4091(4091 - 4110)|厨房付き2等プルマン客車 1927年 Birmingham製 9枚窓
- WP:4114(4111 - 4130)|厨房なし2等プルマン客車 1927年 Metropolitan製 9枚窓
参考文献:
L'INDÈPENDANT DU RAIL 64 | FÈVRIER 1969
DER RHEINGOLD-EXPRESS / Motor Buch Verlag
DIE LEGENDE LEBT / KLARTEXT VERLAG
125 Jahre CIWL / EK-Verlag
[EDIT] 2023-03-23
42529 DB WR4ü-28 / Ep.IIIa(解説) [Maerklin-Reisezugwagen]
インサイダーモデル 2023の28系列客車セットモデル(42529)の最後の1両がDSG食堂車です。
この車両については手元の資料には該当する形式の記載がないため、多くのデータをDSG DEUTSCHE SCHLAFWAGEN- UND SPEISEWAGEN-GESELLSCHAFT サイトからデータを引用しています。
1928/29年、MITROPA AG社により、1/2等FD列車向けに42座席の食堂車88両(1001-1040, 1041-1075, 1076-1087)を以下4社に発注しました。
・Linke Hofmann Werke (LHB) / Breslau
・van der Zypen & Charlier GmbH (Westwaggon) / Köln-Deutz
・Waggon- und Maschinenbau AG (WUMAG) / Görlitz
・Wegmann & Co / Kassel
全長は23500mm、台車は台車軸間寸法16100mm、車輪軸間寸法3600mmになります。座席は、1+2配列で定員44座席です。
落成は1928年から35年にかけて以下行われました。
・1001-1025 Görlitz II schwer 1928 Westwaggon
・1026-1040 Görlitz II schwer 1928 WUMAG
・1041-1060 Görlitz II schwer 1929 Wegmann & Co
・1061-1075 Görlitz II schwer 1930 LHB
・1076-1081 Görlitz III schwer 1934 WUMAG
・1082-1087 Görlitz III schwer 1935 WUMAG
MITROPA 1001-1075は、木製の床と屋根材を使用、1076からは53,9tから51,2tに軽量化され、車体のスポット溶接跡の異なるフラットな外観で違いがわかるようです。また、台車も "Görlitz II schwer"ですが、1076からは "Görlitz III schwer"に変更されています。最高制限速度は120Km/hです。
28系列食堂車車両は、長期間国内および国際長距離列車の食堂車サービスの礎を形成していました。 1967年から徐々に新車に入れ替えられ、同年から1973年にかけて引退しています。 いくつかの車両が保存されていますが、残念ながら後期製造の車両(DSG 1076-1087)は保存されていません。
*1088 -は、メルクリンH0でフライッシュマンのOEMによる「F-Zug Mercure」(43290)としてリリースされたWR4ü(e)-35になります。
以下は、保存車両です。
・DSG 1005 (Dampflokgemeinschaft 41 096, Salzgitter-Klein-Mahler, ex-Düver, St. Andreasberg),
・DSG 1006 (MEB Rahden, Uchte, stationär),
・DSG 1029 (BEM Nördlingen),
・DSG 1048 (Deutsches Museum München, Theresienhöhe, stationär)
・DSG 1050 (ESV Würzburg, Vereinsheim),
・DSG 1054 (以前は Düver, St. Andreasberg, 現在は消息不明)
米軍敷地内のギーセンで再発見された別の車 (2004 年 8 月 10 日の「Eisenbahn-Kurier」からのレポート)
・DSG 1070, Berlinの民間博物館
・MITROPA 1011, 1061, 1062 は1945年以降 ÖBB車籍
・MITROPA 1017 ベルリン鉄道愛好会
最もポピュラーなのは、ドイツ博物館で静態保存されているDSG 1048でしょうか。
さて、この食堂車の紹介で28系列客車セット(42529)の実車解説は終わりますが、MITROPAによるもう1種の車両の存在を確認しました。それは、寝台車WLAB4ü-28です。折角の新金型ラインナップの28系列なのですから、寝台車もリリースを期待したいですね。
参考サイト:DSG-Speisewagen WR4ü(e)28 / DSG DEUTSCHE SCHLAFWAGEN- UND SPEISEWAGEN-GESELLSCHAFT
参考文献:75 Jahre MITROPA / Eisenbahn JOURNAL special 2/92 | Herman Merkur Verlag GmbH
[EDIT] 2023-12-29
この車両については手元の資料には該当する形式の記載がないため、多くのデータをDSG DEUTSCHE SCHLAFWAGEN- UND SPEISEWAGEN-GESELLSCHAFT サイトからデータを引用しています。
1928/29年、MITROPA AG社により、1/2等FD列車向けに42座席の食堂車88両(1001-1040, 1041-1075, 1076-1087)を以下4社に発注しました。
・Linke Hofmann Werke (LHB) / Breslau
・van der Zypen & Charlier GmbH (Westwaggon) / Köln-Deutz
・Waggon- und Maschinenbau AG (WUMAG) / Görlitz
・Wegmann & Co / Kassel
全長は23500mm、台車は台車軸間寸法16100mm、車輪軸間寸法3600mmになります。座席は、1+2配列で定員44座席です。
落成は1928年から35年にかけて以下行われました。
