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3371 ICE-V (1) 410 002 / DB Ep.IV [Maerklin-Triebwagen]

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少し前に紹介したBerlinの交通博物館で偶然出会ったICE-Vであるが、メルクリンからはデジタルが世に発表された時と同じにモデルもリリースされていて、もちろん私もそのICE-Vには「鉄道ファン」誌で紹介されていた当初からどうしても欲しいモデルの1つであったのである。
今回より数回に分けて、このICE-Vモデルの紹介をしたいと思う。第1回目は、先頭機関車410 002である。

当時DBも超高速列車の営業運転を目指し、NBS(高速新線)を整備し、そこを走る専用の旅客列車であるInterCityを使って南北ドイツを結ぶ路線を計画。そしてその専用列車である最初の試験車をInterCity Experimental(通称ICE-V)をNeumeister Designがエキステリアとインテリアのデザインを行ったのである。
この列車が完成した当初は私は既に大学生だったであろうか。インダストリアルデザイナーを志し将来は自動車か家電かで迷っていた時期だと思う。鉄道はデザインなんて必要とされていないのではないかと感じていた。しかし、この車両を写真で見た時の驚きは言い表しようのないものであったのは確かである。本当に洗練された美しいデザインであると感じたし、技術的にも先進的であった。何より、乗ってみたいと心から感じられるデザインであり、更には鉄道車両に優れたデザインが必要であることを痛感したのがこの車両の登場であった。

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▲ 素晴らしいモデルであるのだが、残念なことの一つが正面の上部1灯の前照灯である。導光透明樹脂が実車より少し下側にレイアウトされてしまっている。

その後1990年6月のICE運用開始迄、試験の他ドイツ各地を巡ってお披露目をしたり、また、ソ連のゴルバチョフ元総書記が訪独した時には、コール元西ドイツ首相と一緒にこの列車に試乗するなど、後の東西ドイツ統合やロシアのVelaro導入にもこのICE-Vは大きな役割を果たしたと考えるのである。

実際、この410形は、Fulda - WuerzburgのNBSでの高速試験で406.9Km/hという世界最高速度記録を樹立し、その当時のドイツ最高の鉄道技術のポテンシャルを発揮したものと言えよう。

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▲DBでは、初めての試みと言われた運転室横窓のダミーが見える。尖っている部分は実車ではガラスが被せられ、モデルでは塗装のみ。実車では造形を理由にした窓のダミーなどそれまでは考えられなかったと言われている。

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さて、そのモデルであるが、メルクリンからは5両編成のうち両先頭機関車と中間車2両を含んだ4両編成のセットをアナログ(3371)とデジタル(3671)でリリース。中間車(4171)1両は単品でリリースされた。特にデジタルモデルは、メルクリンデジタルが始まって初期の1986年にリリースされたので、DBが新しい鉄道時代の象徴と位置づけたのと同様、メルクリンにとっても新しい制御システムであるデジタルの象徴的なモデルとして取り上げられたのである。
もっとも当時の私は、そのデジタルが何なのか?魅力も理解出来ずにいたし、価格も今とは比べ物にならないほどの開きがあったため、特に興味も持てなかったのである。

時は変わって、私がドイツの大学に入学して2年目である1990年、当時ミュンヘンにあったBZA Muenchen内のDesign Centerで念願のインターンシップを行うことになり、数ヶ月間Muenchen暮らしをしている時、日本から旅行に来た知人(それもメルクリンの1番ゲージの買い物のため)を数日案内することになった。そして最後の日に、お礼として「欲しいメルクリンをどうぞ」と言われ迷わず選んだのが、このICE-Vであったのである。(何と厚かましい!)

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▲ 試験車両であるが故にドイツの鉄道製造メーカーの総力が結集されている証がここに記されている。ICEロゴの下には電装メーカー3社(左側)と車体製造メーカー3社(右側)の社名が印刷されている。

それが今回紹介する3371であるが、当時既に3671は生産完了し、3371が若干仕様を変更して店頭に並んでいたもので、大きな違いは先頭車の前頭部横DBマークの下に鉄道デザイン賞であるブルネル賞のワッペンが印刷されていることぐらいであろうか。

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ICE-Vの大きな特徴の一つであるのが、上画像の全断面幌である。メルクリンモデルは、何とこの幌を実車同様可動式の設計とし、我々を驚かせたのである。まず、先頭機関車410 002には幌付きとし、連結する隣の車両は、幌なしを連結する。上画像下は、その幌を外したところである。連結器は数極ある導電プラグとソケットを兼ねたもので、差し込むだけで連結可能である。実車では両車端に幌があり平面部で連結されるのだが、モデルでは両車両分を片側に付けている。連結すれば実車と同じ機能(動き)と形状を楽しめるのである。

結局残念ながら量産車のICE1以降は、この画期的な幌付き連結器もコストの関係で実現されずに終わったが、モデルでも同様の機能が見れたのはメルクリンモデルだけであったと思う。

