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2510 ALPHA [Maerklin-Allgemein]

今日は、ちょっと変わったメルクリンモデルを紹介したい。これは、1988年にメルクリンが子供向けに開発した「ALPHA」と呼ばれるシリーズのスタートセット(2510)である。ちょうど私が留学でドイツに渡ったのが1988年8月で、その年のIMA(International Modellbahnausstellung)がHamburgで行われ、同じ北ドイツのBremenでドイツ語を学んでいた私は、IMA見学にHamburgへいそいそと出かけたのである。そしてその時、メルクリンブースで発表されたのが「ALPHA」であり、当時のメルクリン輸出部長のW氏が日本人の私に「ALPHA」の特徴を詳しく解説してくれたのが印象的であった。

「ALPHA」は、単に子供向けのメルクリンスタートに相応しいということだけではなく、現在のメルクリンH0のインフラに深く関わるものとして注目すべき点がいくつもある。
と言うのは、まずレールであるが、それまで金属道床の「M」式と、よりリアルな樹脂製道床の「K」式レールの2種類のみであったが、ALPHAでは「Gleis 2000」と呼ばれる新たに開発したジョイントレスでワンクリックタイプのレールを組み込んだのである。このレールは極めてCレールに近い設計であり、非常に頑丈で簡単な組み立てと片付けが可能な新世代のレールシステムであった。しかし、直線長が180mmと「M」、「K」に近いジオメトリー、また道床の寸法や、接続部分の形状も若干異なり、Cレールとの接続互換がない。もちろんCレールがリリースされた時には「Gleis 2000」は生産完了されている。つまり、Gleis 2000はCレールの基礎部分を構築したと言えよう。

また、トランスもアナログだが革新的である。何故ならこのトランスは、コードレスの充電式である。それも充電器が本体と一体型であり、充電するときのみ本体と離してコンセントに差し込むことができるのである。(コンセント部分は可動式で本体に結合する時は折り畳む)充電時間と走行時間を考えると少々面倒くさくもあるが、何よりコードレスなので安全であり、充電器を複数持てば、走行させながらもう1つの充電器で充電が可能であろう。ただ、残念なことに、その後この充電型トランスは事故が起きる可能性があるとのことで、リコール対象となった。また、ファンタジックな機関車と分解可能な客車、オバールレール一式、充電式トランス、トンネルになる切り欠き付の背景パネル、コミック仕立ての解説書が1つのセットになっている。更に感心するのは、外箱自体が樹脂製の骨組み本体とレールケースに別れ、本体をカバーする上下の外郭部分が、駅舎と機関庫になるよう工夫されている。つまり、今のような紙箱や発泡材料を一切使用せず、箱から中身まで全て使える工夫があるところが特に優れた部分であると思う。80年代にゴミを出さない工夫がされている点は大いに評価に値しよう。そしてコンパクトに納められている点でも今でも充分に使えるしくみと言えよう。


ところが、残念ながら開発費が嵩んだためか、子供向けにしてはかなり高額な商品となり、当時としては商業的には不成功に終わったようである。このALPHAシリーズ自体も残念ながら数年で生産完了となったのである。しかし、現在のCレールの全盛を見れば「ALPHA」シリーズ開発も決して無駄な努力ではなかったと言えよう。


タグ:alpha C-Gleis
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コメント 8

masato-marklin

 このような夢のあるおもちゃ好きです。
Akiraさんがやっているような発明クラブみたいな創造性のある取り組み大変大事だと思います。
 最近の日本のおもちゃ、刺激がありすぎて、直感的過ぎて、そんな物が多いような気がします。
 切れやすい若者、昨今の日本の子供の学力低下、そんなのも一因かもしれません。
 最近の男の子、工作しなくなった、
by masato-marklin (2008-01-15 23:45) 

Akira

そうですね。先日の発明クラブでも感じたのですが、子供達にとってペーパークラフトは中々難しいみたいです。私も小学生の頃は工作大好きでラジオなんかのキットを良く組んでいました。さすがに私の子供には中々半田ごてをさわらせる機会もなくなったので、発明クラブが電気工作もしてくれるので子供達には良い経験ができます。メルクリンは、創造性も養えてレイアウト作りや電気工作も可能で...と様々なことが出来るのが魅力です。
by Akira (2008-01-16 00:31) 

klaviermusik-koba

アルファがメルクリンのカタログを一時期にぎわしていたことがあって、あきらかに子供向けではあるのだが、おっしゃるようにこの値段で子供が買えるのか、という疑問を持ちましたが、車両はきてれつなところがあって、もしうまくあたれば「機関車トーマス」のメルクリン版になった可能性もあったかも知れませんね。私もこれの失敗は惜しいと思いますが、こういう途方もないことを考えつく、というのは、日本人のアニメが世界を席巻しているように、日独共通のチャレンジ精神を感じます。Cレールを始めてみたとき、これは要するにアルファじゃないの、ととっさに感じた記憶があります。
by klaviermusik-koba (2008-01-16 10:54) 