・1001-1025 Görlitz II schwer 1928 Westwaggon
・1026-1040 Görlitz II schwer 1928 WUMAG
・1041-1060 Görlitz II schwer 1929 Wegmann & Co
・1061-1075 Görlitz II schwer 1930 LHB
・1076-1081 Görlitz III schwer 1934 WUMAG
・1082-1087 Görlitz III schwer 1935 WUMAG
MITROPA 1001-1075は、木製の床と屋根材を使用、1076からは53,9tから51,2tに軽量化され、車体のスポット溶接跡の異なるフラットな外観で違いがわかるようです。また、台車も "Görlitz II schwer"ですが、1076からは "Görlitz III schwer"に変更されています。最高制限速度は120Km/hです。
28系列食堂車車両は、長期間国内および国際長距離列車の食堂車サービスの礎を形成していました。 1967年から徐々に新車に入れ替えられ、同年から1973年にかけて引退しています。 いくつかの車両が保存されていますが、残念ながら後期製造の車両(DSG 1076-1087)は保存されていません。
*1088 -は、メルクリンH0でフライッシュマンのOEMによる「F-Zug Mercure」(43290)としてリリースされたWR4ü(e)-35になります。
以下は、保存車両です。
・DSG 1005 (Dampflokgemeinschaft 41 096, Salzgitter-Klein-Mahler, ex-Düver, St. Andreasberg),
・DSG 1006 (MEB Rahden, Uchte, stationär),
・DSG 1029 (BEM Nördlingen),
・DSG 1048 (Deutsches Museum München, Theresienhöhe, stationär)
・DSG 1050 (ESV Würzburg, Vereinsheim),
・DSG 1054 (以前は Düver, St. Andreasberg, 現在は消息不明)
米軍敷地内のギーセンで再発見された別の車 (2004 年 8 月 10 日の「Eisenbahn-Kurier」からのレポート)
・DSG 1070, Berlinの民間博物館
・MITROPA 1011, 1061, 1062 は1945年以降 ÖBB車籍
・MITROPA 1017 ベルリン鉄道愛好会
最もポピュラーなのは、ドイツ博物館で静態保存されているDSG 1048でしょうか。
さて、この食堂車の紹介で28系列客車セット(42529)の実車解説は終わりますが、MITROPAによるもう1種の車両の存在を確認しました。それは、寝台車WLAB4ü-28です。折角の新金型ラインナップの28系列なのですから、寝台車もリリースを期待したいですね。
参考サイト:DSG-Speisewagen WR4ü(e)28 / DSG DEUTSCHE SCHLAFWAGEN- UND SPEISEWAGEN-GESELLSCHAFT
参考文献:75 Jahre MITROPA / Eisenbahn JOURNAL special 2/92 | Herman Merkur Verlag GmbH
[EDIT] 2023-12-29
42529 DB Pw4ü-29 / Ep.IIIa(解説) [Maerklin-Reisezugwagen]
6両セット5種のGruppe-29系列客車セットの3種の座席車両は紹介が終わり、今回は荷物車(Pw4ü-29 )について触れてみたいと思います。
この荷物車は1929年製造のため形式は-29が付与されています。120両ほどが以下3社で製造されています。
・Waggonfabrik AG vorm. Herbrandt & Cie., Köln
・Gothaer Waggonfabrik AG, Gotha
・Hannoversche Waggonfabrik AG, Hannover
この車両の前の形式に前年から1929年に掛けて50両製造された Pw4ü-28/-28aや、1930/31年に250両製造され、メルクリンの4278モデルにもなったPw4ü-30があり、外観は屋根形状も同一でPw4ü-28は窓配置が違う程度ですが、非常に良く似た車両で区別がつきにくいかも知れません。
台車は、Görlitz II Schwerで他の座席車両と同様です。
この荷物車120両は、車両番号(105 161-280)が連番になっていますが、以下の車両番号については、特別な仕様となっているようです。
105 278-279:デンマーク航路のフェリー対応(航送許可仕様)
105 195, 198-200, 270-277:1932年から厨房設備付き(Pw4ük-29/32)に改造
105 270-277:特別塗装(Karwendel-Bauart)仕様
105 238:1935年に廃車、1938年より民鉄のLBEで1 002番として復活。
▲ 1932年に改造を受けてPw4ük-29となった厨房部分の図面
特に注目すべきはKarwendel仕様になった車両で、バイエルンの山岳地帯(Mittenwaldbahn)を走る観光用D-Zug(Karwendel-Expreß)向けに開発された軽量タイプの開放室仕様の2等、3等客車共にブルーのツートンカラーで登場し、この荷物車105 270-277の8両は1932年に同じツートンカラーの仕様(Pw4ük-29/32)に改造されています。上記データからはKarwendel塗装の8両の他、105 195, 198-200の4両の計12両には、これに合わせて厨房が設けられているので、ビールやコーヒーなどの飲み物や軽食(ソーセージ?)などの食事調理・提供機能が備わっていると想像できます。(客車側には大型テーブルなどの設備がないため、車内販売(ミニバー)形式で供食が行われていたか。)
この厨房は、非手ブレーキ側車端部の犬用ケージのあった空間(3,5m x 1,2mほど)に食品庫、冷蔵庫、製氷庫、石炭レンジ、水タンク、石炭庫、流し台が設備されています。石炭レンジを使うため、排気用の煙突が屋根上に設けられているために外観から厨房付きの車両は判断可能です。
