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Rivarossi 3511 CIWL 4008 VR / Ep.IIIa [欧州鉄道模型]

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▲ 厨房部廊下側 紺色一色の食堂車ながら窓の大きさと間隔でプルマン客車の優雅さを垣間見れます

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▲ 厨房側

初めてメルクリン以外の鉄道模型の紹介です。これは、イタリアRivarossi社のオリエント急行で有名な車輌運行会社Wagon-Lits社(CIWL/ISG)の食堂車(VR/WR)4008のモデルです。私は基本的にドイツ中心に模型を集めているのです(そうしないと収拾がつかなくなるため)が、なかなかそうも言っていられない場合もあります。ドイツは中央ヨーロッパに位置する地理的な条件から、ドイツ以外の国際列車の運行も多く、またドイツ以外の車輌が併結されることも少なくないためです。そこがヨーロッパの鉄道の面白さでもあるのですが、中々複雑で把握もむずかしい。昨今は、ICEやTGVなど固定編成の優等列車も増えつつあり、外国の車輌が混ざることも少なくなってきていますが、まだまだ客車列車、特に夜行列車では見ることができます。

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▲ 上部角にRの掛かった側窓は"Flèche d'Or"プルマン客車の特徴

さて、このモデルの実車(4008)は1926年に登場したParis - Calaisを結ぶ豪華列車向けに製造された「Flèche d'Or」(フレッシュ・ドール)と呼ばれる厨房付き(WPC)2等プルマンカー(開放室で供食設備を合わせ持つサロンカーのようなもの)であったのですが、1932年に1等「Côte d' Azur」(コート・ダジュール)プルマンカーが登場し、このFlèche d'Orプルマンは食堂車などに改造されました。終戦直後から暫くは、第2次大戦敗戦国であった西ドイツでは、国際列車の自国による食堂営業が許されませんでした。そこで、西ドイツの国際列車の食堂車にはベルギーに本社を置くCIWLの「Flèche d'Or」プルマンカーを改造した食堂車を連結。同社により一定期間運用されました。そしてこの国際列車はDB(ドイツ連邦鉄道)の看板列車"Rheingold(-Express)"と"Loreley-Express"になります。細かく言えばこのCIWL食堂車は1951年に"Rheingold-Express"は営業を開始し、1953年から"Loreley-Express"も加わり、ドイツの国際列車食堂車運用と営業が許された1955年まで続いたとのことです。

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▲ 車体中央に掲げられているCIWL客車の証である向かい獅子のマーク。紋章の下部、台枠に小さな文字で表記された文字"Nonble de Places"は、座席数の意です。

その改造された食堂車モデルです。御存じのようにRivarossi社は現在Hornby社に吸収され、このモデルも絶版です。どのくらいの期間リリースされていたのかも未確認ですが、このモデル自体はSimplon Orient ExpressやLe Train Bleuなどの有名列車のモデルでもないため、生産台数も決して多くはないと思います。それを裏付けるように私が1年間ドイツのオークションサイトにアンテナを張って探しても見つけることが出来ませんでした。しかし、何と国内の模型店に中古品として出ていた処を知人が発見し、教えてくれたお陰で手に入れることができました。

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RIVAROSSIのCIWL客車モデルの特徴的な1つに車端部分の貫通幌周りのディテールです。複雑な要素があるCIWL貫通路付近の様子は上手に表現されています。カプラーはメルクリンのKKKに交換しています。NEM規格のカプラーポケットのため、カプラーヘッドの交換のみでメルクリンモデルとの連結は問題ありません。

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俯瞰した画像です。蒸気機関車全盛時代のEp.IIIa時代にあって、汚れの付きやすい屋根部分やバッファなどを白色に塗装するなどCIWLの自社車両に対する誇りを感じるディテールです。戦争の傷跡が残るこの時代を走った実車が果たしてどこまでこの白色塗装を維持できたのかは確認しようもありませんが...。

