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流線形の鉄道展 [日本の鉄道]

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昨日、旧新橋停車場で開催中の企画展「流線形の鉄道」を観てきました。ここでは、前回黒岩保美の展示会を観て以来です。
残念ながら、内部の撮影は禁止でしたので、展示内容の画像はありませんが、テーマは興味深く文章だけでお伝えできる自信もありませんが、少しばかり紹介したいと思います。

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上画像はこの企画展のフライヤーです。

1920年代から30年代に掛けて、鉄道は長距離輸送の大部分を担う中、技術の向上も目覚ましく、次々に速度記録や到達時間の短縮を目指して世界で凌ぎを削っていました。例えばドイツではハンブルクとベルリンを結ぶ気動車SVT877 "Fliegender Hamburger"やBR 05が世界最速の記録を打ち出し、これに対抗する形でイギリスがマラード号がその記録を追い抜くなど、技術革新による競争の激化を生んでいます。一方米国では、大陸間の輸送がまだまだ航空機輸送が普及していなかったため、蒸気機関車牽引による輸送が主で、複数の民間鉄道会社による競争が激化していた時代です。利用者には速く、そして満足のゆくサービスが求められていました。

日本でも有名なデザイナーであるレーモンド・ローウイなどが手がける流線形のデザインは、その速さを視覚的にも顧客に対して魅了させる力があることに気づき、瞬く間に流線形はブームになります。
また、そうした世界の動きに合わせて戦前の日本も流線形機関車の造形を試みます。それがC53やC55であり、またEF55でもありました。満鉄のパシナ、関西では流電と言われるモハ52形からもその影響が見て取れます。

こうして生まれた数々の流線形機関車や電車、気動車にスポットを当てた展示が今回の企画展です。

展示は、その流線形が登場した背景や経緯の解説を時系列で文章によってパネル展示しています。また、そこで登場した車両のモデルを多数展示し、当時の世界の鉄道事情にリアリティを持たせる努力は伺えます。
また、レンダリング(スケッチ)によって当時の機関車をパネルに合わせて表現されて華を添えています。

私個人は大学授業でインダストリアルデザイン史を行う中で、米国のミドセンチュリーと言われる流線形華やかりし頃の紹介は外すわけにはゆきません。この時代についての授業は既に前期で終了しているので残念ながら学生を連れて観にくることは出来ませんが、私がスライドショーを駆使して解説するよりもこの展示を体感する方が胸に刻まれるはずです。
鉄道だけではなく、Norman Bel Geddes デザインの航空機や船舶、自動車のモデルの展示には、ちょっと驚きました。

展示室スペースに限りがあるので、多くの展示が出来ないのは理解できますが、欲をいえばもう少し深掘りが欲しかった..ということも感じたことの1つです。米国の流線形については、十分とは言えないまでもツボは押さていたことは確かだと思いますが、欧州に関していえば、ドイツと英国が少し、それ以外は無視されている状況でした。特にラテン諸国のベルギー、スペインなど流線形に意欲的な車両には何も触れられておりませんでした。

今回の展示で特に気になったことは、模型の展示です。H0はもちろん、0ゲージ、1番ゲージのモデルも少なからず展示されていて写真以上にリアリティを感じられたことです。(ニュルンベルグのDB Museumのような1/10モデル展示があればなお良いですが..)

モデルの大部分の所有者のクレジットに「小野直宣氏所蔵」とあることに気づきました。試しに彼の名前で検索してみると、なんとデザイナーでメルクリンコレクターでもあるようです。
これらのモデルを見るだけでも、観にゆく価値は十分..と感じました。

以下に彼の自宅(仕事場?)の写真の出ているウエブページを見つけましたのでリンクしておきます。
小野直宣 / オトナが語る大人未来のメディアサイト

会期は10/14までです。入場は無料。

参考サイト:
第51回企画展 流線形の鉄道 1930年代を牽引した機関車たち / 鉄道史料展示室
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コメント 5

seidoh

Akiraさん
楽しい企画のご紹介、ありがとうございます。工学的な実効性はさておき、往時の流線形車両には独特の味わいがあったと思います。流行に乗ってローカル軌道にも登場したそれらなどは、正直、手作りのゲテモノ的だったりして。
ちなみに、米国の流線形といえば、私はペンシルヴェニアのGG1が一押しです。
by seidoh (2019-09-27 21:44) 

Akira

こんにちは、seidohさん。

私も同感です。なので世界の流線型の造形比較が鮮明にされていれば尚良かったように思いました。
SNCBの流線形機関車など、妖艶で官能的な造形に私はゾクゾクしてしまうのでとても興味深いのですが、この企画展ではスルーされていました。

PRRのGG-1は1番だったかのモデルが展示されていました。この機関車、実はプロトタイプはレーモンド・ローウィが関わらない設計者だけの造形でしたが、彼はそのプロトタイプのリベットを隠し、空気孔を5本のラインで見えにくくして視覚的に一体感を出すことに成功したのですよね。でもきっとハダカにしたら区別はつかないかも知れません。プロトタイプも流線形のスタイリングでした。
by Akira (2019-09-27 22:17) 

seidoh

おはようございます。

仰る通り、GG-1の流麗な姿は、あの5本のラインあってこそ、という気がします。ペンセントラルになって以降の「べた塗り」写真を見ると、同じ機関車と思えないほどです。
でも、あの堂々とした体躯は、これぞアメリカン・ロコという魅力がたっぷりですね。
by seidoh (2019-09-28 10:21) 

KDB

お早うございます。
流線形の蒸気機関車は結構あちこちにあり、ご指摘のあったベルギー、スペインのほか、フランスは無論、イタリア、旧ソ連、ハンガリー、旧ユーゴなどにも面白いデザインが見られます。それらをまとめた資料があったら見たいところです。
GG-1の5本線のデザイン、初めて訳を知りました。なるほどーーです。古い「鉄道模型趣味」誌に、DD50が登場したころの話があり、「レイモンド・ローウィにあこがれていたファンをがっかりさせた。国鉄の車両は野暮だ。インダストリアル・デザイナーの意見位聞いたらどうだ」と外観デザインがひどくけなされていました(一時型の「海坊主」と言あだ名された機関車)。その後、だいぶ国鉄も変わりましたがーーーー。
by KDB (2019-09-28 11:37) 

Akira

こんにちは、

> seidohさん
やはり米国の機関車の最大の魅力はBigboyに代表されるあのダイナミックなデカさですよね。しかも無駄にデカい訳ではなく、周囲の環境と調和した中での造形というのは流線形機関車も変わりません。この機関車を、欧州で見ても野暮ったく見えるでしょうね。

> KDBさん
そうですよね。最初この企画展を知った時、米国以上に欧州各国の流線形機関車の紹介を楽しみにしていましたが、ミドセンチュリー時代の米国機関車が主だったのは...仕方ないところでしょうか。
次回があるならそれに期待です。

DD50のデザインについては、国鉄らしいというか、極めて真面目な造形ですね。EF58のようなすらりとしたボディであるならスマートな流線形ボディになったでしょうけども。そういえば、EF58が流線形ボディを纏った姿になった1952年は、ドイツの最新型機関車がE10の試作機で酷いデザインでした。唯一優れていたのは前輪台車がなくなったことくらいで、絵心すらない設計者だけのエゴで作ったような造形でした。そのE10がBuehgelfaltenのE10.3に昇華した造形はEF58にリスペクトをされたような姿になっているのがちょっと気になっています。
by Akira (2019-09-28 14:30) 

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