1945年以降は、第2次大戦によって少なからずの車両が失われてしまいました。戦災に遭った車両の他、終戦時に他国にいたことで失われた車両もあります。それらは、SNCF、SNCB、ÖBB、PKP、そしてDRでした。
1966年からは、不要になった屋上の監視窓を外し、屋根がフラットに改造された車両が出てきました。
Karwendel仕様の客車は、メルクリンからリリースされていませんが、同じ金型の一部を使って製造可能でしょうから、MHIのKarwendel列車セットなど後にリリースされる期待があります。
[参考文献]
・Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
・Pe4ü-28, -28a, -29 Einheits-D-Zug-Gepäckwagen (Ganzstahlbauart) WAGEN Das Archiv der deutschen Reisezug- und Güterwagen / GeraNova Verlag München
[EDIT] 2022-12-15
この荷物車は1929年製造のため形式は-29が付与されています。120両ほどが以下3社で製造されています。
・Waggonfabrik AG vorm. Herbrandt & Cie., Köln
・Gothaer Waggonfabrik AG, Gotha
・Hannoversche Waggonfabrik AG, Hannover
この車両の前の形式に前年から1929年に掛けて50両製造された Pw4ü-28/-28aや、1930/31年に250両製造され、メルクリンの4278モデルにもなったPw4ü-30があり、外観は屋根形状も同一でPw4ü-28は窓配置が違う程度ですが、非常に良く似た車両で区別がつきにくいかも知れません。
台車は、Görlitz II Schwerで他の座席車両と同様です。
この荷物車120両は、車両番号(105 161-280)が連番になっていますが、以下の車両番号については、特別な仕様となっているようです。
105 278-279:デンマーク航路のフェリー対応(航送許可仕様)
105 195, 198-200, 270-277:1932年から厨房設備付き(Pw4ük-29/32)に改造
105 270-277:特別塗装(Karwendel-Bauart)仕様
105 238:1935年に廃車、1938年より民鉄のLBEで1 002番として復活。
▲ 1932年に改造を受けてPw4ük-29となった厨房部分の図面
特に注目すべきはKarwendel仕様になった車両で、バイエルンの山岳地帯(Mittenwaldbahn)を走る観光用D-Zug(Karwendel-Expreß)向けに開発された軽量タイプの開放室仕様の2等、3等客車共にブルーのツートンカラーで登場し、この荷物車105 270-277の8両は1932年に同じツートンカラーの仕様(Pw4ük-29/32)に改造されています。上記データからはKarwendel塗装の8両の他、105 195, 198-200の4両の計12両には、これに合わせて厨房が設けられているので、ビールやコーヒーなどの飲み物や軽食(ソーセージ?)などの食事調理・提供機能が備わっていると想像できます。(客車側には大型テーブルなどの設備がないため、車内販売(ミニバー)形式で供食が行われていたか。)
この厨房は、非手ブレーキ側車端部の犬用ケージのあった空間(3,5m x 1,2mほど)に食品庫、冷蔵庫、製氷庫、石炭レンジ、水タンク、石炭庫、流し台が設備されています。石炭レンジを使うため、排気用の煙突が屋根上に設けられているために外観から厨房付きの車両は判断可能です。
1945年以降は、第2次大戦によって少なからずの車両が失われてしまいました。戦災に遭った車両の他、終戦時に他国にいたことで失われた車両もあります。それらは、SNCF、SNCB、ÖBB、PKP、そしてDRでした。
1966年からは、不要になった屋上の監視窓を外し、屋根がフラットに改造された車両が出てきました。
Karwendel仕様の客車は、メルクリンからリリースされていませんが、同じ金型の一部を使って製造可能でしょうから、MHIのKarwendel列車セットなど後にリリースされる期待があります。
[参考文献]
・Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
・Pe4ü-28, -28a, -29 Einheits-D-Zug-Gepäckwagen (Ganzstahlbauart) WAGEN Das Archiv der deutschen Reisezug- und Güterwagen / GeraNova Verlag München
[EDIT] 2022-12-15
42529 DB ABC4ü-29 / Ep.IIIa (解説) [Maerklin-Reisezugwagen]
42529客車セットの区分室車最後の1両は1/2/3等合造車ABC4ü-29です。形式末尾の番号がこの車両だけ「-28」ではなく「-29」なのは、製造初年が1929年だったことによります。
Gruppe-29系列の区分室車という括りでは他の2両と同様です。
ABC4ü-29は、中央に1等個室が1室、そこを挟んで片側が2等区分室4室、反対側が3等区分室5室というレイアウトです。この客車も外観からは等級表示の他に1200mm幅の窓を持つ1等区分室、1000mm窓の2等区分室、そして800mm窓の3等区分室のため、すぐに理解できます。
各等級の区分室もAB4ü-28やC4ü-28と同じ仕様のため多くは記しません。全長(21,72m)、全幅(2,964m)も他の車両と同じです。左右車端部に出入口扉とデッキ、WCが隣接しています。
Ep.IIIa時代では、1等区分室を2等扱いで運用している列車もあったようで、ドア横にある等級表示の「1」を隠すことの出来る車両もありましたが、この車両についてはまだ未確認です。
1956年にEp.IIIaからIIIbに区分が変更されますが、それは3等級制の廃止と2等級制への移行で、IIIa時代の1/2等車は1等、3等車は2等に格上げされました。3等車は廃止です。窓の寸法は変えられないので、そのままの状態であったように思います。また、この車両もEp.IIIb時代では1/2等のAB4ü-29/56に形式変更されました。
現在保存されている車両画像は以下リンクにあります。
14 102 Hmb ABC4ü-29 / Eisenbahn-Tradition e.V.
