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大洲大作 「未完の螺旋」 [Kunst]

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昨日、友人の写真家大洲さんより表題のインスタレーション展示の案内を頂きました。この展示は大洲さんが長年、列車の車窓をテーマにしている作品のインスタレーションなのですが、今回は東京上野の旧京成博物館動物園駅構内が展示会場とのこと。ここは、ご存知の方も多いとは思いますが、地下駅で以前は使われていたのですが、現在は営業されておらず、当時のままの姿の構造物と空間が残っています。

いただいたパンフレットによれば...

「..鉄道などの「車窓」に材を取った作品で知られる、大洲大作氏のインスタレーションによって、これまでには広く知られることのなかった、上野地下線のある記憶をうつし出すことを試みます。」

とのこと。

普段は立ち入ることのできない上野博物館動物園駅ですが、今回の試みは「鉄道」という題材にスクープし続けている大洲さんならでは舞台装置での開催になり、大変興味深いものとなっています。

会期:2019.8.10 - 18
開場時間:13:00-18:00
会場:京成電鉄 旧博物館動物園駅
入場無料(但し、入場には当日分の整理券が必要。整理券の配布は、会期中毎12:30から会場前にて)
注意事項:バリアフリーには対応していません。会場は駅舎ですが、駅としては機能していません。鉄道業務に関わる緊急時には入場できないことがあります。

問い合わせ:art-Link 上野・谷中
Mail: artlink97@yahoo.co.jp

参考サイト:
大洲大作『未完の螺旋』Daisaku Oozu “Unfinished Spiral” / direction Q
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共通テーマ:アート

東京ステーションギャラリー内覧会 [Kunst]

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いよいよ東京駅の復原工事もほぼ終了し、10月1日のオープンに先駆け復原工事が完成した丸の内駅舎内の各施設が順次オープン前の内覧会を催され、東京ステーションホテルはテレビニュースなどでその様子が放映された。メディアでの宣伝効果もあってか昨日出掛けた東京駅の駅舎前は、カメラ片手の人が数多く、記念写真などを撮影してい老若男女がごったがえしていた。特に驚いたのは、おそらく戦前の旧駅舎の姿を知っていたとおぼしき年齢の女性が少なからず居たことに、この駅舎の魅力は多くの人が共有しているものと感じたのである。

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この駅舎の復原工事は、色々な反対意見も少なくなかったようで、その中でも以前からある角形屋根は戦災の象徴であるから残しておいた方が良いというような意見もあったそうである。もし戦災の象徴として残すなら、広島の原爆ドームやベルリンの教会のように、爆撃されたそのままの形で残すべきである。やはりドーム屋根に象徴される3階建てのオリジナルの美しい姿に復原された駅舎を見ると、とても豊かな気持ちになれるのは、この駅舎建築が造形的にも優れていたからに他ならない。

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駅舎中央の車寄せは皇室専用口で、車寄せと出入口だけ見れば以前と同じように見えるが、おそらく室内は他と同様復原されているのであろう。ここの前で記念撮影をしている人が多かった。

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中央から右手は東京ステーションホテルである。報道では、復原により3階部分の客室が増え収容人数も増えたそうである。最も高額なスイートルームは1泊80万円もするとか。それでも好きな人は泊るのであろう。館内には創業当時駅に貼られていた鉄道省のポスターなども飾られているとか。
この時は、開業前の内覧会のようでコンシェルジュがエントランスに立ってそれを遠巻きに眺める我々庶民という構図である。

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今回ここを訪れたのは、丸の内北口にある東京ステーションギャラリーに行くためである。この日、新しく完成したギャラリーのお披露目を兼ねた内覧会で、当ブログでも紹介したことのある友人Oozuさんがこの最初の展示作家の1人として参加されているので招待を受けたのである。内部は撮影禁止のため写真はないが、焼失し再建された3階部分から2階への階段の壁には、残存している炭化した木材構造物が見えたりするのが生々しく、当時の様子が蘇るようである。

今回の展示テーマは、「始発電車を待ちながら」というタイトルで、東京駅や鉄道をモチーフにした現代アートの作品群である。その中のOozuさんの作品は、写真とスライドによる「光のシークエンス」である。その他、数多くの興味深い作品群は、内覧会ということもあって作家の方々の話を聞きながらの作品鑑賞を通して内容の理解も出来、とても充実した時間を過ごせたのである。
普段あまり美術館とは縁のない方でも鉄道に興味があるなら、意外とすんなり美術の世界に入り込めるかも知れないという印象を持った展示作品群である。

