SSブログ

Unter STROM [欧州鉄道]

b12522.jpg

私の手元にもまだ届いていない「週刊 東洋経済」誌であるが、今回カールスルーエの路面電車記事を執筆するにあたって、単に私がカールスルーエに住んでいたという体験からくる思い出話に終始するわけにはいかず、カールスルーエ市交通局(KVV)のウエブサイトの記事などを参考にした他に、以前購入していた画像の本が今回とても役に立ったので紹介したいと思う。

これはカールスルーエの市政資料として発刊されている本の中の1冊で20巻目にあたるもの。タイトルが「Unter STROM」(電気[架線?]の下)である。なにやらカールスルーエからさほど離れていない街Calwで生を受けた有名な作家の代表作品のタイトルに似ていなくもないが、関連づけたかどうかは知る由もない。
副題に「Geschichte des oeffentlichen Nahverkehrs in Karlsruhe」(カールスルーエの近距離公共交通の歴史)とあるので、まさにカールスルーエ市の公共交通の歴史全てが記されていると理解出来るものである。これが発刊されたのは2000年。私は既に帰国していたのでネットの通販で手に入れたと憶えている。

b12523.jpg
b12525.jpg

この本自体は市政資料としての役割を果たすものだけあって写真豊富な趣味誌のような趣はなく、文字が沢山並ぶもの。しかし、適度に写真も挿入されており、ある程度のドイツ語読解能力があれば楽しく読める本でもある。(もちろん内容に興味があればの話であるが...)
表紙裏と背表紙裏には、カールスルーエの歴代路面電車の車両の側面イラストが華を添えて中々楽しい。(と、同時に好き者には全てのカールスルーエの車両がこれだけで理解出来るので実に勉強になる..)
但し、技術書ではないため、車両についての詳細な情報は全く記されていないので、そのような期待は裏切られるので注意が必要。

b12524.jpg

今回の拙著の文面にカールスルーエモデルの最初の試みの一つとして1958年に郊外に延びる私鉄のAlbtalbahnの乗り入れについて記したのだが、この路線は電化はされていたものの、狭軌路線だったため長らく乗り入れができなかったのである。上画像は、乗り入れ工事もたけなわのKarlsruhe Hbf脇にあるAlbtalbahnhofの様子である。画像の蒸気機関車列車はお別れ列車のため敢えて蒸気機関車の列車を仕立てたものと考えられるが、乗り入れまではこの駅で多くの利用者が市内線との乗換えをしなけらばならなかったのである。

b1sl58photo2.jpg
▲ Albtalbahnを走る動態保存のBR58 311/UEF牽引のニコラウス列車

逆に現在では、AlbtalbahnのEttlingen Stadt BfでDB路線と線路が接続しているので、動態保存の蒸気機関車列車がAlbtalbahnの終点であるBad Herrenalb迄走ったりもする。そう言えば、Ettlingen Stadtの留置線で休んでいたUEF(Ulmer Eisenahnfreunde e.V.)のBR 01 066を撮影しに来たことを憶えている。また毎年クリスマス前のアドヴェント期間にニコラウス列車としてUEFのBR58牽引の列車がこの路線を走る。

b16-Albtalbf.jpg

上画像は、同じAlbtalbahnhofの私が居た20年程前のものである。駅舎もモダンなドーム型で、この駅を始発/終点とする列車も僅かであり、ほとんどが直通車両のため、乗降客は少ない。ちなみにここの駅からは専用軌道を走るため、警笛も「チリリン♪」からタイフォンの音となる。最高時速は80Km/h。

b11-KA_GT6-D.jpg

私の住んでいたSachsenstrasseからほど近い場所を走る旧型の車両(GT8-D)。この路線だけは最後迄新しい車両に変わる事がなかったが、今は路線変更もあって車両も含めて随分と変わったと思う。

Amazonドイツには、中古が少し残っているようなので、以下にリンクを記した。本書は路面電車が主であるものの、カールスルーエ市の公共交通機関について記された本なので、市内のバスの変遷やDurlachのケーブルカーについても詳細に記されている。

LRT研究者はもちろん、カールスルーエの路面電車に興味のある好き者には良書としてお薦めできるものである。




タグ:Buecher KVV LRT
nice!(4)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 3

460

Akiraさん、こんばんは。

東洋経済の記事読ませて頂きました。
日本のLRTはまだまだ問題が多い様ですね。
京都市も昔は市電が走っていました。
今はバスかタクシーがほとんどです。
海外からの観光客も多い街ですし、
京都議定書を率先していく為にも、
京都にこそLRTが必要ではと思うの次第です。

by 460 (2010-03-30 21:48) 

Akira

こんにちは、460さん。

お読み頂きありがとうございます。東洋経済では、どうも富山以来LRTの進捗が滞っているという印象ですね。このあたりは、政治的な問題も絡んでいるので何とも言えないのですが、どこの街も政争の具としてしか利用されないLRTにちょっと残念な気もしています。おっしゃるように京都には路面電車が似合うと思います。以前私の大学の授業で京都市電に挑戦した学生も居ました。ただ、あれだけ歴史のある街に似合う路面電車というのは、学生にとってデザインする上では中々難しいようでした。

そう言えば、昔京都に行った時、京都駅でバスに乗りたかったのですが、全くオリエンテーリング出来ずに諦めた憶えがあります。
京都が国際観光都市として愛される路面電車があればきっと今以上に素晴らしい観光地になるでしょうね。(京阪京津線は好きですし)
by Akira (2010-03-31 22:09) 

Akira

そう言えば、東洋経済の編集の方が今日ラジオ日本の「A列車で行こう」という番組に出演されて何か裏話をされたようですが、お聴きになった方いらっしゃいます?
by Akira (2010-03-31 22:13) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0