この客車は、全体で128両製造されました。細かくは以下4つの製造シリーズに分けられます。
・14 001-015, 021-047、051-090: 61両
・14 091-120: 29両
・14 121-132、145-148 (Görlitz III Schwer): 14両
*14 131-133: Saarbahn-Wagen
製造メーカーは、Wis、MAN、LHB、Crédeの4社です。
1952年、このうちの3両(14 006, 14 083, 14 147)が半室食堂車に改造を受けています。形式も変更され、3等級制時代はABR4üe-29/52となり、2等級制変更時の1956年からはAR4üe-29/52、1966年のUIC化でARüe 316に形式変更されています。
1961年撮影の画像を見ると、車体色はFlaschengrün1色で、食堂側出入口ドア横の車体に(恐らく紫赤色の)「DSG SPEISERAUM」の看板が掲げられています。
この半室食堂車は、3等区分室部分が食堂・厨房設備に変更されていて、室内設備と塗装変更のみで新しいバリエーションが可能なので、将来的なリリースに期待したいですね。
[参考サイト]
Eisenbahn-Tradition e.V.
[参考文献]
Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
[EDIT] 2022-12-15
Gruppe-29系列の区分室車という括りでは他の2両と同様です。
ABC4ü-29は、中央に1等個室が1室、そこを挟んで片側が2等区分室4室、反対側が3等区分室5室というレイアウトです。この客車も外観からは等級表示の他に1200mm幅の窓を持つ1等区分室、1000mm窓の2等区分室、そして800mm窓の3等区分室のため、すぐに理解できます。
各等級の区分室もAB4ü-28やC4ü-28と同じ仕様のため多くは記しません。全長(21,72m)、全幅(2,964m)も他の車両と同じです。左右車端部に出入口扉とデッキ、WCが隣接しています。
Ep.IIIa時代では、1等区分室を2等扱いで運用している列車もあったようで、ドア横にある等級表示の「1」を隠すことの出来る車両もありましたが、この車両についてはまだ未確認です。
1956年にEp.IIIaからIIIbに区分が変更されますが、それは3等級制の廃止と2等級制への移行で、IIIa時代の1/2等車は1等、3等車は2等に格上げされました。3等車は廃止です。窓の寸法は変えられないので、そのままの状態であったように思います。また、この車両もEp.IIIb時代では1/2等のAB4ü-29/56に形式変更されました。
現在保存されている車両画像は以下リンクにあります。
14 102 Hmb ABC4ü-29 / Eisenbahn-Tradition e.V.
この客車は、全体で128両製造されました。細かくは以下4つの製造シリーズに分けられます。
・14 001-015, 021-047、051-090: 61両
・14 091-120: 29両
・14 121-132、145-148 (Görlitz III Schwer): 14両
*14 131-133: Saarbahn-Wagen
製造メーカーは、Wis、MAN、LHB、Crédeの4社です。
1952年、このうちの3両(14 006, 14 083, 14 147)が半室食堂車に改造を受けています。形式も変更され、3等級制時代はABR4üe-29/52となり、2等級制変更時の1956年からはAR4üe-29/52、1966年のUIC化でARüe 316に形式変更されています。
1961年撮影の画像を見ると、車体色はFlaschengrün1色で、食堂側出入口ドア横の車体に(恐らく紫赤色の)「DSG SPEISERAUM」の看板が掲げられています。
この半室食堂車は、3等区分室部分が食堂・厨房設備に変更されていて、室内設備と塗装変更のみで新しいバリエーションが可能なので、将来的なリリースに期待したいですね。
[参考サイト]
Eisenbahn-Tradition e.V.