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▲ アメリカのブリル系統のボギー台車でしょうか。台車は白色マーキングがされていません。

ここまで書けば分かると思いますが、私がせっせと集めているEp.IIIaのF-Zug "Rheingold"の正しい編成を実現させたく、この食堂車を探していたという訳です。昨年は、TRIXから当時の該当する客車であるSchürzenwagen各種がリリースされ手に入れることができました。これで1951年当時の編成がようやく叶った訳でなのですが....実は、細かくは違っていたことが後からわかりました。というのは、このCIWL食堂車が連結されていた1955年までは、TRIX客車の車体番号が違っていたらしいのです。でも、まぁ、ここまで細かく検証しなくても分かる人など稀でしょう...と自分を慰める事にしました。

話を再びこの食堂車モデルに移すと、やはり問題を散見します。Rivarossi社製のCIWL客車はその端正なプロポーションに定評があり、価格もそれなりにしますが、持っていて充分満足出来るものです。
しかし、上の画像でも分かる通り、メルクリン/TRIXのSchürzenwagenと連結させると、腰の高さの違いが歴然としてしまいます。メルクリンを贔屓している訳ではないですが、やはり腰高は頂けません。(メルクリンモデルが腰が低すぎるという話もあるようです)CIWL客車のみの編成ならば気が付かないのでしょうが、メーカーが違うとこのようなことになることもあることがわかりました。
とは言え、この客車そのものは確かに車内迄良く作り込まれていて素晴らしいです。今は手に入るかどうか確認できていませんが、純正の室内照明キットをつけてテーブルランプに明かりを灯してみたいと思っています。

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▲ 実車同様、窓の位置とテーブルの間隔が合っていないのはプルマンから食堂車に改造時の影響

この食堂車の室内装備ですが、外から見ると窓と椅子の位置が合っていません。これは、実車がプルマンカーから改造される時、定員を増やしたためで、模型でも忠実に再現されています。このあたりは、数多くのCIWLモデルをリリースしているRivarossi社ならではです。また、この食堂車が主にドイツで運用されるのを目的に改造された証と言えるのが窓上部の文字列で、通常CIWL客車はフランス語で"COMPAGNIE INTERNATIONALE DES WAGON-LITS ET DES GRANDS EXPRESS EUROPEENS"と記されているのに対し、このモデルは"INTERNATIONALE EISENBAHN SCHLAFWAGEN GESELLSCHAFT"とドイツ語表記です。
そして、この客車は2線式仕様ですが、Cレールで走らせても脱線もせず快調に走ったことはホッとしています。

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台枠の表記ですが、同形式モデルのないメルクリンH0モデルと比較するのは難しいです。RICラスター表記も確認できますが、下部切れていて解読不能です。

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▲ Ep.IIIa時代に撮影されたSchürzenwagenのF164 Rheingold列車がKöln Hbfのホームに停車しているカラー写真を良く趣味誌などで見かけますが、この写真には小さく車体の向かい獅子マークが確認できます。そのアングルと同じにしてみました。

CIWL社は同社の車輌を模型で製作販売するメーカーには、版権の承認が必要と聞いています。もともとメルクリンは歴史的にCIWL客車を多くはリリースしていません。そのような訳で残念ながら今後も新開発商品としてCIWL客車はメルクリンからリリースされる可能性は少ないでしょうが、ここ数年は、TRIX設計の木造CIWL客車をバージョン違いでリリースしたり、フランスの蒸気機関車を新開発モデルとしてH0や1番でリリースしたりと、少しフランス型モデルのリリースが続いているので、そろそろ...と鋼製CIWL客車の登場をEp.IIIa仕様のSchürzenwagen客車と共に期待したくなってきます。

