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42754 CIWL 1773 A ( Schlafwagen) / Ep.I [Maerklin-Reisezugwagen]

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5/9の荷物車に続いて、42754 "International Luxuszug von 1910"セットから今日は寝台車について紹介したいと思う。まず、このセット自体当時の編成を忠実に再現したもので、両端に荷物車そして寝台車、中央に食堂車1両という組成で合計5両の編成である。たった2両の寝台車の定員のために1両の食堂車と2両の荷物車があてがわれるなど豪華の極みであると言えよう。

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▲ CIWL社の証のワッペンが輝くボディ

ではモデルの紹介をしてみたい。この寝台車の車両番号は1773 Aと1782 Aである。全長は24,3cmである。荷物車同様2軸ボギー台車を履き、ダブルルーフ仕様である。ルーフには各種ベンチレーターやオイル照明用煙突?が付けられている。もちろん車体中央のCIWLのワッペンが輝いている。(この本によれば、実車の「Trans-Siberian Express」向け車両のワッペンに記されている文字「COMPAGNIE INTERNATIONALE DES WAGONS-LITS ET DES GRANDS-EXPRESS」は「EUROPEEN」が抜けているのであるが、モデルでは不明瞭でわからない。)
荷物車の紹介では書き忘れたのだが、このセットのモデル全てにあるバッファは金属製で凝った作りになっているのだが、驚いたのはそのバッファの左右の形状が実車同様異なる形状になっていることである。向かって左のバッファは3次曲面で出来ているのだが、右のバッファは2次曲面(つまり平面)なのである。そう言えば今年のTRIXの新製品モデルの多くの機関車がこれと同様で左右のバッファ形状が違ったことを思い出した。

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▲ 左右のバッファの形の違いがわかるであろうか?

そこで、手元にある数少ないCIWLの資料のうちEK(Eisenbahn Kurier)-Verlagから出しているCIWLポスターについての豪華装丁の本「125 Jahre International Schlafwagen-Gesellschaft」を開いてみた。この本は、列車名と年代順に纏められており、当時の最先端グラフィックデザインを採用した旅心を誘う美しくしいポスターの数々がおさめられているのであるが、当然のことながらこの列車モデルのオリジナルである「NORD-EXPRESS」にも少なからず記述されている。それによれば、1899年からParis - Warschawを結び営業が開始された。1909年には、Moskauまで延長されたようである。
また別に「Transsibirien-Express」名で1898年からMoskau - Irkutuk、1914年にはUladiwostokまで延長。「NORD-EXPRESS」と合わせれば、世界最長距離を走る列車であった。1902年当時は、Paris - Wladiwostok間が23日も必要であったという。1903年に満州鉄道の開通により、所要時間の短縮が図られたというが、Paris - Peking間の所要時間は24日も必要であった。(Wladiwostok - Pekingには複数回の乗り換えが必要とのこと)

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更に、この本に掲載されている1909年のパンフレットには、モスクワのクレムリンの絵と富士山を遠くに望んだ桜が満開の日本の絵が描かれているのである。更には、別の1909年パンフレットには、Paris - Japon(Tsuruga/敦賀)間が13日でFr.1262,65と印刷されているのである。つまり、CIWL社のサービスは、国際航空路線の無い当時日本への旅程を組んでいたのである。当時の国鉄でも東京から下関、釜山、ハルビン経由でヨーロッパまでの路線が確立してあったと聞いているが、CIWLはWladiwostokまで鉄道(しかもパリ/モスクワから直通)で、そこから敦賀港までは船を使って日本へのルートを持っていたことになる。敦賀からは国鉄になるのだが、神戸や東京迄、これら船便に合わせて列車便があったのか興味深いところである。

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▲ 細密なパイピングや後付けの金属製パーツが取り付けられた純白のダブルルーフ。

また、中国東方鉄道旅行社のパルピン支店の切符手配の広告パンフレットには、「Trans-Siberian Express」のCIWL車両の絵が描かれて(車体中央のマークは何故か異なる)おり、この旅行会社の各都市支店の住所はまた興味深い。例えば、当時の大連支店の住所は山形通り110番とあり、その他満州時代の各都市には日本の地名が通り名となっていたようである。ところが、このパンフレットに描かれている満州鉄道の列車(Transmandschurien de Luxe)は、結局1度も走らなかったそうであるが...。(満州鉄道では当時ハルビン-大連間に国際連絡急行列車がプルマン1等車の編成で走っていたという記録はある)