[参考文献]
Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
[EDIT] 2022-12-15
42529 DB AB4ü-28 / Ep.IIIa (解説) [Maerklin-Reisezugwagen]
前回に引き続き、来年のインサイダーモデル客車セットからGruppe-29の1/2等合造車 AB4ü-28を取り上げて解説を試みたいと思います。
今回の1928年製造の3つの車種(ABC4ü、AB4ü、C4ü)は、全て全長21,72m、車幅2,96m(厳密にはABC4üは2,964m)とほぼ共通の車体構造になっています。
台車から遠い中央部分の2室が1等区分室、そこから左右に3室が2等区分室にレイアウトされていて左右デッキ部分に出入口とWCが設備されています。
1等区分室は、窓幅が1200mm、2等区分室は1000mmのため、外観でもすぐに理解できます。1等区分室は、向かい合わせシートが2名用と1名用に肘掛で分けられていて、向かい合わせで肘掛の位置がオフセットされています。2等区分室は3人用シートが向かい合わせです。区分室の長さも1等室は2100mm、2等室が1970mmと室内空間の広さにも差別化が図られています。2等区分室が1室6名定員に対して、1等区分室は当初6名でしたが、後に4名と変更されたようです。(当時の乗車運賃は2等が3等の2倍で1等は3倍だったことからも、1等区分室が定員6名になるのは苦情の元になったことが推察できます。)
よって全体の定員は、1等12名(後に8名)2等36名で合計48名(後に44名)は、定員80名の3等区分室車に対して妥当な寸法と言えます。シートはモケットで、3等車の木製ベンチより遥かに快適なはずで、長時間の旅には3等車のシートは辛いものであったと想像できます。
台車は、Görlitz II SchwerでC4üと同じ仕様となります。車内の静粛性や揺れなどは、どの等級でも違いはなかったのではないかと想像できます。
車体番号は、以下の通り2つのグループに分けられます。
11 333 - 11 362: 29両
11 363 - 11 568: 205両
合計:234両
この234両のうち「11 508」は試験的にScharfenbergkupplung(密着連結器)を取り付けていたようです。
現在の1等車(+プレミアムクラス)車両と考えれば、1形式所帯としては、多い方ではないかと思います。
製造メーカーは、LHB、Crede、Wegmannの3社です。
現在ALSTOMに吸収されたLHBのSalzgitter工場ではなく、当時ドイツ領であったポーランドのBresrauにあり、KasselのCrédeは、現在はありません。
これだけの所帯を持つ制式客車シリーズなので、DRGとしても戦後のDB/DRでも、多くのD-Zugとして東西ドイツ全体で標準的長距離用客車として運用されていたと推察できます。
[参考文献]
Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
今回の1928年製造の3つの車種(ABC4ü、AB4ü、C4ü)は、全て全長21,72m、車幅2,96m(厳密にはABC4üは2,964m)とほぼ共通の車体構造になっています。
台車から遠い中央部分の2室が1等区分室、そこから左右に3室が2等区分室にレイアウトされていて左右デッキ部分に出入口とWCが設備されています。
1等区分室は、窓幅が1200mm、2等区分室は1000mmのため、外観でもすぐに理解できます。1等区分室は、向かい合わせシートが2名用と1名用に肘掛で分けられていて、向かい合わせで肘掛の位置がオフセットされています。2等区分室は3人用シートが向かい合わせです。区分室の長さも1等室は2100mm、2等室が1970mmと室内空間の広さにも差別化が図られています。2等区分室が1室6名定員に対して、1等区分室は当初6名でしたが、後に4名と変更されたようです。(当時の乗車運賃は2等が3等の2倍で1等は3倍だったことからも、1等区分室が定員6名になるのは苦情の元になったことが推察できます。)
よって全体の定員は、1等12名(後に8名)2等36名で合計48名(後に44名)は、定員80名の3等区分室車に対して妥当な寸法と言えます。シートはモケットで、3等車の木製ベンチより遥かに快適なはずで、長時間の旅には3等車のシートは辛いものであったと想像できます。
台車は、Görlitz II SchwerでC4üと同じ仕様となります。車内の静粛性や揺れなどは、どの等級でも違いはなかったのではないかと想像できます。
車体番号は、以下の通り2つのグループに分けられます。
11 333 - 11 362: 29両
11 363 - 11 568: 205両
合計:234両
この234両のうち「11 508」は試験的にScharfenbergkupplung(密着連結器)を取り付けていたようです。
現在の1等車(+プレミアムクラス)車両と考えれば、1形式所帯としては、多い方ではないかと思います。
製造メーカーは、LHB、Crede、Wegmannの3社です。
現在ALSTOMに吸収されたLHBのSalzgitter工場ではなく、当時ドイツ領であったポーランドのBresrauにあり、KasselのCrédeは、現在はありません。