[EDIT] 2020-08-17


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ZumeR

Akiraさん、こんにちは。早速遊びに参りました。これからも、貴ブログの益々のご発展をお祈りしております。
(私もブログを持っているのですが、鉄道関係とは全く異なる切り口の、超マニアックなブログなもんで 笑)

さて、リバロッシのワゴンリ客車ですが、やはり腰高なんでしょうかね?メルクリンではない、直流二線式のフルスケール客車とも合わないのでしょうか?昔はワゴンリを持っていたのですが、今は放出してしまって手元に無いので、調べられません…。
しかし実際、リバロッシの製品は相当古いですから、オーバースケールであることも考えられますね(当時の製品はオーバースケールのものが多かったですし)。
メーカーが違うと、確かに高さが合わない車両が出てくることはありますが、実車でも高さが違う車両はありますので、私の場合は脳内で納得させております(笑)。

逆に、他車とは高さが違うのが大きな特徴であったフランスのUSI型客車、L.S.Modelsの製品は背が高いらしく、塗装も含めて他車とピッタリ合って見事な編成美になってしまいます…。ある意味、間抜けです。

それでは。
by ZumeR (2006-09-14 12:44) 

Akira

ZumeRさん、ども〜。
稚拙なブログを読んで頂いてありがとうございます。ZumeRさんもブログをお持ちとか?やはり私は遅い出発だったのですね。
欧州鉄道と模型が主な話題のブログですが、今日のブログにもあるように、それ以外の話題も時折入れて一息つくこともします。Rivarossiの腰高には、私もちょっとびっくり...でした。美しい車体だけに残念です。原因は台車と車輪が異様に大きい?せいでしょうか。車体などはかなり正確なような気がしますし、カプラーポケットもNEM規格なので、メルクリンのカプラーに付け替えると、他のメルクリン車輌とぴったり合います。

私は他に他社のモデルを持っていないので、例えばROCOやFLMの客車と比べてどうなのかは分かりません。まぁ、私もどうすることも出来ないので脳内処理します...(^^;

もし、ZumeRさんがトリックスの新製品の282mm UIC-X/FS 3両セットを買ってみれば分かるかも?.....悪魔っぽい囁き..。
by Akira (2006-09-14 22:30) 

BOAC VC10

連夜の出没です。
来週末は山形、次にいつお邪魔できるかわからないもので、すみません。

さて、欧州型編成マニアにとって「悪魔の書」を見つけてしまいました。
仏La vie du rail から出ている「Trains d'Europe ‐Tome2‐」という本で、
Ep.Ⅳの70年代末から現在2006年までの、欧州各国の国際列車の編成について、
車両側面図の編成表、TEE/EC等の列車一覧などとともに解説した本です。
なにが凄いかって、D‐zugや夜行、カートレインや最近の東欧間の国際列車など、
渋めの列車まで、細かい絵の編成図が載っていることです。
もう、何杯でもおかわりできそうです。
ドイツ派としては、D-zugまでやたら「Bm235」なのに、なぜかICに「Bm238」だったり、
全室食堂車(WRmh/z)と半室食堂車(ARmh/z)の区別が曖昧だったりする突っ込みどころはありますが、
そのくらいは目をつぶりたくなるくらい、見ていて楽しめる本です。
おすらく「Tome1」は、Ep.Ⅲ以前の列車が対象みたいなので、そちらも気になります。
お値段がちょっと・・(税込みで1万5千円近く)ですが。

で、早速刺激されて、うちで唯一のフランス機、メルクリンのBB15000に、
Rocoの1/100コライユと、メルクリンのDBタルキス/TEE色の併結編成を牽かせて、
「パリ東駅発、ルクセンブルク・フランクフルト行きIC(1983年)」風に仕立ててみました。