展示会場を出たところは、丸の内北口のエントランスホール2階部分である。(上画像)そこを廻ってギャラリーショップを通って1階受付に出られるようになっている。

この復原された美しい駅舎と、東京駅らしいステーションギャラリーは、いつまでも残して欲しい数少ない貴重な文化的価値のあると改めて感じた訪問であった。

参考サイト:
東京駅丸の内駅舎保存・復原工事 / 鹿島建設
http://www.kajima.co.jp/tech/tokyo_station/index-j.html

東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

fragments / 光のシークエンス
http://www.oozu.info/blog/?p=310
タグ:Bahnhof

フィンランドのくらしとデザイン 〜ムーミンが住む森の生活 [Kunst]

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大学の授業が夏休みになった木曜日に、かねてから行きたかった宇都宮美術館で行われている表題の展覧会にようやく出掛けることができた。上画像は、美術館下にある展示案内。

私の住まいから宇都宮まで約100Kmの距離。東京迄の距離とほぼ同じである。但し、東京中心の交通網では、心理的距離とは異なるものである。しかし、昨年の震災直前に全線開通した北関東自動車道により、少なくとも自動車では印象は全く異なるものとなった。以前子供達が小さかった頃、宇都宮よりやや手前の壬生町にある博物館にクルマで出掛けたことがあったが、高速自動車道が出来る前だったので、一般道を使うためとても遠かった印象がある。今回は、ウチから美術館迄約1時間半である。お盆前ということもあって渋滞と呼べるような混雑もなく、その道のりは晴天にも恵まれ快適なドライヴとなった。

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宇都宮美術館は、市街地から少し離れた丘陵地の上にあり、大学や新興住宅地を抜けた頂上と言うべき場所にある。開館15周年であるらしいが、この美術館が完成した当時、その写真を見て是非訪れたい美術館と思った1つである。それは、その優美な建築が見たかったからである。上画像は、駐車場から美術館迄のアプローチの途中に広がる広場である。久しぶりにドイツのような大きな芝地と広い空を眺めることができた。

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美術館の外観は上の画像である。室内は撮影が出来ないのでここまでであるが、想像していた通りの美しい美術館である。

私達にとって、テレビ放映で有名なムーミンのいるフィンランドという国は、もちろん知られた国の1つではあるが、その実情、つまり国土の成り立ちや、文化、環境については、例えばドイツ、フランス、イタリア、イギリスなどに比べて知られていないのではないだろうか。この展覧会は、そういう我々一般のフィンランド感というものを理解した上での奥深い展示である。

この国は国土の面積がイメージではとても広い印象があるが、実は日本の国土より若干小さい。それは我々が良く目にする世界地図がメルカトル図法によるものであるからという。北欧のこの国をメルカトル図法で表現すると実際の面積より大きく描かれるためである。より南に位置する日本と、この地図で大きさを比較するのは難しい。人口については記す迄もなく日本より随分と少ない。(更に日本は国土の約7割が山岳地帯なので、居住出来る場所が更に小さいのはご承知の通り)

そんな国土を持つフィンランドは、独立してまだ100年も経っていないという。長らくスウェーデンやロシアに支配されていた歴史を持つため、例えばフィンランド国鉄(VR)の鉄道は、ロシアと同じ広軌だったりするのもその影響であろう。(そのためRe460のVR仕様は広軌である)

この展示会では、会場を館内の2つの展示室でみる事ができる。1つは絵画、カレワラと呼ばれる物語についての展示、ヘルシンキ中央駅を手がけた建築家サーリネンの建築、手工芸や楽器の紹介など。これらを見ると、やはりフィンランドの人々は森の民ということが理解出来る。ここでフィンランドの文化と歴史が理解出来る。
そしてもう一つの会場には、私達がフィンランドを断片的に知り得ている幾つかのアイテムをピックアップして紹介している。そこにあるのは、例えばムーミンとその作者のトーベヤンソンの紹介や彼女の作品、また最近独特の花柄模様で人気のmarimekkoのアパレル類やアアルトの家具、照明、イッターラ社のガラス陶器に代表される美しく普遍とも言えるプロダクトデザインも見ることが出来る。特にアアルトのデザインした幾つかの椅子は実際に座ることができるのが嬉しい。