これだけの所帯を持つ制式客車シリーズなので、DRGとしても戦後のDB/DRでも、多くのD-Zugとして東西ドイツ全体で標準的長距離用客車として運用されていたと推察できます。
[参考文献]
Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
42529 DB C4ü-28 / Ep.IIIa (解説) [Maerklin-Reisezugwagen]
先日、メルクリンから発表された01.10形(旧型ボイラ仕様)と共に5種のGruppe 29客車のリリースも告知されました。
この客車群は、Schürzenwagen、Hechtwagen以来の戦前形急行型客車モデルで1度に多車種同時リリースであることがとても驚きました。というのもSchürzenwagenの開発にはかなりの費用が掛かったそうで、今回のモデルに関しても相応の開発コストを掛けて今後様々なバリエーション展開が期待できると感じています。
そこで、モデル1つ1つの詳細な画像はないのですが、このモデルの実車について、Deppmeiser氏が執筆した客車資料本が手元にあるので、それを元に、まず3等車のC4ü-28形を解説してみたいと思います。
まず、DRG(ドイツ鉄道公社)時代の客車は製造初年を形式に使われているので、この車両は1928年製の3等車(2等級制では2等車)ということになります。モデルではEp.IIIa時代のため、DRG時代と同様3等車です。
全長は21,72m、全幅は2,92m、台車はGörlitz II Schwer(16 513 - 16 518はGörlitz III Schwer)です。そのため、このボギー台車は車軸間距離が14,4mと短く、台車1つの車軸間は3600mmと長いです。(それ故モデルもフルスケールが可能です)
車端部2ヶ所にデッキ付き出入台があり、両デッキ部にはWCが2ヶ所、760mmの側廊下を持つ10の8人用(1列4人!)区分室が並んでいます。(定員80名)現在標準の21,6m客車(UIC-X)は、2等車で6人用12個室ですから、車体が短くても定員が8名も多いのは、車幅が大きいため1列4名の木製ベンチシートによるものでしょう。(最近登場したFLIXTRAINは、UIC-Xから2名用シートが左右に並ぶ開放室に改造され定員96名!)
製造当時の車両番号は以下の通り
16 192 - 261 : 69両
16 262 - 361 : 99両
16 369 - 443 : 74両
16 444 - 518 : 74両
16 223 - 226 : 4両
以上を合計すると320両の比較的大きな所帯のグループになります。製造当時は乗客の8割から9割が3等車を利用していたことから、これだけの車両が製造されていたことは理解できます。
製造メーカーは、Dss*、WWm**、LHB、Gör***、MAN、Wegmanの6社です。
*) Düsseldorfer Eisenbahnbedarf AG vorm. C. Weyer u. Co, Düsseldorf-Oberbirk
**) Vereinigte Westdeutsche Wggf. AG, Mainz
***) Wumag, Waggon- u. Maschinenbau AG, Görlitz
[参考文献]
Die Einheits-Personen- und Gepäckwagen der Deutschen Reichsbahn | Joachim Deppmeyer
この客車群は、Schürzenwagen、Hechtwagen以来の戦前形急行型客車モデルで1度に多車種同時リリースであることがとても驚きました。というのもSchürzenwagenの開発にはかなりの費用が掛かったそうで、今回のモデルに関しても相応の開発コストを掛けて今後様々なバリエーション展開が期待できると感じています。
そこで、モデル1つ1つの詳細な画像はないのですが、このモデルの実車について、Deppmeiser氏が執筆した客車資料本が手元にあるので、それを元に、まず3等車のC4ü-28形を解説してみたいと思います。
まず、DRG(ドイツ鉄道公社)時代の客車は製造初年を形式に使われているので、この車両は1928年製の3等車(2等級制では2等車)ということになります。モデルではEp.IIIa時代のため、DRG時代と同様3等車です。
全長は21,72m、全幅は2,92m、台車はGörlitz II Schwer(16 513 - 16 518はGörlitz III Schwer)です。そのため、このボギー台車は車軸間距離が14,4mと短く、台車1つの車軸間は3600mmと長いです。(それ故モデルもフルスケールが可能です)
車端部2ヶ所にデッキ付き出入台があり、両デッキ部にはWCが2ヶ所、760mmの側廊下を持つ10の8人用(1列4人!)区分室が並んでいます。(定員80名)現在標準の21,6m客車(UIC-X)は、2等車で6人用12個室ですから、車体が短くても定員が8名も多いのは、車幅が大きいため1列4名の木製ベンチシートによるものでしょう。(最近登場したFLIXTRAINは、UIC-Xから2名用シートが左右に並ぶ開放室に改造され定員96名!)