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屋上に目をやると、ワンアームのパンタグラフがあるが、おそらく当時の最新型機関車であった120.0形と同様であったと思う。

To be Continued....
タグ:DB Ep.IV ICE
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HUH

Spielkiste登場以来、待ちに待ったモデルの登場ですね。Akiraさんに初めてお会いした時、ICEシリーズはフライシュマンの方が良いと思うけど、ICE-Vだけはメルクリン!、とAkiraさんが仰っていたことを思い出します。

あの新鮮なエクステリアデザインを実によく再現した製品だと思いますが、やはり見せ場は連結部分ですね、一度走っているものを拝見したいものです。いつか、運転会でICEそろい踏みをしたいものですね。
by HUH (2009-04-08 00:37) 

N

お久しぶりです。全段面幌を詳しく見せて頂きまして、ありがとうございます。発売当時は、新幹線の従兄弟くらいにしか思っていなかったのですが、あらためて見せて頂くと、なめらかな造形の中に多極接点が並んでいる所なんか、メカっぽいもの好きとしてはたまりません。果敢な性能を持ちながら、なんかかわいいですね。イタリアのペンドリーノなんかががイメージを形にしたように見えるのに対して、これは性能を形にしたように見えます。そうした中で、ダミーの窓でデザインの要所を押さえているところにドイツらしい緻密さを感じます。
by N (2009-04-08 00:50) 

Akira

コメントありがとうございます。

> HUHさん
当時は確かにFLMは頑張っていましたが、ICE3MFなどメルクリンモデルも大健闘ですね。私が欲しいのはICE-T(D)ですが、HUHさんの紹介でICE3が欲しくなっている自分に気がついております。

> Nさん
ようやくICE-Vの連結部分をお見せ出来て良かったです。今思えば、このモデルの設計も随分と新しい試みがされていますし、全断面幌の再現については、よくぞここまでと感嘆しました。やはり当時のメルクリン設計陣のICEに対する意気込みというのがモデルを通して伝わってきます。
逆にRAeの連結面などは、そのモチベーションの違いが明確に現れているようで....。
車体内外のデザインに関して言えば、このNeumeisterのデザインは、世界の鉄道車両に多かれ少なかれ影響を及ぼしていることがわかります。先鋭的なTGVのデザインなどよりおっとりした姿でありながら、充分な性能を引き出しているのは素晴らしいことです。
一方でICE1やICE2では関われなかったNeumeisterのデザインですが、ICE3/-T(D)で再び開花という流れはある意味必然なのかも知れません。
by Akira (2009-04-08 07:57) 

T-Zug

Akiraさんおはようございます、T-Zugです。
ブルネル賞のICE-Vよいですね!3371は3053登場時のようなメルクリン社の気迫が感じられますね。そういえば3053登場時のカタログにドイツ連邦鉄道との特別(良好)な関係により資料提供を受けられるので良いモデルが作れる云々と言ったことが書いてあったように記憶してますが、まさに3371もそう言う事なのでしょうね。中央の前照灯は私も残念に思いました。ICE-Vは当時「CAR STYLING」でも特集をしていたので、思わず買ってしまいました。特にインテリアに強い衝撃を覚えたのを記憶しています。特集といえばMIBAなども特集していましたね。当時、目黒の薮田さんはモータがFaulhaberだったので、ディジタルは直流では?などと言っていたのも思い出します。
by T-Zug (2009-04-12 10:27) 

Akira

おはようございます、T-Zugさん。

ICE-Vの登場は実車でもモデルでも、新しい西ドイツの鉄道(模型)を象徴する出来事でしたから、いやが上にも盛り上がっていたのでしょうね。メルクリンとDB(AG)の特別な関係については、良くわからない部分もありますが、DBAGになって大株主向け?の特別モデルなどはメルクリンですね。モデルがあると色々な意味で便利ですからDBにもメリットがありますし、メルクリンにとっては良い関係でなければならないでしょうね。未だDBなどでは基本的に模型化承認など不要ですから、そのあたりも会社間の良好な関係の証左でもありましょう。

CAR STYLINGには、私も学生時代から愛読しておりまして、多分持っていると思います。(最近は買っていません...)
ICE-Vについては様々な本が出ていますが、デザイン面からのアプローチの本は、(Design Center Stuttgartでの)Neumeister Designの展覧会の時の冊子を持っています。ここでもいずれ紹介できればと考えています。

モデルのモーターに付いては、確かにFaulhaberのようで、DCMが当たり前の当時としては、画期的であったのかも知れません。それも5両編成で2モーターなど贅沢な作りです。私は電気に明るくないですが、モーターが直流動作であったなら、2線式のHAMOや直流3線式などのバリエーションも組みやすかったのでしょう。
薮田さんのお店については、名前だけは知っていますが、当時は渋谷と銀座のみしか顔を出さなかったので1度は覗いてみたかったです。
by Akira (2009-04-12 10:48) 

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