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第2回 鉄道技術展 [日本の鉄道]

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朝から冷たい雨が降る中、幕張メッセに出掛けた。今日迄行われていた「鉄道技術展」を見るためである。昨年から始まった「鉄道」に特化した展示会であり、国内はもとより海外メーカーの参加もあるので楽しみである。出展数は昨年より増え、鉄道技術の裾野の広さとこの分野への感心の高さは目を見張るものがある。

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▲ 会場にひしめく各社ブースの中にフランスとオーストリアのブースが目立つ

会場ホール入口から全体を見回すと、多くのブースが出展しているが、フランスとオーストリアは国を挙げて共同ブースを形成している。フランスのALSTOMブースでAGVのパンフレットが欲しいと頼んだら、AGVのみのパンフは用意していないので総合パンフレットのみ頂戴した。ドイツは、各社独立したブースを立てていたのが、日本での国によっての違いが見える部分でもある。ただ、SIEMENSやボンバルディアなどの車両メーカーの出展がないのはちょっと残念でもある。

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残念なのは、この展示会のメインブースになるべき車両メーカーが川崎重工と近畿車両に留まっていることである。小さいながらもフランスのアルストームが出展しているのに対して、東急車両や日本車輌、日立製作所などの主要メーカーの出展がないのは、様々な事情があるとは思うが理解に苦しむところである。

上画像は、川崎重工の燃料電池式LRTモデルである。架線レスではなくハイブリッドで、回生機能もあるという。他に海外向け新幹線モデル(昨年と同じ)やE5系のグランクラスシート、またお年寄りや身体の不自由な人向けのアシスト機能付きシートのスタディなど、きめの細かいアイデアもある興味深い展示であった。

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今回のサプライズ?とも言えるのは近畿車両である。このデザイン重視とも言える車両のモデルは、一見LRTのようなイメージであるが、バッテリー駆動主体の電気式気動車である。天井には太陽光パネルを付け、エアコン室外機やエンジン排気口も含めてインテグレートされた屋根周りの造形は理想的である。

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一方、駅構内のアイテムは様々なアイデアが展示されていて充実度はこちらの方が上かも知れない。例えば、画像の機器は、沖電気のブースにあった切符売場に置く事を設定した乗換え案内サービスを提供するタッチパネル式の機器である。4カ国語対応でタッチパネルスクリーンを使って目的地で検索すると、時間や料金の異なる乗換え案内を示してくれる。プリントアウトも可能で、このようなサービスは歓迎されるに違いない。ただ、ドイツでは既に切符を購入する時点で乗換え案内はプリントアウトしてくれるので、特に目新しいアイデアとは言い難い。これは携帯電話やスマートフォンでの乗換案内を利用出来ない人や、外国人などには重宝されると思う。

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海外メーカーでモデルを展示していたのは、ドイツのVossloh社である。ここは各種レールの設置技術やレール削取機車両などのメーカーで、モデルはその車両のモデルである。なんとレールを削りながら80Km/hのスピードで作業をするとか?作業の様子を見てみたいと思うのだが、このモデルの前頭部のデザインは衝撃的である。と言うのは、特に前頭部は曲面を使ったりせず凝った造形をしている訳ではないが、存在感のある造形である。そして美しさも兼ね備えているところが良い。

この他にも、興味深い素材を展示しているメーカーも少なからずあったが、画像がないのでこのくらいにしておく。

午後から「路面軌道事業者の新技術への取り組みについて」という講演を聴講したので、あまり長く展示を見て回れないという事情もあったが、昨年同様訪れて良かったと思える展示会であった。講演は、LRTで話題の富山市と新しい路面電車導入に積極的な熊本市交通局の講演があり、興味深く拝聴させて頂いた。欧州のLRTに学んで追いつきたいという思いはどこも同じであるが、技術以外の部分でまだまだ高い壁が立ちはだかっていると深く感じた講演でもあった。それは世界に誇れる技術を持っているだけに尚更である。

2年おきになる次回の「第3回 鉄道技術展」は、同様に2年おきに開催されるドイツ・ベルリンの「イノトランス」に合わせる形で、来年はイノトランス、再来年は鉄道技術展ということらしい。
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コメント 7