製造当時の車両番号は以下の通り
16 192 - 261 : 69両
16 262 - 361 : 99両
16 369 - 443 : 74両
16 444 - 518 : 74両
16 223 - 226 : 4両
以上を合計すると320両の比較的大きな所帯のグループになります。製造当時は乗客の8割から9割が3等車を利用していたことから、これだけの車両が製造されていたことは理解できます。
製造メーカーは、Dss*、WWm**、LHB、Gör***、MAN、Wegmanの6社です。
*) Düsseldorfer Eisenbahnbedarf AG vorm. C. Weyer u. Co, Düsseldorf-Oberbirk
**) Vereinigte Westdeutsche Wggf. AG, Mainz
***) Wumag, Waggon- u. Maschinenbau AG, Görlitz
[参考文献]
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42529 DB Schnellzugwagen-Set der Einheitsbauart 1928 bis 1930 / Ep.IIIa [Maerklin-Reisezugwagen]
昨日発表された2023年のインサイダーモデル01.10形に合わせた客車セットが同時に発表されました。
これが久しぶりに完全新設計のGruppe 29形客車で、私個人はこちらも機関車同様サプライズでした。
早速、メルクリン公式上の特設ページではなく、このモデルのページを検索してみたのが以下のリンクにあります。
Schnellzugwagen-Set der Einheitsbauart 1928 bis 1930
驚いたのは、Gruppe 29形モデルは、樹脂製モデルとして既にメルクリンH0の製品プログラムにあるためです。27cmや26,4cmモデルが28,2cmモデルとして登場して以来の新しい製品ラインナップと思われます。
以前のGruppe 29形のモデルは、ラインナップとしてはやや貧弱で、非常にあっさりしたディテールは扱いやすい一方で、やや物足りなさを感じたモデル群でした。そこに登場したのが今回のモデルです。
車種は、1/2/3等合造車(ABC4ü-29)、1/2等合造車(AB4ü-28)、3等車(C4ü-28)、食堂車(WR4ü)、荷物車(Pw4ü-29)です。食堂車と荷物車を除いて全て区分室車であり、以前のモデルとは形式的にも異なるため、今回のモデルのように同形式グループで揃った編成でも、以前のモデルと組み合わせても良いかも知れません。(当時のD-Zugは、編成写真などを見る限り、揃った編成は珍しかったように思います)
まだ、詳細を調べていないので、同じGruppe 29でも以前のラインナップのモデルの比較詳細など、ここでお示しすることができればと思います。
- - -
[参考]
Gruppe 29-Wagen / DB Ep.III まとめ|Spielkiste
[EDIT] 2022-12-04
これが久しぶりに完全新設計のGruppe 29形客車で、私個人はこちらも機関車同様サプライズでした。
早速、メルクリン公式上の特設ページではなく、このモデルのページを検索してみたのが以下のリンクにあります。
Schnellzugwagen-Set der Einheitsbauart 1928 bis 1930
驚いたのは、Gruppe 29形モデルは、樹脂製モデルとして既にメルクリンH0の製品プログラムにあるためです。27cmや26,4cmモデルが28,2cmモデルとして登場して以来の新しい製品ラインナップと思われます。
以前のGruppe 29形のモデルは、ラインナップとしてはやや貧弱で、非常にあっさりしたディテールは扱いやすい一方で、やや物足りなさを感じたモデル群でした。そこに登場したのが今回のモデルです。
車種は、1/2/3等合造車(ABC4ü-29)、1/2等合造車(AB4ü-28)、3等車(C4ü-28)、食堂車(WR4ü)、荷物車(Pw4ü-29)です。食堂車と荷物車を除いて全て区分室車であり、以前のモデルとは形式的にも異なるため、今回のモデルのように同形式グループで揃った編成でも、以前のモデルと組み合わせても良いかも知れません。(当時のD-Zugは、編成写真などを見る限り、揃った編成は珍しかったように思います)
まだ、詳細を調べていないので、同じGruppe 29でも以前のラインナップのモデルの比較詳細など、ここでお示しすることができればと思います。
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[参考]
Gruppe 29-Wagen / DB Ep.III まとめ|Spielkiste
[EDIT] 2022-12-04
次世代NightJet車両のインテリアが完成・公開されました [Maerklin-Reisezugwagen]
欧州西側では、NightJetの登場以来、夜行列車の復活が日本のメディアでも報道されてきました。ただ、現在はCNLから運行を引き継いだNJが車両も同様にCNLから引き継いでいるなど、簡易寝台車は1970年代の車両が使われていていて、決して現代の指向に合致した車両とは言えません。
そこで、NightJetを運行するオーストリア国鉄(ÖBB)が、SIEMENS-MobilityにRailJetと同じViaggioをベースにした新たに3種のインテリアの夜行列車(NJ)向け客車33編成を発注、現在鋭意製造中です。
今回そのインテリアが完成し、昨日報道公開されました。以下はウィーンのORF放送局の記事です。