Akira

私もはじめてCレールを見た時、ALPHAのレールと同じだと思ったのと同時に、これが伝統のある「M」式レールの代わりになることを心配しました。(それは、レイアウトに載せるには実感的にならないのではないかという危惧でした)しかし、実際にCレールを使った素晴らしいレイアウトを幾つも目の当たりにして、すっかり私もその組みやすさとリアリティの両方を兼ね備えたCレールの虜となっていました。
つまりCレールとその基礎となったGleis 2000は、それだけ技術的にも完成度が高かったんだと思います。ALPHAが失敗した要因はマーケティングの未熟さでしょうか。
by Akira (2008-01-16 15:51) 

BOAC VC10

懐かしいですね。
てっきり、追ってバリエーションが追加され、
M式レールに取って代わるものだと思ってました。

ジョイント部分もCレールとそんなに変わらないのですね。
どうせならもうちょっと詰めてから、
最初からスケールモデルにも対応できるものとして、
発売すれば・・・・というのは後の祭りでしょうか?

(旧シリーズとなってしまった27/26.4cm客車も、
72年発売時に、もうちょっとがんばって28cmで出してくれれば・・・・
妄想ですみません。)
by BOAC VC10 (2008-01-18 13:05) 

Akira

BOAC VC10さん、ごぶさたです。

私は、当時M式、K式、G2000と3つの路線になるものかと思っていました。でもかなりの開発費用をかけて製品化したことは間違いなさそうですから、ALPHAの失敗を分析したときに、おそらく線路の優秀な処はそのままに将来の総デジタル化や確実性、組みやすさ、見栄えを考慮に入れて完成したのがCレールに結実したのでしょう。
Gleis 2000がCレールと接続できないのはCレールの道床上の接続部分にジョイントのようなものが付いているからでしょう。これがGleis2000にぶつかって接続できないだけだと思います。それ以外には若干道床の下の部分が広いことや色が若干違うこと、接続部分の金属部品の素材が違うことぐらいでしょうか。
ですから、私はCレールはGleis 2000をより現実的にリファインしたものと考えます。そう言う意味では、Cレール発売時には、まだそれほどGleis 2000のレールシステムが揃っていなかったのは良かったと思います。

26.4/27cm客車については、私も同じです。24cmは金属製で割り切った潔さが感じられますが、28.2cmモデルが出てしまった以上、26.4/27cm客車は中途半端に見えてしまいます。

私の大量のそれら樹脂製客車はどうしたものか...と考えてしまいますねぇ。
by Akira (2008-01-18 14:05) 

KDB

ALPHAは懐かしいですね。付属のレールはなかなか良く、後にC式レールが発売されたとき、360Rのポイントがないので、このALPHAのポイントを混用しようか?などと考えましたが、よくみると微妙に違っていて止めました。ALPHA付属の機関車ですが、たしか1980年に出た入門用Cタンク、
89-0型(プロイセンT-8)、品番;3104--だったかな?ーーの足回りを利用していますね。89-0型は動輪径が大きいのに、メインロッド1本だけの手抜き仕様でがっかりした覚えがあります。まあ、このときからALPHAの構想があったのかもしれませんね。私も26.4cm客車が結構ありまして、しかも室内灯整備済みです。どうしたものでしょうね?
by KDB (2008-01-19 09:08) 

Akira

ALPHA機関車「F-1」の下回りは確かに流用ですね。でも、良く似合うようデザインされていますね。問題は、付属の客車の方で台車がシャシーからすぐに外れてしまうことです。クリップ式になっているのですが、設計が甘いのではないかと思います。
ただ、システム自体がしっかりしているのは、今のCレールを見れば容易に理解できます。
ところで当時、私はドイツに居たのでてっきり日本には輸出されていないと思い込んでいましたが、日本でも紹介したセット(2510)を買えたのでしょうか?
by Akira (2008-01-19 22:38) 

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