武田

はじめまして、武田と申します。鉄道ファンです。
以前、書店でたまたま「鉄道デザインEX(02)」を見かけ、鉄道デザインの専門誌があることに驚いたのですが、近畿車輛のデザインに以前から関心(外部デザイナーも起用されているようですが、造形的に優れたものがある)があり、購入して大変興味深く読みました。その後、鉄道デザインEXで検索して貴殿のブログを知り、鉄道デザイン(憧れの職業です)に携わっておられること、鉄道デザインEX誌に執筆されていること、カースタイリング誌(休刊は残念です)に作品が掲載されたことがあることを知りました。それ以来、時々貴ブログを訪れ、記事を楽しんで読ませて頂いています。
近畿車輛がモデルとは言え、バッテリー駆動主体の電気式気動車を出品ですか。内外の大メーカーに伍して引けを取らない頑張りですね。バッテリー駆動に力を入れているとは言え、まさにサプライズです。デザインも、とてもチャーミング。本当に、このようなデザインで登場してほしいな、と思います。
by 武田 (2011-11-12 21:10) 

autounion

こんばんは♪

この鉄道技術展、勤め先の人が何人か行ってきたみたいです。勤め先は軌道工事もしているだけに、軌道工事担当者になればこういうイベントにはけっこう行くのですが、僕は事務屋だから全然誘われないのが悲しい(涙)
by autounion (2011-11-12 22:37) 

Akira

武田さん、Spielkisteへようこそ。

稚拙な文章ですが、鉄道デザインExをお読み頂きありがとうございます。近畿車輛の電気式気動車デザインは、若手のデザイナーがした仕事とのことです。あくまでスタディではありますが、色々と将来を示唆するものが感じられますね。
今後ともよろしくお願いいたします。
by Akira (2011-11-12 22:40) 

Akira

こんばんは、autounionさん。

この鉄道技術展は、確かに業界向けの専門色の濃い展示会ですが、昨年の第1回に比べて、必ずしもスーツ姿だけではなくなって来ていることを実感しました。名刺は必要ですが、事前登録すれば無料で入場できますし、色々な意味で勉強になる展示会です。
by Akira (2011-11-12 22:44) 

Y.H

Akiraさん、こんばんは。

興味深く拝見しております。
鉄道に興味がある向きには、どこかに必ずつぼがあるような展示会ですね。

LRTについては、東京にも欲しいとは思うのですが、本当は被災地の街づくりに導入できたら…と思っています。一度元通りになると、難しいと思いますので。

それと、模型好きの目からは、特殊車両の存在感が…そそられます。
ギミックもいろいろ組み込めるようになり、これからそちらの模型のマニアなるものも生まれてきそうな気がします。
by Y.H (2011-11-13 23:02) 

総統

こんばんは

マルチプルタイタンパー等の特殊車両って、今はやはり欧州メーカーに頼らざるをえない状況でありまして・・


T急車輛は、鉄道車両部門はJR東に買収されちゃったので、それどころではない・・というのが本音かと思います(まぁ、ウチの線の車体は、大元は新潟鉄工製のものをT急車輌で組み立てただけのものです)


てか、軌道線を担当している当職場、多分(小生を含め)誰も第2回 鉄道技術展を知らなかったのが・・


次回は是非参加したい所存です


その際、よろしければご連絡いただければ幸いです
by 総統 (2011-11-14 00:11) 

Akira

おはようございます。コメントありがとうございます。

> Y.Hさん
本音を言えば、LRTは大都市より中心市街地空洞化に喘ぐ地方都市を優先して欲しいのですが、まだまだ色々な問題があるようです。何より市民のコンセンサスが必要なことを改めて痛感しました。東北の被災地については、現在不通となっていて、新たに施設しなければならない路線はLRT化が一つの選択肢だと思います。

特殊車両好きにはこの展示会はたまらないかも知れませんね。ドイツではViessman/KibriがH0で製品化していたかと...。

> 総統さん。
マルタイと言えばスペインのメーカーが有名ですが、ブログで紹介したVossloh社のはレールを施設マシンではなく削るマシンのようです。このメーカーは、軌道そのものを製造しているので、メンテナンス機と一体で開発出来る強みがあります。路面電車用の制振ゴム付き軌道は、ここのものが日本でも多く使われているようです。

そう言えば、T急社のネームプレートを付けた方も会場で散見されました。(まあ、大きなグループ会社なので組織や部署は様々でしょうが...)

by Akira (2011-11-14 09:17) 

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