Neues Innendesign für ÖBB-Nightjets
この記事によれば、4人用クシェット(簡易寝台車)、ミニスイート、寝台車が発表されています。新しい4人用クシェットは照明などのインテリアデザインに拘りがあり、居心地の良さそうなわかりやすい空間デザインです。ただ、上段ベッドが畳めない構造なので、日中の乗車は難しいかも知れません。
ミニスイートは日本のカプセルホテルにリスペクトしたデザインで、鉄道用寝台の新しいカテゴリになります。新しいだけに営業開始で利用者からの評価が気になるところです。
寝台車は、2段ベッドが車体の長手方向にレイアウトされています。以前のCG画像では、横手方向のインテリアで(旧CNLの)2階建寝台車や、173.1形寝台車など既にあるトイレとシャワーは自室にある設備なので、新しい寝台車もこの2つの仕様でベッドの位置が異なるのかも知れません。
他にも、座席車両や供食設備もある7両編成なので、完成すれば見所の多い新しい夜行列車の姿になる期待が膨らみます。
この新しいNightJet編成は制御客車を含めた固定編成でRailJetと同じコンセプトの客車列車ですが、車内が異なることと、制御客車の前面がRailJetのTaurus顔に対して、NightJetはVectron顔です。
これらの新型車両の最初はウィーンとミュンヘンからローマ、ベネチア、ミラノを結ぶ予定です。
そして2025 年までに33 編成すべてのNightJetがオーストリア、ドイツ、イタリア、スイス、オランダの夜行列車に使用され、既存の列車の大部分が置き換えられます。
予定では、来年から登場するとされる久しぶりの新型車両による夜行列車は運行が楽しみです。
[追記]
より詳細な説明と画像、映像が掲載されているページを発見しましたので以下リンクします。
[AT] ÖBB and Siemens present: The new Nightjet interior! [video]
これによれば、簡易寝台が2種(クシェット、ミニ・キャビン)あるようです。(ミニスイートは名称がミニ・キャビンに変更)
寝台車は2種(コンフォート、コンフォートプラス)あるようです。コンフォートは個室に2つのベッド(車体に対して長手方向にレイアウト)と洗面台、トイレつき。コンフォートプラスは、個室に2つのベッド、洗面台、トイレ、シャワー付き。
今回は紹介されませんでしたが、座席車と供食車両があると思われます。
つまり新しいNightJetは5種のカテゴリーから選択できるはずです。
最高制限速度は230Km/hです。日本であれば新幹線レベルの速度ですね。
[EDIT] 2022-09-08
そこで、NightJetを運行するオーストリア国鉄(ÖBB)が、SIEMENS-MobilityにRailJetと同じViaggioをベースにした新たに3種のインテリアの夜行列車(NJ)向け客車33編成を発注、現在鋭意製造中です。
今回そのインテリアが完成し、昨日報道公開されました。以下はウィーンのORF放送局の記事です。
Neues Innendesign für ÖBB-Nightjets
この記事によれば、4人用クシェット(簡易寝台車)、ミニスイート、寝台車が発表されています。新しい4人用クシェットは照明などのインテリアデザインに拘りがあり、居心地の良さそうなわかりやすい空間デザインです。ただ、上段ベッドが畳めない構造なので、日中の乗車は難しいかも知れません。
ミニスイートは日本のカプセルホテルにリスペクトしたデザインで、鉄道用寝台の新しいカテゴリになります。新しいだけに営業開始で利用者からの評価が気になるところです。
寝台車は、2段ベッドが車体の長手方向にレイアウトされています。以前のCG画像では、横手方向のインテリアで(旧CNLの)2階建寝台車や、173.1形寝台車など既にあるトイレとシャワーは自室にある設備なので、新しい寝台車もこの2つの仕様でベッドの位置が異なるのかも知れません。
他にも、座席車両や供食設備もある7両編成なので、完成すれば見所の多い新しい夜行列車の姿になる期待が膨らみます。
この新しいNightJet編成は制御客車を含めた固定編成でRailJetと同じコンセプトの客車列車ですが、車内が異なることと、制御客車の前面がRailJetのTaurus顔に対して、NightJetはVectron顔です。
これらの新型車両の最初はウィーンとミュンヘンからローマ、ベネチア、ミラノを結ぶ予定です。
そして2025 年までに33 編成すべてのNightJetがオーストリア、ドイツ、イタリア、スイス、オランダの夜行列車に使用され、既存の列車の大部分が置き換えられます。
予定では、来年から登場するとされる久しぶりの新型車両による夜行列車は運行が楽しみです。
[追記]
より詳細な説明と画像、映像が掲載されているページを発見しましたので以下リンクします。
[AT] ÖBB and Siemens present: The new Nightjet interior! [video]
これによれば、簡易寝台が2種(クシェット、ミニ・キャビン)あるようです。(ミニスイートは名称がミニ・キャビンに変更)
寝台車は2種(コンフォート、コンフォートプラス)あるようです。コンフォートは個室に2つのベッド(車体に対して長手方向にレイアウト)と洗面台、トイレつき。コンフォートプラスは、個室に2つのベッド、洗面台、トイレ、シャワー付き。
今回は紹介されませんでしたが、座席車と供食車両があると思われます。
つまり新しいNightJetは5種のカテゴリーから選択できるはずです。
最高制限速度は230Km/hです。日本であれば新幹線レベルの速度ですね。
[EDIT] 2022-09-08