ということで、やっとここの話題と繋がります。(長い!)
メルクリンで無い車種は、Rocoで補うことが多いのですが、車体高はそれほど差は出ません。
Rocoは、バッファーが大きいので、メルクリンのクロースカプラーに付け替えると、
カーブでバッファーとカプラーが当たって脱線しやすいのと、
純正の交流用車輪に変えても、M式レールのポイントは脱線しやすいのが欠点でしょうか。
メルクリンのSchuerzenwagenは、模型としては腰が低いようで、
同じメルクリンでも、更に年式の古い戦前型客車と連結すると、
やはり高さの差が気になります。

追伸:ZumeRさんの執筆されたFS GC客車の記事の載っている「とれいん」の9月号も必携ですね。
by BOAC VC10 (2006-09-18 23:39) 

Akira

 BOAC-VC10さん、コメントありがとうございます。連夜の出没大歓迎です。(^_^)/
 フランスの編成本をAmazonで探してみましたが、見つかりませんでした。こんど機会があったら見せてくださいね。
 WRとARに関しては、結構混用されている場面が多いのでは?ARと言っても、客室は向い合せのコンパートメントで大きなテーブルつきですし、その多くは食堂車として使われていたと思いました。(あのオレンジと茶色の縦縞模様のシートが懐かしい..)
 ROCOの客車は私も気になっているものが多々ある(例えば、UIC-Typ.U形[WLABmz173/174など]寝台車やOeBB客車群など)のですが、まだ禁断の園には足を踏み入れておりません。オーストリアモデルについては、ROCOの品揃えに勝るものはないでしょう。(ジモピーですからね)
 でも、メルクリンもドイツ車輌で良いのでもう少し夜行列車のラインナップ拡充に力を入れて欲しいです。例えばU形以外でもBcm243など282mmで出してもらえれば、編成のバリエーションが格段に増えるでしょう。

 メルクリンのSchuerzenwagenは、逆に腰低なんですか?何せ実車は保存車輌ばかりなので中々イメージが掴みにくいですね。
 
 ZumeRさんの記事は、今迄日本語で正式に紹介されなかったイタリア客車の実態を初めて紐解くもので、今後も大いに期待するものです。頑張ってくだいね。ZumeRさん!
by Akira (2006-09-19 13:26) 

ZumeR

Akiraさん、BOAC VC10さん、どもです!

なるほど、よくフライッシュマン製のNゲージなんかでもそんなお話を聞きますが、やはり各社・各車で微妙~に車高が違ったりするのですね。

そういえば、ここ数年で盛り上がるだけ盛り上がって、すっかり衰退した?Herisですが、そのHerisが当時としては「画期的」だったUIC-Xのクシェットを出したわけですが(Bcm243?とか)、その車高がRocoやRivarossiのUIC-Xと合わない!と大問題になったことがありましたっけ…。もちろん、Herisから供給を受けていたACMEなど他社製品も影響を受け、日本のマニア(私か? 笑)から「ヨーロッパのアリイ」などと言われて叩かれていましたね…。

そんなUIC-Xの記事を期待される方々が多いような…でも依頼がないからなぁ(笑)。あの膨大な量の資料、いずれは解読してUIC-Xをまとめてみたいものです。

最後に、貴重なご意見・ご感想を賜り?、感謝しております。今後の執筆の参考にさせていただきます!(実は今、記事を書いているのですが、今度は某機関車で、客車ではないです…)

ではでは。
by ZumeR (2006-09-19 23:35) 

Akira

ZumeRさん、どもー。

UIC-X客車って戦後初めての欧州規格形客車なんで、是非イタリア車輌も纏めていただきたく思います。特にイタリアはドイツと並んで種類も量も多いのでかなり奥深い世界だとは思いますが、頑張っていただきたく思っております。UIC-X客車は古いものだと45年になるのでしょうか?まだ第一線で活躍しているものもあるでしょうが、そろそろお役御免の時期も近づいて来ているような気もします。
明日?でしたっけ、渡伊の際も状況など教えていただければと思います。
どうかお気をつけていってらっしゃいまし...。
by Akira (2006-09-20 09:06) 

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