そして、今回の展示で私が1番見たかったのがヘルシンキ市交通局のLRTに代表される公共交通とピクトグラムを多用したデザインの実例が展示されていることである。これについては、大きなスペースを割いてはいないが、利用者対して「語りかける」デザインであることが理解出来る。それもピクトグラムが主であるため、利用者が文字情報に頼らなくてもオリエンテーション可能であることである。
特に公共交通とサインについては、その絵柄で誘導出来るしくみや使い方に於いて我が国でも学ぶべきところは多いと感じた次第である。東京などの大都市で公営民営問わず全ての公共交通がピクトグラムや簡潔な文字情報で統一した案内が出来るなら、その効率化と利用者のストレス軽減にとって大きなプラスになるであろうことは容易に想像出来るものである。

なお、この展覧会は今月26日(日)迄で、その後9月1日(土)から静岡市美術館で同様の展覧会が行われる。

上記からも大きな収穫のあったフィンランド展である。もちろん帰りに宇都宮餃子のお店に立ち寄ったのは言うまでもない。

参考サイト:宇都宮美術館
http://u-moa.jp/

フィンランドのくらしとデザイン展
http://www.finland-design.com/

Le Chat Noir: Entertainmeit, Art and Culture in Paris 1880 - 1910 [Kunst]

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現在、表題の展覧会(陶酔のパリ・モンマルトル 1880 - 1910)が群馬県立近代美術館の企画展として行われている。昨年末からの展示であり、もっと早く見に行きたかったのであるが、昨日ようやく訪れることができた。
上画像は、群馬の森にあるその美術館である。設計は磯崎新によるもの。

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入口には、巨大なペナントと日仏の国旗が掲揚され、この展覧会の開催を少しばかり盛り上げている。
館内はもちろん撮影できないので遠慮したのであるが、エントランスホールは吹き抜けであり、コンクリート打ちっぱなしと大理石の内壁が、竣工当時の日本の経済事情を物語っている。建築家として名を馳せた彼の出世作と言われているこの作品であるが、詳しくは以下ブログ記事を参照していただければとも思う。

http://ameblo.jp/tonton3/entry-10142889087.html

さて、本題に戻るが、この展覧会は、19世紀末から20世紀初頭に掛けてのパリのモンマルトルの丘に住む芸術家とその丘の下にあるピギャール広場近辺にあるカフェやキャバレー(と言っても日本の同名のイメージとは異なり、大衆舞台芸術を楽しみながら飲食出来る社交場である)の文化を紹介するものである。丁度日本の平面的な美術である浮世絵が西洋で高く評価され、それまでの3次元を表現してきた芸術界に新しい画風をもたらした時期と重なる。それらは、カンバスに描く絵画に留まらず、いわゆる商業デザイン(グラフィック)の先駆けとも言えるポスターなど、リトグラフによる印刷とマッチし、当時のアールヌーボーの表現手段として華開かせたのである。

そのキャバレーの1つでもある「Le Chat Noir」(黒猫)と呼ばれるキャバレーのありようを、近辺のカフェやそこで催された「影絵」、絵画、ポスターなどの資料を展示し、また実演させながら、当時の存在を浮き上がらせるという試みである。

特に影絵については当時の影絵セットを再現し、それを実際に見ることが出来るのは興味深く当時の人々の娯楽の感心を追体験出来る。もちろん現在は世界屈指の観光地でもあるパリのモンマルトルではあるが、当時ではパリの一般大衆や、それを好む上流階級の人々、闇の世界もあったであろうこの界隈の文化は当時の世界最先端の芸術の発信地でもあったはずである。

そのような世界をこの群馬で体験出来る幸せを久しぶりに味わったのであるが、私達が訪れたのは平日の午前中でもあったためか、観覧者も少なく快適にじっくりと作品を鑑賞出来、当時の世界に深く身を置くことができたのは、地方であったが故の幸いである。

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正面玄関に「毎日先着10名さまにポスター進呈」のはり紙を見つけたのであるが、お昼に近い午前中に訪れた私にも、なんとそれを貰えることに。今朝早速それを我が家にあった枠なしガラスホルダーに据え、居間の壁に掛けた。暫くミルヒが怪訝そうにその黒猫ポスターを気にしていたのだが、今はその真下で寝ている。

この展覧会は、今月25日迄である。

参考サイト:群馬県立近代美術館
http://mmag.pref.gunma.jp/