この資料から理解出来た事は、CIWL社はヨーロッパだけでなくアジアまで勢力を伸ばしてきた世界的グローバル企業であること。また、いわゆる日本でも有名なパリからコンスタンチノープルへ走っていた「Orient Express」は、日本とはあまり関係なく、メルクリン/TRIXで模型化された「NORD-EXPRESS」こそ日本を目的地の一つに入れた列車であったことである。そう言う意味でもこのメルクリンのCIWL客車セットは実に興味深いのである。
これらは、当時の世界情勢とも無関係ではなかったであろうし、敢えて誤解を恐れずに記せば、先の大戦の結果如何によっては、CIWLの車両が日本で走っていたかも知れない。

そこで、先日のブログでも記したJRでの新しい寝台列車を実現させるなら、いっその事寝台と供食のサービスをAccorグループのCIWLに任せてみるというのは面白い試みかも知れない。JRにはない歴史に基づいた多くの列車サービスのノウハウを持ち合わせているに違いないからである。

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コメント 6

東西急行

Akira様、東西急行です。
未知?なるMinitrix版寝台車が此の型ならば大勝利です。
御紹介下さいました各列車
”NORD-EXPRESS”
”Trans-Siberian Express”
”Transmandschurien de Luxe(未運行なのが惜しい)”
朝鮮~南満州鉄道の釜山~チタ間優等車
省鉄特別急行第一、第二列車(後年の冨士)
を乗り継ぎに乗り継ぐことで、東京~巴里(倫敦も)間を
鉄路で行ける時代は極短いながら有ったと私も聞いており
ます。
亦夢想の狭軌ワゴンリ”WLA-TypeFE(極東=Far-East
の略)”については妄想してもし切れぬ程です(省鉄イネ車
どころか御料車すら腰抜かす「目の劇毒」走る大伽藍…
薄緑色の連絡乗車券一つでユーラシア一跨ぎ…イイ)。
共産国家の勃興による主要路線の閉鎖、先次大戦後に
疲れた西欧諸国(ワゴンリのスポンサー組合)、東欧新興国
の角逐に植民地帯の小爆発、極め付けは絶頂的好況に我
を忘れ去り足を滑らせた我が国(優等列車も八八艦隊も消
滅…)…史実は何れもワゴンリに味方しませんでした。

by 東西急行 (2008-05-12 18:51) 

Akira

こんばんは、東西急行さん。

MINITRIXのCIWLモデルは期待して良いかもです。

1900年初頭?当時は、おそらく船で行くのが一般的だったのでしょうが、陸路(船+鉄道)の方が早かったのかも知れません。1930年代に日本に亡命してきた建築家ブルーノタウトもウラジオストック迄鉄道を使って敦賀まで船で着てそこから鉄道で神戸/大阪?までたどり着いたと思います。
当時の社会的背景は良くわかっていませんが、糸を紡ぐ様にCIWLが走った足跡を辿る事で、その時その地での出来事が理解出来るのはまた格別でもあります。

ところで、私はH0だけをしていますのでつい興味が今度の新製品であるCIWL客車(5両+2両)に行ってしますが、仕様が1921年となっており、TRIX H0モデルは「Orient-Express」名で、基本的に茶色(1両の寝台車と食堂車のみ茶/クリームのツートン)ですが、これも、今回紹介したモデルと同じ形式なのか非常に興味深いです。
というのも、このモデルはCIWL車体番号が彫り込んであるので、いつものようにメルクリン/TRIXで異なる番号だった場合、合計8種もの異なる車両番号をどう表現するのか興味は尽きないからです。
by Akira (2008-05-12 19:59) 

S.やくも

おりょ,TRXでOE出るんでしょうか?

RSSの件,当Blogで記事作りましたんで,見てやってください(汗)
by S.やくも (2008-05-16 23:00) 

Akira

やくもさん。
早速ブログを拝見しました。私はSafariなので少しばかり悩みましたが、無事登録できました。ありがとうございます。

ご質問の件ですが、メルクリンの公式サイトにはまだありませんが、ドイツの販売店サイトに告知されています。画像はまだですが...。

楽しみですね。
by Akira (2008-05-17 01:18) 

T-Zug

Akiraさんこんにちわ
バッファですが、大手では左右を区別していないのはメルクリン位ですよね。(実際は区別したりしなかったり)私としては05とか61の流線型の先頭のバッファが気になってしょうがりません。(特に両方とも球面は昔のLimaを思い出させていただけないと思う)3094なんかは(控え目に)ちゃんと区別してあったと思うのですが・・・
by T-Zug (2008-07-19 15:58) 

Akira

そうでしたか。メルクリンもようやくそのあたりを気にするようになってきたと歓迎しましょう。
by Akira (2008-07-19 16:58) 

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