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DB Bvmz 185 / Ep.IV [欧州鉄道]

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▲ Bvmz 185 Hamburg-Altonaにて

1988年の秋も深まってきた11月16日、私はカメラを持ってBremenからHamburg Altonaに撮影に来ていて上画像のIC車両を撮影していました。
この車両は1988年に運用を開始したDBの半個室車両Bvmz 185です。当時、2等客車は1960年代から製造されていた区分室車であるUIC-XのBm 235がICの標準車両、そして1979年に登場した開放室車のBpmz 291が中心となって組成されていました。DBでは、2等車が連結されるようになったIC/ECの混雑した6人用区分室車(Abteilwagen)より、広々とした開放室車(Großraumwagen)に人気がありました。開放室車のBpmzは、エアコン装備で最新の台車(MD52)を履いた高速でも揺れが少なく静粛性の高い車両であったこともその背景にあります。一方で区分室車についても一定の需要はありました。余談ですが、予約時に「開放室車か区分室車のどちらが良いか?」...と尋ねられるのは日本の鉄道にはない仕組みなので、私も初めて予約した時は戸惑いましたが、テツではない日本人旅行者は予約時に訊かれても私以上に分からなかったと思います。

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▲ 気密貫通路の構造図 / Quelle: Eisenbahn-Journal 6/1988 Augst

さて、Fulda - Würzburgを結ぶNBS(高速新線)が完成し、ハンブルク - フランクフルトは、ルール地方、ライン左岸線経由よりもハノーファー、フルダ経由が圧倒的に到達時間が早くなりました。
また、この高速新線はトンネルが多く、高速でのトンネルの進入出の際の微気圧が生じ、車内にいるといわゆる耳ツンが起きやすくなります。そこでこれに対応した気密対応貫通路が装備された客車が登場しました。上図にあるように気密対応の貫通路は通常のゴム幌の上に連結される両客車が密着できる貫通路を加えたもので、この構造はICE-Vで開発された全断面幌の構造と同様で、ICE 1では実現されなかった貫通路部分の一体化が応用され実現しています。(ICE 1は固定編成のため、幌だけで問題解決します)

それらの車両は1等区分室車がAvmz 207を改造したAvmz 107、1等開放室車はApmz 122/123を改造したApmz 177/123、2等開放室車Bpmz 291を改造したBpmz 293、食堂車もWRbumz 139 (QuickPick)から車体中央に厨房をレイアウトし厨房を挟んでレストランエリアとビストロエリアの2つに分けた初めての食堂車(Bord Restaurant)としてWRmz 137に。全て当時最新のOrientrot/Pastelvioletに塗り替えられ、アルトナ駅で観た当時最新の120.1形機関車以下、出発を待つIC列車は全て新車のようないでたちでその美しい編成美に魅了されました。

185形以外の全てが改造車両でしたが、流石に1960年代からのBm 235 / UIC-X客車(2等区分室車)は、InterRegio向けに改造が進んでいることやエアコンが装備されていないこともあり、その代わりに登場した2等区分室車がBvmz 185でした。これはLHBにより1988年から製造された客車で、当初から気密仕様の貫通路とOrientrotベースの塗装色でした。12両のプロトタイプ、48両の量産先行車、120両の量産車の3種類があり、1991年まで合計180両がLHBの他、量産先行車からはWaggon Unionでも製造されました。(量産車の一部に非気密仕様あり)

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▲ Bvmz 185の平面図 / Quelle: Eisenbahn-Journal 6/1988 Augst

この、Bvmz 185のインテリアデザインは、当時のDBの2等車の区分室車離れに向き合った新しい試みがなされています。つまり、車端部左右の3室と2室が6人用区分室で、中央はドアのない4人用半区分室、通路は窓側ではなく開放室タイプの大型テーブル付き向かい合わせ1人座席がレイアウトされています。上画像の図面参照。

余談ですが、私がこの車両に初めて乗車したのはブレーメンで語学学校に通っている頃、同じ寮生活をしていた日本人数人でオーバーバイエルンのツークシュピッツェ山へと週末ハイキング旅行に出掛けた帰りにIC列車でガルミッシュ・パルテンキルヒェンからミュンヘンまでの移動でたまたま乗車した車両がこの185形でした。当時はこの車両の開発背景や詳細を知らず、半個室でBvmzの表記に若干違和感を感じたものの、開放室客車の293形のような70年代の流行を引きずったような茶色と黄色い座席のカラースキームから、座席のモケットもICE-Vの2等車に見られたのと同じアップルグリーン色でフレッシュな印象を持ちました。座席定員も12個室のBm 235より少なく、11室となっています。
*その後ICEカラーになってからリニューアル改造を受け、中央の半個室部分が完全な開放室仕様となり、区分室仕切が外されたため2+1の座席が、2+2の座席配列となりました。(定員増になりました)
こうなると表記的にはBvpmz...になりそうですが、Bvmzのままです。

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さて、このBvmz 185のH0モデルですが、メルクリンからICE塗装のEp.V仕様(43680)で既に発売されています。これはリニューアル後の中央部の半個室が無くなり2+2の開放室にリニューアルされた姿です。しかし、デビュー当時の仕様(しかもプロトタイプ)ではまだ出ていません。ただ、外観上はほぼ同様のため、室内装備と塗装変更で可能な同形の185形客車のためにFD Königsseeがないというわけではなく全てのモデルが揃っているので、なぜごく短期間の旧塗装の仕様にしたのかが不思議になります。(どちらかと言えば、FD 780/781時代の仕様の方がしっくりきます。ただ、その時は食堂車がWRtmh 136(Cafeteria/Kinderland)になるでしょう。)
1等/食堂合造客車(ARmz 211)を製品化するための選択だったと妄想をしてしまいました。またこの211形は、一時期マクドナルド食堂車 WRkmz 136として改造され運用された一部車両もあるので、これの製品化の布石かもしれません...。

いずれにしてもこの185形は、DBの客車としては比較的車令が浅く製造数も少なくないため、メルクリンからは是非Orientrot仕様と2両のみの実在でしたが、IRブルー塗装のFD仕様のモデルも出して欲しいと期待しています。

[追記]
当初Bvmz 185形はメルクリンH0からリリースされていないと記しましたが、2020年からICE塗装の仕様で発売済みであったことを確認したため、本文修正しました。

Thanks: BOAC VC10さま

[参考文献]
"Unser Wagenporträt" Reisezugwagen Bvmz 185 der DB / Eisenbahn-Journal 6/1988 Augst

[参考サイト]
Bvmz-Wagen der Deutschen Bundesbahn / Wikipedia.de
Speisewagen / Wikipedia.de

[EDIT] 2024-05-03
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